☕コーヒーブレイク

時が過ぎていく。
ときには、その日の風まかせ。
ほっとひと息しませんか。

マルチリウム

2015-05-13 16:01:53 | 日記
きょうの朝日新聞「天声人語」で森鴎外の
短編「最後の一句」を取り上げていた。
時代も事情も違う小説であるとしながら、
今の沖縄と日本政府のさまを指摘していた。


この短編は若い時に読んだ記憶はあるが、
きょう、またipadのi文庫で読んでみた。

死罪を告げられた父親の無罪を信じ、
長女いち(当年16歳)と幼い兄弟たちは、
父の代わりに自分たちを死罪にし、父親を
助けてほしいと奉行所に願書を出す。
奉行は「身代わりの願いを聞けば、
お前たちはすぐに殺されるぞよ。
父の顔を見ることはできぬが、
それでもよいか。」とただされるが、
いちは「よろしゅうございます」と少し間を
置いて「お上の事には間違いはございますまいから
と言い足す。

御用が済んで引き下がる、いちと子供らを見送って
奉行は心の中で、哀れな孝行娘の影も残らず、
人に教唆せられた、おろかな子供の影も残らず、
ただ、氷のように冷ややかに、刃のように鋭い、
いちの最後のことばの最後の一句が反響している
のである。
元文ごろの時代、「マルチリウム」という用語も
知らず、献身という訳語もなかったので、人間の
精神に、老若男女の別なく、いちに現れたような
作用があることを、知らなかったのは無理もない。…
…… といった内容である。

自己犠牲の精神(マルチリウム)を鋭く描いた
短編でもある。
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