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Bill Evans / Portrait In Jazz ( 米 Fantasy Original Jazz Classics OJC-088 )
さすがに代表作ということで、1983年、2011年、2015年、2020年、とプレス回数は多い。手持ちの盤は、2011年もの。
A面 OJC-088 A1 RE6 18697.1(2)
B面 OJC-088 B1 RE6 18697.1(2)
これは見事な音だ。何と言うか、風格のある音。初めて聴いた時にはびっくりした。
ラファロのベースの音が大きく、響きが非常に深い。これが全体のサウンドを印象付けている。エヴァンスのピアノの音色は
ややくぐもってはいるけれど、気になるほどではなく、かえってシックな雰囲気に貢献しているような感じだ。
モチアンは1歩後ろに下がったような聴こえ方で、これがサウンドに奥行き感を与えている。
驚くのは、音楽としてオリジナルとは少し違う印象を覚えることだ。オリジナルで聴く場合よりも、音楽が雄大に聴こえる。
ステレオ感はさほど効いていないため、音場の拡がりがもたらすというような類いの話ではなく、リマスタリングされた音に
何か別のものが宿っているような、小手先の技で高音質化を狙うのではなく、根本的なところで何かを問うているような、
そういう不思議な感覚に陥る。
リマスタリングというのは、「高音質!」ということばかりを標榜することではなく、別の角度から光を当てて音楽の違う側面を見せる
という重要な役目も担っているのだ、というサウンド・エンジニアの声が聴こえてくるようだ。音楽は元々が多面的であり、今聴いている
音楽は1つしかないのではない。だからこそ人は音にこだわるのだ、とこれを聴きながら思った。
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Bill Evans / Portrait In Jazz ( 米 Riverside RLP 12-315 )
このアルバムがRIAAカーヴでないことは間違いないが、適正なカーヴがどれかがイマイチよくわからない。エヴァンスのピアノに
限って言えばAESが一番いいが、これだとベースやドラムが痩せて小さな音になる。これを解決するにはデッカにするのが一番で、
ラファロとモチアンが俄然元気が出てくるのだが、ピアノの音がフォルテになると少し歪む。
デリケートなピアノトリオとして堪能したければAES、インタープレイの傑作として聴くならデッカ、という感じである。
そして、OJC盤は両者のいいとこ取りをしたような感じだと言っていい。