戦車の歴史(2) ~ 戦間期 ~

2015-12-15 04:37:05 | 軍事ネタ

前回記事 からの続き。
戦車の歴史について、第二弾。


・戦間期

第一次世界大戦中期以降に初めて戦車という兵器が投入され、
大戦終結後は各国ともにこの革新的な兵器の発展に取り組んだかとおもいきや、
実は意外にも戦間期では戦車はあまり発展しなかった。

戦車の先進性に気づいた軍人もいたが、
大部分の政治家や軍上層部は戦車を軽視し続けたのだ。
それは戦車の武装をより強化すべしといった設計開発面においてや、
戦車は集中運用して機甲部隊として運用すべしといった戦術面に関してもだ。

例えば最も工業化が進んでいたアメリカですら1932年になってようやく戦車旅団の編成が許可された程度で、
戦車の大量生産をした上で大規模な機甲部隊の集中運用を主張する者もいたが一向に理解を得られず、
それはヨーロッパ各国であってもほとんど同様であった。

これは軍隊という組織は様々な理由により保守的に硬直しやすい性質があるからだが・・・


以前に機関銃の登場がもたらした衝撃と革新、その歴史について の記事にて、
機関銃という兵器は第一次世界大戦が実際に起こるまで異様に過小評価されていたことを書いたが、
それと同じことが戦車にも起きていた。
大組織ほど保守的になりがちで、実際に事が起きて必要性を迫られなければ
理解されないといったことはいつの時代でもままあるのだ。


しかしその必要性が理解される出来事が起こる。


II号戦車

・スペイン内戦

1936年7月17日から勃発したスペイン内戦は、ソ連が支援した共和国派政府に対して、
ドイツ・イタリアが支援したナショナリスト派が全土で武装蜂起し、
これは共産主義とファシスト陣営の代理戦争とも言える様相を呈したが、
新兵器の実験場ともなった。

両陣営とも新たな航空機や火砲を投入し、その経験を蓄積していったが、
戦車に関する実戦経験値は特に重要なものとなった。
第一次世界大戦時とは戦車の運用法が全く別物に変わったのだ。


当時の戦車はドイツのII号戦車のように、機関砲を主武装としているものが多かった。
これは第一次世界大戦時の戦車の主目標はあくまでも歩兵だったからであり、
歩兵を駆逐するなら大口径砲よりも小口径な機関砲や機関銃の方が都合が良かったからだ。
大戦終結から20年近くを経たこのときでもその実戦経験を引きずっていたので、
基本的に各国の戦車は一次大戦型の設計思想を踏襲していた。

しかしスペイン内戦に投入されたソ連製戦車T-26は45mm砲を主武装とし、
当時としては異例の火力を誇る戦車だった。
これに対抗するドイツのI号戦車は7.92mm機銃、II号戦車は20mm機関砲、
イタリアのL3戦車は8mm機銃が主武装という有様だった。

つまりT-26は遠距離からファシスト陣営の戦車を容易に撃破できたが、
II号戦車は500メートル以下に接近しないとT-26を撃破できないという状況を生んだ。


今後の戦車に搭載する火砲は対戦車能力もより重視しなければならない。
という戦訓を身をもって得られた。
また戦術面でも大きく変わった。

II号戦車はT-26に性能で劣っていたが、多数を集中運用することによって囲んで撃破できることがわかった。
またスツーカなどの急降下爆撃機は砲兵の代わりに、より高速かつ柔軟に戦車を撃破できることもわかった。
これはドイツ軍内に戦車の集中運用と急降下爆撃機を連携させる「電撃戦」の概念を固める下地を作った。

またスペイン内戦は市街戦が多く発生したので、ソ連のT-26といえど
ビルの陰や上で敵歩兵に待ち伏せられては火炎瓶や携行爆弾で容易に撃破されることもわかった。
戦車は歩兵と共同で進まなければならない、これは以降のソ連軍において、
戦車の上に歩兵を乗車させて前線で即座に展開させる「タンクデサント」に繋がった。

つまりスペイン内戦は独ソ両国の第二次世界大戦での戦車運用法に大きな影響を与えた。


そして戦車という兵器の有用性も、戦車による対戦車戦闘能力の必要性も強く認識された。
第一次世界大戦が終結した1918年からほとんど停滞していた戦車という兵器が、
第二次世界大戦で恐竜的進化を遂げる下地を作ったのだ。


続き 戦車の歴史(3) ~ 騎兵の終焉 ~ 


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2016-01-14 11:02:39
続きまだかなぁ・・・
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Unknown (Unknown)
2016-01-15 00:08:17
ブログとまってるなw
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Unknown (ゆっきぃ)
2016-01-15 05:56:16
ごめんね!
更新とめちゃって!
正月ぼけも終わったので更新再開していきます。
戦車の歴史もすぐにかくよ!!
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