廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

孤高のテナー

2015年02月01日 | Jazz LP (Prestige)

Coleman Hawkins / Plays Make Someone Happy from Do Re Mi  ( Moodsville MV 31 )


1904年に生まれて1969年に亡くなったコールマン・ホーキンスが一番活躍したのは1930~40年代だったので、残された録音の大半がSPです。
LP期にも録音はありますが、プレスティッジやインパルスのような若手が中心のレーベルと契約したため、本人のカラーとレーベルの雰囲気が
イマイチしっくりと馴染まず、出来上がったレコードは居心地の悪さが目立ちます。 本当はノーマン・グランツが彼のレコードをつくればよかった
んでしょうが、プレスティッジとの契約が邪魔をして手が出せなかったのでしょう。 

アルバム作りが上手いレーベルにいたお蔭でレスターは晩年に統一されたカラーを持ったレコードを固め打ちしており、これが今でも一定の人気を
得ている要因になっていますが、ホークは複数のアルバムコンセプトの下でレコードが残されたので散漫な印象が強く、どうも人気がパッとしない。

そんな中で、唯一この人の魅力をうまく捉えていると思えるのが一連のMoodsvilleへの録音です。 トミー・フラナガンのトリオをバックにワンホーンで
ゆったりと吹いていく様子が素晴らしい。 このレーベルのコンセプトはバラードではなくミディアムスローテンポを主軸にすることですが、品の良い
ピアノトリオの心地いいテンポに乗って吹いていく上手さはさすがで、他の奏者ではこうはいかなかったでしょう。 また、インストものでは
普通は取り上げないような楽曲をメインに演るので、どの曲も新鮮味があります。

テナーの音の魅力ということにかけてはこの人の右に出る人はいません。 結局、誰もこんな音で吹くことはできなかった訳で、そういう意味では
神々しいくらいに孤高の存在ですが、そういうところが少し近寄り難いのかもしれません。 

でも私にとってはこの人は別格の存在で、他のアーティストのように手垢にまみれていない現在の状態くらいでちょうどいいと思っています。
事あるごとにこのレコードを取り出しては、"Climb Every Mountain" の美メロに酔います。 RVGの深くエコーの効いた音場も素晴らしいです。



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