玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

必然だった「アジア・アフリカ首脳会議における小泉総理大臣スピーチ」

2005年04月27日 | 政治・外交
アジア・アフリカ首脳会議における小泉総理大臣スピーチについて批判的なもの、肯定的なもの、たくさんのブログを読ませていただいた(ありがとうございます)。だがその中に「実は小泉は謝罪してないよ」という意見はほとんどなかった(全然なかったかも)。ひねくれ者の私は喜んだりちょっぴり淋しかったり。
あのスピーチに謝罪の成分が全く含まれていないとは言わないが、以前のエントリにも書いたようにその分量は全体と比べてごく少ないものだ。ソフトドリンクで言えば「果汁5%」程度である。それなのにほとんどのマスコミもブロガーも「謝罪、謝罪」と大騒ぎしているのがなんとも不思議に思えたのである。私があのスピーチの記事にタイトルをつけるとしたら、
「小泉首相、AA諸国への一層の支援を表明 ~歴史認識は従来を踏襲~」
としただろう。ほとんどの会議の参加国にとって(特にアフリカ諸国)、日本の過去などは割とどうでも良くて「これから日本が何をしてくれるか」こそが重要だったはずだ。

いわゆる「謝罪」、私に言わせれば未来志向への単なる前フリなのだがそれはともかく、「痛切なる反省と心からのお詫び」云々はあの場において必然的なものであったように思える。かんべえ氏が4月23~24日の日記で「これって反日デモがなくても、最初から予定通りの草稿だったんじゃないかという気がする」と言っておられるが私も同感だ。
なにしろバンドン会議50周年記念である。どうしたってスピーチでは50年前を振り返らざるをえない。
そうすると聞くものは誰でもその10年前の戦争のことが気になる。
ではどうするか。
黙っていると「何か隠しているのでは」「後ろ暗いことがあるからだろう」と勘ぐられそうだ。
それなら自国の60年前の戦争を正当化するか。いや、抜本的な歴史認識の変化を国内外の根回しもなくいきなり公言するなど勇気があるというより無茶である。日本国内で大騒ぎになるばかりか、アメリカや中韓以外のアジア諸国からの信用さえ失いかねない。中韓の反応については言うまでもない。
貧しい国や小国が多くを占めるアジア・アフリカ会議の出席国の中で日本は一頭地を抜く大旦那である。恵比須顔でゆったりと鷹揚に構えることが期待されている。そんな場所で空気を読まずに歴史認識を大転換を発表してテーブルをひっくり返すような真似をしたら、それは自分勝手であり野暮天もいいところだ。もしそれが可能であるとしたら、前もって充分な根回しを行い諸外国からの「日本のやった戦争は立派であり恥じることは何もない」という発言(ヨイショ)を大量に集めて、「そこまで言われれば…」という形にするしかないだろう。だが、それをやるにはよほどの政治力と大盤振る舞いが必要であり、その前にまず国内のコンセンサスが必要だ。現時点では不可能である。

とすれば、ここはやはり無難に歴代内閣の歴史認識を踏襲するしかない。それは村山内閣以来、橋本も小渕も森も、そして小泉自身も撤回しようとしなかった(できなかった)村山談話に沿った歴史認識だ。それはやむを得ないことだが、せめて反省とお詫びは最低限にして戦後日本の実績と未来志向を主軸に語ろうとした。小泉スピーチとはそういうものなのだろう。

私は小泉総理がアジア・アフリカ会議でいきなり歴史認識を転換するような「英雄主義的行動」を取らなかったことを評価する。
村山談話がいつまでも政府の歴史認識を縛るものであっていいとは思わないが、総理大臣が海外でいきなりそれをひっくり返すのは害多くして益が少ない。歴史認識を変えるためには地道に人々の意識を動かしていくしかない。日本でも海外でも、説得力ある言葉で偏見と誤解の壁を一つ一つ突き崩していく地道な戦いをしていくほかないだろう。「小泉が一言言えばみんな思い違いに気付く」なんてうまい話は、たぶん無い。

■ 当ブログの関連記事
「謝罪」に心を捉われた人たち

■ 関連リンク
雪斎の随想録: 二国関係の「呪縛」・続
中川秀直 トゥデイズ アイ

「アジア・アフリカ首脳会議における小泉総理大臣スピーチ」を論じたブログいろいろ(2)

2005年04月27日 | 政治・外交
「アジア・アフリカ首脳会議における小泉総理大臣スピーチ」を論じたブログいろいろの続きです。例によって上下の並び順に意味はありません。前のエントリが字数制限にひっかかったので更新は終わりにするつもりでしたが、あちこちで面白いブログを見つけるとリンクをコレクションしたくなってしまいました。やっている本人の動機としては食玩集めと変わりませんが、この件について真面目に考えておられる方がさまざまな意見を知る手助けができれば幸いです。

■ 演説テキスト
アジア・アフリカ首脳会議における小泉総理大臣スピーチ

■ 関連資料
日本の戦争謝罪発言一覧 - Wikipedia

■ 批判的
言語学研究室日誌:今更言うことはありません
メディアを創る:日中首脳会議の真実
「鏡」の向こう側へ:気違いと対応
♪すいか泥棒 日曜版:バンドン会議/日支首脳会談: 小泉0点
独身おやじの日々雑感:反日デモに思う-その2
酔夢ing Voice - 西村幸祐 -: バンドンから日比谷へ  小泉外交の限界
tarochan.net: Comment on 小泉は結局小鼠か?
いつもココロに愛国を:ダメだこりゃ┐(´д`)┌ ウンザリ
Dr.マッコイの非論理的な世界:今回の「お詫び」は失策
雷鳥の見聞録:小泉擁護派の醜態と怒りを忘れた日本人
山崎行太郎の『毒蛇ブログ日記』 - ■余りにも小泉的な、仲間(国民)を裏切って生き延びる処世術。
殿下さま沸騰の日々『てめーらなめんなよっ!』:恩を売っても返ってくるのは仇。
薔薇、または陽だまりの猫:【賛同のお願い】日本は近隣アジアとの衝突の道から引き返せ――歴史認識と「反日デモ」について
多事雑感: 繰り返される謝罪
撫順の奇蹟を受け継ぐ会声明ー過去を直視せずに「未来志向」はありえない
西村眞悟ホームページ・眞悟の時事通信:不可解な、村山談話の朗読
多 事 × 論:■平成17年4月23日(土) 小泉謝罪演説 ~小泉につける薬はないのか? 「売国有罪」~
GO.KI.RA.KU:首相の「反省とお詫び」
外交と安全保障をクロフネが考えてみた。 小泉首相の演説はいったい何だったのか?
宮崎正弘の国際ニュース・早読み:小泉首相と胡錦濤主席との「日中首脳会談」は今夜 中国メディアは「日本の降伏」と総括をするだろう
Tempus Fugit 賛否両論いろいろありますが
MIAMI VICE(ハートを撃て):おわびと反省、引用でケリ、それは甘い!
blog@心願成就  もうええ加減にせぇ~
ネパールを護ろう:国賊小泉を抹殺せよ
独立・起業blog ~成功への道 反日デモと日本の歴史認識
◆ ケシクズ ◆:脱力。
いか@ :インドで働いたこと(7/4-19)。:バンドン会議でのおわび考


■ 中立的
media@francophonie:バンドン会議開幕(4月24日追記)
JIROの独断的日記エキサイト版:「日本は謝罪した(Financial Times社説)」世界は分かっているのですよ。
LYU's アジアって何処までだっけ?
WEB見聞録: 謝罪の効果。詰むや詰まざるや!?
ごまめのはぎしり:AA会議
親父の威厳BLOG.ver:バンドン会議で「反省、おわび」 異例の演説
REDLOVER | 日本人の地道な努力はいつ報われるのだろう
★はじめてのブログ(暫定)★:首相演説での謝罪表明を世界 に向けてアピールせよ。
冷凍力の膳所狒々日記:小泉総理の視線の先にあるのは?
Sankei Web 反日デモに日中情報戦の視点を
橘正史の考えるヒント: 大東亜共同宣言について ~小泉首相のアジア・アフリカ会議50周年式典での謝罪演説について考えるために~
空のつぶやき: 意図はもしかして?。。。(苦笑)
・・・と言ってみる:小泉首相の謝罪は成功か?失敗か?
こんな本を読んだ:韓国人の歴史観(黒田勝弘)


■ 肯定的
Silly Talk: 小泉首相の謝罪
かみぽこぽこ。:祝!日本外交の夜明け(続編):中国との格の違いを見せつけた小泉演説。
開米の歴史・時事研究室:小泉首相のAA会議演説は大成功
当代江北日記:小泉演説
放浪癖さんあっちへふらふら日記 | 4/25 小泉外交、あれでいいと思うんですが
無法地帯: アジア・アフリカ首脳会議の話。
日本の為、中国語と英語を極める。  日本が大人としての風格を見せた。
躁鬱日記。 アジア・アフリカ会議
北京ダック北京生活:コイズミスピーチ。
おやつはビール。:バンドン会議
INSOMNIA CAFE:バンドン会議での小泉首相の謝罪演説はすばらしい機会だと思うこと
一寸の虫に五寸釘:大人の話し合いができたと思います。(日中関係 その2)
コマンドまたはファイル名が違います.:アジアの負け犬
日々不穏なり:AA会議&日中首脳会談を振り返る
H.C.A.:コイズミ謝罪
Absenteの酔いどれblog:国内反日勢力の「反日封じ? 」
日々徒然:今すべきことは
棒日記 第3章プロローグ - 高速ナブラ
じゃあ春巻定食で。:国際会議で謝罪。
世の中驚くことばかり!:現在の政治状況を考えるBBS的広場・・・・小泉総理ってどうよ?
バーチャルネット思想アイドルやえ十四歳:AA会議小泉演説
No Fear's Physical Arts:小泉純一郎の覚悟を静観しよう
World Description:中国反日暴動の顛末 現状ではこれで精一杯!!!
にぶろぐ:小泉首相、久々の合格点
勝谷誠彦の××な日々。:デモ抑え込めること自体で官製を証明した笑止千万。
書生訓: パブリックディプロマシー
鬼努愛落(きどあいらく):言葉を行動に移すことが信用を得ることに繋がるのは中国も同じ
浮世風呂:中国には実績で対抗すべし:小泉演説と謝罪考
つれづれのままに・・・WebLog:AA会議での小泉首相発言
早勢 直のページ 今週の意見(418):謝罪表明演説
たぼすけのざれごと:「小泉のおわび、炸裂」
末々草(すえ思う故にすえあり):手打ちとはいかないみたいな感じですね.
乱れ斬月:村山談話
まどか先生のひとりごと:幼くても、ちゃんと考えます!