黒古一夫BLOG

文学と徒然なる日常を綴ったBLOG

新・武漢便り(8)――地下鉄に乗ってみました。

2013-03-31 07:38:55 | 仕事

案内の学生と一緒に。 

 昨土曜日(30日)、昨年の12月に開通したという地下鉄2号線(1号線は、本格的な地下鉄ではなく、地上を走る電車)、これは武昌地区の「光谷広場」から漢口地区の繁華街まで、文字通り地下を通るもので、当然長江(揚子江)の下もくぐっており、何年もかかった大工事だったわけで、武漢が大都市であることを宣伝する(誇る)象徴的な建設物になっているようである。2号線に続いて3号線、4号線も計画されているようであるが、その正否は中国の高度成長がどこまで続くかにかかっているとのこと。
 利用してみて思ったのは、東京の地下鉄などに比べて、後発であるから当然なのだろうが、「安全策」が十分に取られていて、乗客がホームから転落しないように、ホームの線路側全体が自動ドアのガラスで覆われている。格別用事があって地下鉄を利用するわけではないので、大学から一番近い片方の終点である「光谷広場」まで行くことにして、料金はどこまでも一律で、2元。
 同行の学生2人から、「混んでますよ」といわれたのだが、乗るときはさほどではなかったのだが、光谷広場に降りたら、人、人、人の群れ。「先生、スリに気を付けてくださいよ」と注意されたが、この人混みならば、スリにとっても「稼ぎ場所」としては、最適だろうと思った。光谷広場は、武漢で第2位を誇る華中科技大学が隣接している一種のショッピング・モール街で、ロータリーの真ん中には巨大な噴水広場があり、その周りの半分に大学の建物やオフィスビルが建っているが、もう半分には地下2階、地上5階建ての巨大なモールや、そのモールを抜けるとスペイン風街などがあり、ブティック、靴屋、おしゃれ小物、食べ物屋が軒並み客を飲み込んでいて、圧倒され続けた。
 元々、人混みの中を歩くのが好きではない僕としては、店を覗くだけで疲れてしまい、簡単な食事(学食のに比べても、まずく、しかも値段が高い)をすませて、早々に帰路につこうとしたのだが、改札口へいって、これもびっくり。切符の自動販売機の数が足らない(3台)せいで、2カ所の販売所に行ったのだが、どこも長蛇の列、それも遅々として進まない状況を見て、地下鉄に乗るのをあきらめて、2階建てバス(料金は同じ2元)で帰ってきた。
 ただ疲れただけの地下鉄試乗であったが、今度乗るときは、絶対週末は避けようと思った。前に漢口地区へ見学に行ったときもそうだったのだが、繁華街へ行くと、いかに中国の人口が多いかを実感する。本当に人、人、人の群れで、押し合いへし合い、という形容が大げさでない感じがする。
 
 疲れて帰宅して、ヤフー・ニュースを見ていたら、相変わらず勘違いしているなとしか思えない、北朝鮮の「米韓が少しでも我が国土を侵害するようなことがあったら、核攻撃をする」発言があった、という。思わず、おまえは馬鹿か、と言いたくなるような、愚かな発言(考え)。おそらく、公表できない深刻な「内憂」を抱えているが故に「外(内)」に向かって勇ましいことをいわざるを得ないのだろうが、もしこの地上でヒロシマ・ナガサキ以来の核戦争が起こったらと思うと、今日めちゃくちゃに数が多い武漢の繁華街を見てきた者としては、このような人々が、僕も含めてだが核の被害者になることを想像すると、どうしても北朝鮮(金正恩)の発言は許せないと思う。
 もっとも、領土問題(尖閣諸島や竹島問題)を巡って、「戦争も辞さない」ような発言を繰り返している安倍首相や石原慎太郎日本維新の会共同代表も、メンタリティとしては金正恩とほとんど変わっておらず、悪しきナショナリズムの典型について、改めて思わざるを得なかった。