廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

季節外れの雪の日に聴くマイナーなピアノ・トリオ

2020年03月29日 | Jazz LP

Gerald Wiggins / Reminiscin' With Wig  ( 米 Motif Records ML 504 )


朝から雪が降っている。稀に見る暖冬で、今年はとうとう雪が降らずに冬が終わったなあと残念に思っていたが、今週から4月になるというこの
時期になって雪が降り出した。しかもただ降っているだけではなくて、しっかりと積もっている。まるでコロナ騒ぎで世界がひっくり返りそうな
嫌なムードを鎮めようとするかのように、音もなく降り積もっている。

こういう日はマイナーな古いピアノ・トリオがいい。ピアノ・トリオの分野にはマイナーなレコードが多い。それはピアノという楽器がポピュラーで、
演奏できる人が他の楽器と比べて相対的に多く、参入しやすいからだろうと思う。そういう気分に合う盤はいくらでもある。

ジェラルド・ウィギンズのレコードはジャケットが酷いものばかりで買う気にならないが、例外的にこのモティーフ盤には食指が動く。特に珍しくも
ないレコードだけど、雰囲気のあるジャケット、重たいフラットディスクで、古き良き時代のレコード感に溢れている。

地味なスタンダードが1曲のみ、あとは知られていない楽曲ばかり。演奏はメリハリの効いたしっかりとした演奏で、聴き終えた後に手応えが残る。
隠れた名盤、と持ち上げるほどの内容ではないし、激レア盤、と騒ぐような盤でもないし、買うにも持つにも何の負担にもならないレコードだ。

1つ声高に褒めるところがあるとすれば、非常に音がいいというところ。楽器の音の分離がよく、音像がくっきりとしていて、非常に音圧も高く、
少し驚くようないい音で鳴る。でも、あまりにマイナーな盤なせいか、誰からもそういうところを褒めてもらえない。気の毒なレコードだ。

昔はフレッシュ・サウンズがリイシューしたりして、それなりに有難がられていたように記憶しているけれど、イマドキは誰からも相手にされない
風化しつつある作品になろうとしているようだ。サブスクで音楽を聴く世の中になると音源自体の価値が下がっていくので、こういう類いの作品は
淘汰されてしまう。レコード1枚買うのに何十分も店頭で呻吟して、家に帰って聴いてみて、その内容の良し悪しに一喜一憂するような時代じゃ
ないとこの手の盤は人々の記憶には残って行かないだろう。幸か不幸か我が家はそういう前時代的な感じなので、風前の灯的レコードがこうやって
ひっそりと生息することができる。


コメント (2)
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