黒古一夫BLOG

文学と徒然なる日常を綴ったBLOG

新・武漢便り(1)――スモッグの中を

2013-03-06 10:01:26 | 仕事
 3月3日(日)、午前5時に前橋を発って、成田ー上海ー武漢の旅、武漢に着いたのは予定より1時間半遅れの7時過ぎ、迎えの車で大学内の宿舎まで約1時間ほど、日曜日ということもあって空港からの高速道路もまた一般道も空いていたのだが、街灯に照らされる空気が、どこか日本のそれとは違うという感じであった。迎えに来てくれた学生に、武漢のスモッグについて聞くと、2,3日前に雨が降ったので、今日はきれいだとのこと、そういえば、宿舎に着いて、夕食のための「中国風ピザ」を買い、それを食してから寝ようとして何気なく空を見たら、半月が煌々と照っており、なるほどきれいなんだ、と納得した。
 しかし、上海の空港(浦東<プドン>空港)に着陸する前も、またそこから武漢に向けて飛び立ったときも、上空は真っ青なのに、下界は茶色に霞んでおり、これが日本でも大騒ぎしている「M2.5」のスモッグなのか、と思わされた。事情は武漢でも同じで、着陸する前はいつもきれいに見える下界(農村地区)がよく見えず、中国の東半分を覆っているスモッグの「ものすごさ」を改めて実感させられたのだが……。
 ところが、武漢市内に入ると、先にも記したように少しの「違和感」はあるものの、街を歩く人の誰一人としてマスクをする人がおらず、慣れてくると、全く「違和感」が消え、昨年の秋と同じような感覚で生活できるということを覚らされた。
 なお、これからは春を迎えるということで、学生たちの話では、春になれば1週間に1回は雨が降るそうなので、そうすればスモッグも内場になるだろう、と思い、時間の経つのを待つことにする。

 到着した翌日(4日)から、日本から知らせておいたように、授業を開始する。4日は、1,2年生の授業だったのだが、冬休み(春節)を故郷で過ごしてきた学生たちは、一回り大きくなったようで、これからの展開が楽しみである。1,2年生とも、文学作品の読み方が概念的なので、1年生には引き続き「近代文学概論(戦後文学史1)」を講義するほかに、武漢(中国)に関係する石川達三の『生きてゐる兵隊』と『武漢作戦』を時亜kんを掛けて丁寧に読むつもりで、授業計画を立てたのだが、果たしてうまくいくかどうか(理由はよく分からないのだが、中国の日本語科<学部でも大学院でも>における「日本文学」の授業で『生きてゐる兵隊』を取り上げることはほとんど無いようで、作品の存在を知らない学生も数多くいた)、これからの展開が楽しみである。
 昨日(5日)から、オフィス・アワーも開始したので、『着手発表』を3月末に控えている2年生、修論を完成させなければならない3年生が引きも切らず、まだ慣れないということもあって疲れ、早々に宿舎に引き上げてきた。
 後期の授業が始まった大学は、キャンパスも食堂も人、人で賑わい、その人の群れを見ているだけで疲れるという感じもあり、早く慣れないと、と思った。