防衛省、強襲揚陸艦を調達へ。実質の軽空母の可能性

2014-08-06 07:37:08 | 軍事ネタ

強襲揚陸艦を導入へ 防衛省方針、名称変更も検討
http://www.asahi.com/articles/ASG845D1VG84UTIL02L.html


海上自衛隊が強襲揚陸艦を導入するらしい。
強襲揚陸艦とは軽空母と輸送艦を併せたような機能を持つ艦のことで、
戦車や歩兵などを上陸させながら戦闘機やヘリで上空援護するということを単艦で可能とする、
展開能力に優れた艦種である。

自衛隊は特に安倍政権になってからは南西諸島防衛に注力しており、
戦力の機動性を高めて少数兵力を効率良く運用する方針としている。
その為に自衛隊版の海兵隊を作ることも宣言されているが、
この強襲揚陸艦もその流れだろう。

確かに海兵隊を効率良く機動させるなら揚陸艦は必要である。
島嶼防衛にせよ、敵が来るかもわからない島に兵力を貼り付けておくよりかは、
敵が占領した後に奪還するほうが兵力の無駄がない。
効率の良い"取らせて取り返す"を実現するために強襲上陸戦能力は必要である。
野球で言う"打たせて捕る"的な。



ワスプ級強襲揚陸艦

ここで注目したいのが、防衛省が強襲揚陸艦に要求する能力だ。
どこまでのクラスを求めているのか?
なにせあまりイメージにないかもしれないが、日本は既に強襲揚陸艦を保有している。
おおすみ型輸送艦がそうで、これは全通甲板にヘリを搭載し、
LCAC(エアクッション揚陸艇)も2隻格納でき、300人の武装隊員を運搬する能力を有する。
今回の強襲揚陸艦に要求されているオスプレイ運用能力も、おおすみはわざわざ大規模改修してオスプレイに対応することが決定済み。

この強襲揚陸艦のニュースを見た時、始めはおおすみ型の後継艦かな?と思ったけど、
しかしおおすみがオスプレイ運用に向けてわざわざ大規模改修をすることを思い出せば、
おそらくおおすみもしばらく使われるのだろう。
ということは新しい強襲揚陸艦に求めていることは、
もちろんおおすみ型より大規模で効率良い戦力投射能力だろうが・・・もうひとつ。
おおすみ型にはできないことを求めている気がする。
そこでこの新しい強襲揚陸艦が戦闘機を運用する、実質の軽空母となる可能性も見える。


これはおそらくそう突拍子もない話でもない。
既に海上自衛隊にはいずも型などのサイズで言えば軽空母クラスの艦があるわけだし、
そこにさり気なく戦闘機が載ったところでいまさら国民はそう衝撃も受けないのじゃないかな。
おおすみ型・ひゅうが型・いずも型の3タイプ、これらは全通甲板を有する、見た目上は空母と大差ない艦である。
それが既に7隻も就役が決定してる。

海自の全通甲板艦が急増したことはいつか空母を保有するための布石という論調はずっとあるが、
俺もそれは十分に有り得ると考えるし、おおすみ型があるのにわざわざ大規模化させた強襲揚陸艦を新造するなら、
おおすみ型にはできない機能も盛り込みたいんじゃないかな。
それが戦闘機の運用能力であったとしても不自然ではない。

また強襲上陸戦で最も必要なのはエアカバーである。
だから強襲揚陸艦といわれる艦は軽空母みたいな見た目をして航空機を運用するのだけど、
強襲上陸に特化させた艦を造るのにあえて戦闘機を搭載しないなんて、
縛りプレイ的でその発想のほうが不自然に思えるぐらいである。
おおすみ型を差し置いてわざわざ専用艦を調達するのは効率の向上が目的だろう。
なのに戦闘機非搭載を前提にすることほど非効率的なことがあるだろうか。

航空自衛隊はステルス戦闘機F-35Aの導入を決定している。
そしてF-35BがVTOL(垂直離着陸)機能を有する海兵隊型だが、このF-35Bを海自も軽空母用に導入すれば、
空自と同じ戦闘機を運用することで教育・メンテナンス面の共通化メリットも享受できて効率的だ。



垂直離着陸中のF-35B

もちろん全ては憶測であるがいくつかの根拠と、周辺の状況を考えればそういう可能性も有り得そうだという話である。
強襲揚陸艦と海兵隊のことが上手くいけば、安倍政権が重視する集団安保と海外派兵能力も大きく増す。
まあそれだけに自衛隊が攻撃的な軍隊へ変貌を遂げる可能性を危惧する人もいるだろうけど、
個人的には中国とロシアの空母計画を考えれば日本が空母を含め積極的な攻撃能力を持つに至るのは自然と考えてる。

2020年までに空母を中国は3隻、ロシアは6隻の保有を目指してるからね。
もしそれが実現した場合、もはや太平洋のミリタリーバランスはアメリカのみでは荷が重く、
日本も積極的にアメリカと協調していかなければ抑止力が崩壊する可能性がある。
それは戦争を呼びこむことにつながるかも知れない。


強襲揚陸艦という名称が国民に誤解を与える可能性と書いてるけど、
まあ無難に多目的輸送艦とかになるのかな。
具体的な発表が楽しみでならないね!

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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2014-08-06 12:04:31
おおすみはエレベーターや格納庫が小さいため、強襲揚陸艦と見做すにはヘリコプター運用能力がいささか限定的です。
なので、おおすみは強襲揚陸艦ではなく戦車揚陸艦であるとする見方もありあます。
したがって、強襲揚陸艦に防衛省が求めている新しい能力とは、強襲揚陸艦として正常なヘリコプター(オスプレイ)運用能力ではないでしょうか。
地球の裏側に赴くのならともかく、島嶼防衛のためにF35Bを運用できる軽空母を持つ必要はさほどありませんし。
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Unknown (Unknown)
2014-08-06 16:57:06
空母はシーレーン防衛に必要
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Unknown (Unknown)
2014-08-06 17:52:37
シーレーン防衛に空母って効率悪くね? 
アジアで連合海軍でも作るならまだわかるが。
・・・そこまで詳しくないから何も言えないけど
それようの水上艦作った方がメンテも楽じゃないのか?
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Unknown (Unknown)
2014-08-06 18:08:48
軽空母級の艦を調達するからついでに戦闘機を搭載するかもしれない程度の話だろ
それようの水上艦を作るほうが金かかる
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Unknown (Unknown)
2014-08-06 18:59:09
詳しい人の見方はおもしろい
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Unknown (Unknown)
2014-08-07 00:45:13
島嶼部防衛にエアカバーを行うだけならそれこそ空自基地や島嶼部に山ほどある空港からのほうがはるかに効率がいい
集団安保で遠隔地に航空火力を投入するような作戦に駆り出されることは当面ないだろうし、
揚陸の為の十分な回転翼機運用能力を要求した結果なんだろうね
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Unknown (Unknown)
2014-08-07 04:30:00
自民党は自衛隊を普通の軍隊にすることを公約にしてたから別に驚かない
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Unknown (ゆっきぃ)
2014-08-07 20:34:54
>>おおすみはエレベーターや格納庫のUnknown
島嶼防衛に軽空母が不要っていう人、
たまにいるけどどういう根拠なんだろう?
太平洋戦争やフォークランド紛争の戦例を見ても、
戦闘地域に近い場所から発艦できるメリットは大きいものだよ。
戦闘機の交戦可能時間は少ない、フォークランド紛争なんてそのせいで前線滞空時間が数分しかなくて満足に空戦ができなかったという例もあるのに。

>>空母はシーレーン防衛に必要のUnknown
わざわざ空母をシーレーン防衛に動かすかはともかくとして、
それでもないよりあったほうが良いのは確実だね。
広い視点で見れば、敵艦の索敵と追跡に、
海上航空基地があったほうが良いのは確実で、
そして海戦では先に敵を捕捉した方が勝つのは、
ミッドウェイを見るまでもない。

>>シーレーン防衛に空母は効率悪いUnknown
わざわざ空母を整備するなら効率悪いかもしれない。
ただこれは元々そのサイズの艦自体を調達することが前提の予測であるので、
あと上でも書いたようにシーレーン防衛というか敵艦隊の索敵をも視野に入れるなら、
艦載機の存在は大きい。

>>島嶼部防衛にエアカバーのUnknown
南西諸島を守れる空港がいくつあるか、
特に西沙諸島や尖閣諸島にエアカバーを施そうとすれば、
山ほどある空港なんてものはない。
またフォークランド紛争でも問題となったのは、
戦闘地域より遠くから発進することによる戦闘機の即応性の低さと、また燃料による制約で満足な空戦ができなかったこと。
空母からより遠くの本土からの戦闘機の方がはるかに効率が良いなんてことは有り得ない。
遠いと時間単位辺りのソーティ数を比較しても限界があり、単純に考えて近いほうが効率は良いに決まってる。

空母を保有するかどうかで論争となるべきは費用対効果、使い道、対外的な感情であって、
戦闘効率と汎用性という面で見れば比較すべきではないほどの優位性がある。
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Unknown (Unknown)
2014-08-09 09:02:45
日本がもし軽空母持つならアメリカ様のお古から買って
研究とかするのかな。
いきなり軽空母建造はレベルが高そう。
ヘリ空母とは勝手が違うし。
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Unknown (ゆっきぃ)
2014-08-10 07:19:21
>>Unknown
それは中国方式だね、ワリヤーグでやってる。
日本はどうだろう、全通甲板艦の建造経験はアメリカに次ぐだろうし、
空母を研究用に買ったりはしないんじゃないかな。
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