黒古一夫BLOG

文学と徒然なる日常を綴ったBLOG

「怒り」を武器に!(3)――罷り通る「ご都合主義」と「数字のマジック」

2016-02-04 08:45:17 | 仕事
 このところずっと頼まれていた「<在日>文学(在日朝鮮人文学)」の現在についての論を書くために、関係書籍や論文を読む(読み直す)日々を送っていた。「<在日>文学の行方――「民族」と「言葉」の問題を軸に」(仮題)と題した論文は、主に「在日文学第3世代」と言われる柳美里、黄英治と、「第1世代・第2世代」の金時鐘、カン尚中の4人の言説を中心に取り上げ、52枚を超える長いものになった。
 論文執筆中、頭から離れなかったのは、北朝鮮による「核(水爆)実験」のことであった。中国からの「支援」が切られるかも知れないという「危険」を承知で「自立」を志向する北朝鮮、未だに残存する「冷戦構造」の中でもがき苦しむ彼らの国家意思も理解できなくはないが、この北朝鮮の「核実験」がアメリカの属国化を加速させる安倍自公政権に「塩を送る」愚挙であることは、間違いない。北朝鮮(屋中国)の「脅威」を強調することで、多くの憲法学者が「違憲」と判断している「安全保障関連法案」の「正当性」を言い募る格好の材料を提供するものだからである
 アメリカの「劣化ウラン弾」や「臨界前核実験」を容認し、また国内各地に何十発もの核兵器をつくるだけのプルトニウムを保管しながら(つまり、日本は「潜在的核保有国」だということである)、北朝鮮の「核実験」は声を大にして非難する。もちろん、「核と人類は共存できない」との立場から、核兵器も原発も認めない立場を最後まで保持しようと思っている僕としては、北朝鮮の「核実験」を認めるわけではないが、安倍首相をはじめとして、国民の多くが北朝鮮のみを非難して事を済ませようとしている態度は、日本の核に関する「情報」(例えば、世界から「潜在的核保有国」とみなされているということ、等)が偏っているということを考慮しても、やはりおかしいのではないだろうか。もっと客観的に情況を読むこと、これこそが今の日本国民には求められているのではにだろうか。さらに言えば、アメリカの「核の傘」に守られているという事実も見逃すわけにはいかない。日本が3000億円を超える「思いやり予算」を米軍に払っているか、そのことの意味を僕らはじっくり考える必要がある。
 これと同じなのが、昨日から今日に欠けてマスコミや安倍政権(安倍首相ら)が騒いでいる(我々を洗脳しているかのようにも思える)、同じく北朝鮮による「観測衛星の打ち上げ」発表である。つまり、北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げ実験だと言っているのに、それがいつの間にか「弾道ミサイル打ち上げ実験」となり、北朝鮮を非難するその論理の在り方、僕はどうもここに「胡散臭さ」を感じてならない。
 つまり、日本が種子島において「気象衛星」や「商業用衛星」の打ち上げを何度やっても、マスコミや政府は「日本の宇宙工学(技術)」を賞賛するが、どこの国でも「人工衛星」を打ち上げるロケットは、例えばあの有名なアメリカの「月ロケット」が、実は「ICBM(大陸間弾道弾)」というミサイルであるという事実のように、宇宙ロケットは、本質的に「弾道ミサイル」なのである――先の「潜在的核保有国」との関係で言えば、IAEA(世界原子力機関)が日本に20数名の要員を配置しているのも、日本の高い科学技術をもってすれば、半年以内で数十発の核弾頭とそれを運ぶミサイルを製造できる、と考えているからに他ならない――。
 世界は、日本が北朝鮮と同じように「危険な国」、と見ているのである。そのことを考えれば、いかに安倍政権と僕ら国民が「ご都合主義」に陥っていることが分かるだろう。
 この「ご都合主義」は、甘利経済再生担当大臣の辞任に伴って行われた各種の世論調査の数字にも表れている。各社の世論操作が僕らに示したのは、甘利重要閣僚の辞任があったにもかかわらず、安倍政権の支持率は、軒並み「50%」を越えていたことである。だから、このような支持率の高さに「自信」を持ったのか、安倍首相はいよいよ「本音」を剥き出しに、「憲法改正」が来たる参議院選挙の争点となる、などと公言するようになった。先の世論調査では、憲法改正に対して「反対50%以上」「賛成40%弱」にもかかわらずである。内閣支持率50%以上、憲法改正反対50%以上、この「矛盾」する数字を得ての安倍首相の「憲法改正」発言、そこには選挙において「1票」でも多く得票すれば、それが「多数の賛成」に繋がるという選挙の矛盾した在り方を熟知した「臈長けた」姿しか僕には見えないが、それがアベノミクスなどという「失敗した」経済政策を未だに信じて、あるいは「3万円」という買収費としか思えないお金のばらまきに騙されている、何とも「いじましい」国民の「真の姿」だとしたら、何とも情けない。
 安倍首相には、7月の参議院選挙で鉄槌を下すしか、もう方法がないのかも知れない