Art Farmer - Benny Golson Jazztet / Here and Now ( 米 Mercury MG 20698 )
ゴルソンがトランペットやトロンボーンと一緒にゴルソン・ハーモニーを施してやった演奏はジャズテット名義であろうがなかろうが、実にたくさんある。
メンツの組合せは様々で、リー・モーガンの時もあればブルー・ミッチェルの時もあるけれど、やはりその真価を発揮するのはゴルソンと同系統の音色を
持つファーマーやカーティス・フラーの時だろう。 ゴルソンは演奏には加わらずスコアだけを提供する場合もあるけれど、なぜかそういう時の演奏には
ゴルソン・ハーモニーの雰囲気は希薄になる。 つまり、あの独特のムードはゴルソンのテナーの音自体が重要なキーになっているのかもしれない。
そういう意味で、ゴルソン、ファーマー、トロンボーンの3管が揃うこのアルバムはゴルソン・ハーモニーの淡い霧に煙る最も素晴らしい内容になっている。
トロンボーンはグラシャン・モンカーⅢ世で、おそらく契約の関係で参加できないフラーの代用だったらしく、完全にハーモニー要員扱いで彼のソロは
最後の自作曲以外ではほとんどない。 それでもトロンボーンの音色があるのとないのではハーモニーの豊かさが全く違うので、その存在意義は大きい。
ゴルソンは取り上げる楽曲のセンスも良く、ここでも緩急のバランスがいい名曲が並んでいて、両面通して聴いた後には心地よい満足感が残る。
マーキュリーのこの時期の録音は完成されていて、音質も最高の仕上がりになっている。
頻繁に聴くという訳ではないにせよ、30年間聴き続けても飽きることがないのだから、これはもう自分の中では座右の銘の1枚になっていると言っていい。
ジャズテット名義のアルバムは出来不出来の差があって、中にはつまらないものもあるけれど、これは間違いなくゴルソン・サウンドの極みの1つが聴ける
アルバムだ。 ありがたいことに稀少盤ではないので、誰でも気軽に聴けるというところも素晴らしい。 本当の名盤はこうでなくてはいけない。