ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート

「神話探偵団~スサノオ・大国主を捜そう!」を、「ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート」に変更します。雛元昌弘

神話探偵団69 ヤマタノオロチの「天叢雲剣」が「草薙剣」に変わった時

2009-10-10 21:20:08 | 歴史小説
草薙剣が置かれていたという伊勢神宮(ウィキペディア)


●カントク 21:29
尾張の津島神社から、故郷、博多へ飛んでスサノオを追ってきたが、スサノオの草薙剣は伊勢神宮から熱田神宮に移っておる。まず、伊勢神宮から見ていこうではないか。
 
●ヒメ 21:31
そうしましょう。草薙剣はずっと前に検討ずみだけど、伊勢神宮との関係をもう一度、説明してくれない?

●ボク 21:32
古事記によれば、草薙剣の動きは次の通りです。
① スサノオがヤマタノオロチ王から草薙剣を奪った。
② スサノオは草薙剣をアマテラスに献上した。
③ アマテラスは、孫のニニギが天降る時に、八尺の勾玉、鏡、草薙剣を授け、「この鏡は、私の御魂として、私を拝むように拝め」と命じた。
④ 伊勢神宮の倭比売は、東征する甥のヤマトタケルに草薙剣を与えた。
⑤ ヤマトタケルは草薙剣を尾張国造の美夜受比売のもとに置き、三重の鈴鹿で亡くなった。

●ヒメ 21:38
アマテラスはスサノオより16代後の卑弥呼をモデルにして、天皇家が創作した神、という結論になったんだけど、剣はどうなるのかしら?草薙剣もまた、天皇家の偽造なの?

●カントク 21:40
祖先の霊(ひ、魂)を信仰していた古代人にとって、祖先の霊がこもった剣や鏡、勾玉というのは、重要な信仰の対象じゃ。大日霊女(オオヒルメ=霊巫女=卑弥呼)と大物主の「祖先霊」を偽って祀り、恐ろしい祟りを受けた崇神天皇の教訓が染みついていた天皇家にとって、スサノオの剣を偽造するなどということはありえない。

●マル 21:44
前期旧石器は単なる道具であったから、「前期旧石器偽造事件」は起こった。しかし、祖先の霊の固まりである草薙剣については「草薙剣偽造事件」は考えられない、というのはよくわかるわ。

●ヒメ 21:46
草薙剣が本物で、アマテラスが創作された人物だとすると、実際には、草薙剣は出雲からどのようにして伊勢に移ったことになるの?


●マル 21:48
前に検討した時には、確か、草薙剣はスサノオの子の大歳によって磯城に運ばれ、磯城国の入り婿として権力を奪った崇神天皇の宮中に移され、恐ろしい祟りを受け、アマテラスの鏡とともに伊勢に移されたのではないか、ということだったわよ。

●ヒナ 21:51
日本書紀の本文ではスサノオが草薙剣を天神に献上したとしていますが、一書第4は、スサノオ尊の「五世の孫天之葺根神」を遣わして、天に上奉した、と書かれています。

●長老 21:53
ヒナちゃんは、鋭いなあ。
記紀を読む時に、「スサノオ」「大物主」「多紀理毘売」などは、「〇代目スサノオ」などの可能性があるから要注意だよね。

●ヒメ 21:55
大国主はスサノオの7代目だったわよね。そうすると、草薙剣が「スサノオ尊の五世の孫」によって「天に上奉」されたというのは、大国主と同世代になるわね。この「天」というのは、いったい誰なのかしら。

●ヒナ 21:57
古事記によれば、大国主はスサノオの娘の須勢理毘売と、スサノオの「生太刀と生弓矢、天の詔琴」と持ち出して逃げ、追いかけてきたスサノオから「その生太刀・生弓矢を持って、兄弟王を坂の下に追い伏せ、河の瀬に追い払い、大国主神となれ」と言ったとされています。
6代目スサノオは、王権の印である「生太刀」などを大国主に与え、出雲の王として認めた、ということになります。この「生太刀」こそ、ヤマタノオロチ王の権力の象徴である「草薙剣」ではないでしょうか?

●ヒメ 22:02
これからは、私の小説の主人公は、ヒナちゃんにしようかしら。「草薙剣はスサノオの生太刀」説は見事よ。

●ボク 22:03
そういえば、スサノオが鏑矢を大野の中に射て、大国主に探しに行かせ、周りから火をつけ、大国主はネズミに導かれて穴に入って試練を逃れた、という話がありますよね。これは、ヤマトタケルが焼津の国造に騙されて野の中で火をかけられ、草薙剣で草を払い、難を逃れた、という話とそっくりです。
このヤマトタケルの話というのは、大国主の伝説をもとに後世に作られた可能性がありますね。そうすると、ヤマタノオロチ王の天叢雲剣を草薙剣というようになったのは、ヤマトタケルの時ではなく、大国主の時かも知れませんね。

●カントク 22:08
見事じゃ。ヒナちゃんに刺激されて、ボクちゃんの石頭もずいぶんと柔らかくなってきたようじゃ。


●マル 22:09
「ウサギを助けて、ネズミに助けられた大国主」童話の陰に、天皇家の皇位継承のシンボルであるヤマタノオロチ王の「天叢雲剣」が「草薙剣」になった秘密が隠されている、これは面白い。ヒメの小説の題材になるんじゃない?

●ヒメ 22:12
『三種の神器殺人事件』か『ウサギとネズミ神話殺人事件』ってとこかな。謎解きの主人公はヒナちゃんにして、頭の固いボクちゃんをからませようかしら。

●マル 22:14
ちょっと待ってよ。「草薙剣は大歳が受け継ぎ、磯城国王に引き継がれた」という仮説ならわかるけど、「草薙剣は出雲の後継王の元に置かれて、大国主に引き継がれた」とすると、いつ、誰によって、磯城国に移されたのかしら?

(ネタモトは日向勤氏の『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』(梓書院)です)

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