廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

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ユセフ・ラティーフを見直す(2)

2020年06月21日 | Jazz LP (Impuise!)

Yusef Lateef / Jazz Round The World  ( 米 Impulse! A-56 )


第三世界の国々の民謡を題材に、リチャード・ウィリアムスとの2管で取り組んだ意欲作。ラティーフの本領発揮と言えるかもしれない。

当時はコルトレーンを筆頭に、意識の高いアーティストの間では新しい題材をジャズに取り入れるのがトレンドだった。このアルバムも明らかに
コルトレーンの影響を受けていて、テナーのプレイも、おそらくは意図的に、コルトレーン風になっている。

ジャズというのは元来どこか無国籍の雰囲気が漂う音楽である。枠組みも緩く、いろんな要素が出たり入ったりすることに寛容だ。このアルバムを
聴いていると、ジャズって元々こういうところがある音楽だよなあ、と何か大事なことを思い出させてくれる。

西洋音楽の平均律の世界と対峙する第三世界の音楽の言語や語法に敏感だったために、バスーンやオーボエなど複数の楽器を手掛ける必要があった。
この人はオーボエも非常に上手い。この楽器は演奏するのが難しく、下手な人が吹くといわゆるチャルメラ風になるが、ラティーフの音色は
まるでソプラノ・サックスのように美しい。

アルバムの最後には、美空ひばりの「リンゴ追分」が取り上げられている。短い演奏だけど、テナーでざらっと吹き流すいい演奏だ。
こういう題材を殺さずに、上手く音楽としてまとめている。コルトレーンなんかは途中から訳が分からくなって、自己表現が音楽を食い潰して
いくけれど、ラティーフは決してそうはならない。あくまで音楽としてコントロールしていて、それも洗練されている。音楽のことがよく
わかっていないと、こんなことはできない。この人はそこがいいのだ。訳の分からないことには決してならない。


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