セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

大坂市役所の真昼の暗黒

2011-01-01 17:47:40 | 社会経済
あけましておめでとうございます。
今年2011年と来年2012年は後世の歴史に激動の期間として記録されると思います。これで日本の閉塞感が打ち破れることを期待します。

さてやや旧聞に属する他都市のことで正月早々にしてはめでたい話ではないのですが、書かずにおれないので今年第1回目の書き込みとします。

今や昨年ですが12月22日に大阪市は大阪市環境局の河川事務所の職員を清掃作業で集めたごみを着服していたとして、懲戒免職6人、停職21人を含む計42人の処分を発表しました。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101223-OYT1T00305.htm

懲戒免職を受けた6人は現金を着服した人たちですが、なんとその懲戒免職を受けた6人の中の1人は内部告発をした人です。平松大阪市長は、内部告発をしたことは懲戒処分の軽減要因だが、他の職員を威嚇したり、またロッカーを蹴って器物破損したので差し引きで弁護士と相談して懲戒免職にしたという。

この処分には多くの大阪市民が憤慨した。橋下大阪府知事は「内部告発をした大金星の職員を懲戒免職にするのはおかしい。これでは内部告発する名というメッセージを出していることになる」と平松市長を非難した。

僕の見るところ、大阪市には無理にでも告発者を懲戒免職にしようとする意思が感じられる。なぜなら懲戒免職の論理がめちゃめちゃなのだ。

まず、告発者はこの6人の中で、ただ一人着服していない人間なのだ。彼は証拠ビデオを撮影するため現金を受け取ったふりをしたのだ。その後彼は現金を回収した鞄にいれて川に返したのだ。これは第三者も目撃している。大阪市は受け取った時点で犯罪は成立するという。これ告発者は着服する意図もないうえに行為にそれなりの正当な理由があるものなので、大阪市のあきらかな強弁である。

告発者は職場で他の人々を威嚇し器物を破損したという。しかしこの理由で免職にはならない。事実と違うが告発者がその時点で着服する意図をもっていたとしても告発すれば罰則は軽減される。だからどんな足し算引き算しても懲戒免職にはならないはずだ。

それにこの威嚇という意味を考えねばならない。これは他の職員からの上申書が出されたという。しかしその上申書の提出者は職場の常習的犯罪者ではないのか。市長の会見では上申書の提出者名とその具体的な威嚇の内容については明らかにしなかった。容易に推測できることは、告発者が犯行を常習的に行っている職員に「おまえらこんなことをいつまでもやっていたらえらいことになるぞ」と言っていたのだろう。そこで後ろ暗い職員たちが告発者を排除しようと上申書を書いたのだ。上申書を書くことは何者かの勧めがあったと思える。

告発者は大阪市当局を信じられなくなっていた。なぜなら以前にも告発していたのだがなんら有効な手立てをうたないからだ。だから証拠のビデオを取ろうとしたのだ。ビデオに映った者は証拠がはっきりしているので懲戒免職になった。しかし以前から現金の着服はあったのだがそれらは証拠不十分で免職にはならない。ビデオ告発の後か先は知らないが、ロッカー等の検査もあったが、あらかじめ検査をするとの予告をしてからの検査なのでやばいものは処分されているので何も出てこなかった。調査して何も出ないのでは都合が悪いので、事務所長が川で拾ったキャリーバックを使っていたとか、あまりさし障りのことだけ聞き取りで白状して停職以下ですませようとしたのだ。

平松市長は地元民放のアナウンサーの出身だ。だから以前には当然の社会常識として告発者は保護されると言っていた。しかし22日の処分発表では一転している。おそらく市役所内部の勢力から「仲間を売るやつはクビにしろ。そうしなければ市政運営にも選挙にも協力できない」と脅されたのであろう。大阪市役所は年に100名以上の懲戒免職者を出す異常な自治体である。だからマスコミの中には「これで内部告発をしにくくして、懲戒処分を少なくする努力をしている」という皮肉を書いたところもある。

個人的な犯罪で懲戒免職になるにはその勢力にも仕方がないことだろう。しかし犯罪的なことでも職場習慣として日常的に行われていることは彼らにとっては当たり前のことで、それを外部に密告することは許せないのだ。

平松市長は毅然と対処して労働組合と対決しても綱紀粛正を行うべきだった。あ、「労働組合」と言っちゃった。そう僕は労働組合が告発者を免職するよう圧力をかけたのだと思っている。大阪市にも名古屋市と同じように労働組合が複数ある。名古屋市では主流派は自治労連(共産党)系だが、大阪市では主流派は自治労(民主党)系だ。だから民主党で当選した平松市長は組合の要求を拒めないのだ。

どちらの労働運動が良い悪いとは言わない。僕は自治体の労働組合が首長選挙に関与するのは反対だ。市民の投票でなくて裏から手をまわして市長と結託するのは住民自治に反すると思うからだ。正々堂々と表門から交渉するのは必要だと思う。ただこのところ国でも自治体でも民主党が与党になっているところでは自治労組合の弊害が出ているようだ。

共産党系組合と自治労系組内の違いは、共産党系の組合はいわゆる「外部注入主義」で、自治労は「組合主義・経済主義」だ。つまり共産党系組合は労働組合の要求そのままでは正しくなくて、組合外部から理念を持ち込まなければならないという考え。自治労は組合員の利益が第一と言うことだ。共産党の外部注入主義はともすると政治の引き回しとなり一般組合員の理解を得られないことがある。組合主義は組合員の利益を追求して首長と慣れあるうちに世間のとうてい理解を得られない魔界に入ることもある。いまの大阪市役所は市長も組合も魔界に入ったのだ。多くの職員に嫌われている河村名古屋市長はひょっとしたら正道を歩んでいるのかな。