ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート

「神話探偵団~スサノオ・大国主を捜そう!」を、「ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート」に変更します。雛元昌弘

神話探偵団127 養久山古墳群の甕棺や壺棺に葬られた王

2012-02-26 18:27:56 | 歴史小説
養久山古墳第5号墓:中方双方墳(径7m)で、中央に甕棺(直径75㎝×高さ75㎝)、その左右に箱式石棺のような配石墓があった

「記紀や播磨風土記に登場してくる、筑紫ゆかりの王は5名います」
 ヒナちゃんは説明を始めた。
「1人目は、スサノオの子のイタケル(壱武)で、五十猛、射楯とも呼ばれていますが、壱岐生まれの可能性が高いと思います。今日、彼と大国主を祀っている播磨国総社、彼とスサノオを祀っている広峯神社に行きましたが、他には、射楯兵主神社、高岳神社などにも祀られています。
2人目は、大国主の妻の奥津島比売命が、この播磨の西脇市の「袁布(をふ)山」で産んだ阿治志貴高日子根神(あじすきたかひこね:迦毛大御神)と、宍粟市の播磨国一宮の伊和神社に大国主と一緒に祀られている下照姫の一族の可能性です。この下照姫は阿治志貴高日子根神の妹で、天若日子の妃です。奥津島比売命は、沖の島に祀られた宗像一族です。
3人目は、大国主と船でやってきたと播磨国風土記に書かれている火明命の一族です。この養久山のすぐ北の日山の麓の粒坐天照(いいぼにますあまてらす)神社には、天照国照彦火明命が祀られていますが、この火明命の出身地は、対馬の阿麻氐留(アマテル)神社の可能性が高いと思います。記紀などはこの火明命をニニギの兄又は子どもとしているが、私は播磨国風土記の記載の大国主の子どもと思います。
4人目は、大国主に国譲りをさせた天穂日命・天日名鳥命親子の子孫です。記紀は天穂日命をアマテラスの子としていますが、大国主が筑紫でもうけた子どもと考えています。
この天日名鳥命、別名、武日照(たけひなてる)命のずっと後の子孫の野見宿禰が、出雲に帰る途中にこの龍野の日下部里で亡くなり、この地に葬られたとされていますが、この一族は古墳の造営に携わった土師氏で、養久山のすぐ西にも土師の地名が残っています。野見宿禰は同族が住むこの地に立ち寄り、亡くなったと私は考えています。
なお、播磨国風土記では、日下部里は人の姓によって名づけられたとしており、出雲市に日下部の地名があり、出雲国風土記に登場する久佐加神社がありますから、この地に出雲から日下部一族が来たと考えられます。
5人目は、養久山のすぐ北側にある式内社の祝田(はふりだ)神社に祀られている、播磨国風土記に登場する大国主の子の石龍比古命・石龍売命の一族の可能性です。これは、単に神社が近くにあるというだけで、根拠は薄いのですが、可能性として挙げて置きたいと思います」

ヒナちゃんは、やはり答えを用意していた。
「すごい。ゾクゾクしてきたわ。播磨の王達は、出雲と筑紫に深い繋がりがあるのね。明日、養久山に行くのなら、私もご一緒させていただけません?」
 ヒメと同じで、母上も行動力・決断力は抜群のようである。
「是非、地元からも参加して欲しいですね。大歓迎です」
 カントクは女性はいつもウエルカムである。
「明日、養久山から南に下った雛山にも行きますが、ピンク色の阿蘇の凝灰岩で作られた石棺が見つかっています。この地と九州の王達には婚姻関係があり、阿蘇の石を取り寄せたと思います」
 ヒナちゃんは、養久山古墳群だけでなく、「雛山」の古墳にも目をつけていたようだ。
「明日の予定がでてきたところで、そろそろお開きにします?」
 マルちゃんは、ヒメの母上を気遣っているようだ。
「せっかく、盛り上がってきたんだから、もう少し、やりましょうよ。実は、私、あることを思いついたんです」
 ヒメが謎を解いた時にみせるのとそっくりの、キラキラした瞳で母上は皆を見渡した。
「前方後円墳の円墳の部分って、妊娠した女性のお腹の形じゃあないのかしら? その中に、血色に塗られた甕や壺、石棺の中に入れて死者を葬るというのは、女性の胎内に戻す、ということだと思うけど」
 ヒメと同じで、母上の発想は空高く飛んでいる。

※文章や図、筆者撮影の写真の転載はご自由に(出典記載希望)。
※日向勤著『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』(梓書院)参照
※参考ホームページ:霊(ひ)の国古代史研究室(http://www.geocities.jp/hinatsutomu)
※参考ブログ:邪馬台国探偵団(http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/)
       霊の国:スサノオ・大国主命の研究(http://blogs.yahoo.co.jp/hinafkinn/)
       霊(ひ)の国の古事記論(http://hinakoku.blog100.fc2.com/)
       帆人の古代史メモ(http://blog.livedoor.jp/hohito/)
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神話探偵団126 縄文人やアイヌは、死んだ子どもを壺に入れて家の入口に埋めた

2012-02-22 23:08:15 | 歴史小説
円墳上に四角に配置された壺と円形に取り囲む丹後型円筒埴輪(作山2号墳:京都府与謝野町)

「縄文時代に、壺に子どもの死体を逆さにして入れ、家の入り口においたこととの関係はどうなのかしら? 梅原猛先生は、あの世から帰ってきた祖先の霊に再び母の胎内に帰って次の子になって生まれて来いという願い、と述べておられますよね」
 マルちゃんが縄文にまで遡ってくるとは、高木は考えてもみなかった。
「縄文人が壺に子どもの死体を逆さにして埋めた、となると、やはり、壺は子宮と考えられていた、ということになるわね」
 ヒメの母上の子宮説には、強力な裏付けができてきた。
「そういえば、梅原猛先生は、アイヌの人たちも、縄文人と同じように、壺に亡くなった子どもを壺に入れ、家の入り口に埋めた、と講演でおっしゃっていましたね」
 ヒナちゃんも同調してきた。
「縄文人はノーパンだったから、女性がその上をまたぐと、子どもの霊(ひ)が、大地から女性の『ヒナ』に再び帰ってくる、と考えられたのかも知れないなあ?」
 カントクもすっかりその気になってきた。
「霊(ひ)が母なる大地の子宮に帰り、再び黄泉帰って女性の子宮=霊那(ひな)に宿るという自然宗教の段階では、壺を子宮に見立てて死体を入れて大地に返していた。しかし、その後、死者の霊(ひ)が神那霊山から昇天・降地するという首長霊信仰の時代になると、壺は地上と天を繋ぐ霊(ひ)の通路として、墓の上に並べられた、という可能性は高いかもしれない」
 長老も納得したようだ。
「そうすると、古墳の上に置かれた壺と特殊器台、円筒埴輪、人物などの形象埴輪は、それぞれ役割が異なる、ということになりますよね?」
 高木は前から気になっていたことを述べた。
「壺は霊(ひ)を天に送り、迎え入れる出入り口、特殊器台は酒を入れた壺や食べ物を死者の霊(ひ)に捧げるテーブル、円筒埴輪は古墳上面の協会を示すもの、形象埴輪は葬送の儀式を表したもの、ということになるかな」
 長老の答えはよどみない。
「それって、どこが発祥の地なのかしら?」
 ヒメの質問はいつも、高木よりワンテンポ早い。
「子どもの死体を壺に入れるのは縄文時代から全国各地にあり、大型の甕棺(かめかん)に入れて大人の死体を葬るのは福岡県の平原遺跡や佐賀県の吉野ヶ里遺跡など北部九州の墓制。特殊器台は吉備型、出雲型、伯耆型、播磨型、伊与型、大和型などがあり、記紀の野見宿禰の記述から見て、形象埴輪は出雲がルーツではないかな」
 長老は教科書的に答えた。
「補足しますと、この播磨のたつの市揖保川町の養久山古墳群からは、甕棺や壺棺が発見されています」
 ヒナちゃんの事前調査は、高木の及ぶところではなかった。
「養久山って、私の実家のすぐ南じゃあない。面白くなってきたわよね」
 ヒメの母上も乗ってきた。
「じゃあ、養久山古墳に葬られている王は、筑紫生まれ、ということになるわね」
 ヒメの質問は止まらない。
「おそらく、母親が筑紫生まれと思います」
 ヒナちゃんはいつも次の答えを用意している。
「ということは、ヒナちゃんは、心当たりがあるということなのね」
 ヒメの推理はいつも鋭い。

※文章や図、筆者撮影の写真の転載はご自由に(出典記載希望)。
※日向勤著『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』(梓書院)参照
※参考ホームページ:霊(ひ)の国古代史研究室(http://www.geocities.jp/hinatsutomu)
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