いずも空母改修、そのメリットについて解説

2018-11-29 04:13:02 | 軍事ネタ

「いずも」空母化やF35B導入、防衛大綱に明記へ=関係者 - ロイター
https://jp.reuters.com/article/izumo-f35b-idJPKCN1NW0PL


今週世間を賑わせた2つの自衛隊ニュース。
いずも型護衛艦の空母改修F-35B戦闘機を100機追加検討 について。


いずも型護衛艦F-35B戦闘機
いずも型護衛艦とは2015年から就役している最新鋭ヘリ空母であり、1番艦「いずも」と2番艦「かが」が日本の防衛任務に就いている。
全長248メートル、最大幅38メートル、満載排水量26000トンは海自史上最大の護衛艦であり、
そのサイズと形状からして「いずれは戦闘機を運用するのではないか」 とはかねてより噂されていた。

前級のヘリ空母であるひゅうが型護衛艦「ひゅうが」と「いせ」が2009年に就役し、そして数年後にはこのいずも型2隻と、
短期間に4隻もの全通甲板式ヘリ空母を連続で就役させてきた流れがあるので、
ヘリ空母に国民の目を慣らさせておいてから、軽空母に改修する今の流れは予想できたし、
今回のいずも改修で軽空母の運用実績ができたら、次は始めから戦闘機搭載型空母を建造するのだろう。

防衛省がこんな回りくどいことをしたのにはもちろん理由がある。
専守防衛を掲げる日本は攻撃型兵器を持つことはできないとされているので、
空母は遠隔地に戦闘機の威力を投射する兵器なので攻撃型兵器とされ、
太平洋戦争を想起させる艦種でもあり、これまでにその採用は何度も見送られてきた。


そしてF-35戦闘機。
これはアメリカを始め多国間共同開発により生み出された最新鋭ステルス戦闘機で、
制空も敵地攻撃もあらゆる任務をこなせるマルチロールファイターであり、
老朽化している空自のF-4J戦闘機の後継として42機の導入は決定されていたが、
今回の報道によると最大100機もの追加配備を検討しているという。

まあ元々の42機という数が少なすぎたというのはあるが、
日本はF-35共同開発には参加していなかったため、
開発参加国よりも配備が後回しになる見通しだったことも関係していたのだろう。

検討なので確定かはわからないが、100機もの追加配備がされるとなると、
現在の主力戦闘機であるF-15Jの後継をも担うことになる。
F-15Jは初期型と、新型空対空ミサイルを使えるように近代化改修されたMSIP機というのがあり、
依然初期型の数が98機もあるので、100機だとほとんど数的にも合う。
F-15Jの初期型をいまさら近代化改修なんてせずにF-35で置き換える可能性が高い。

もちろん空自の都合だけではなく、F-35は艦載型もあるので、
いずもの空母改修とも連動しての検討だろう。




空母があると何ができるのか

ではさんざん空母だと騒がれているが、これがあると何がどうなるのか。
まあ戦闘機による制空、エアカバーを遠くに運ぶ機材なので、
中国と争っている尖閣諸島などの防衛を目的としているだろう。

日本は本土周辺の防衛戦が主眼なので空母は不要 という論調をよく見るが、
F-15J戦闘機が那覇基地から発進して尖閣諸島上空へ到達するには30分程度かかる上に、
激しく空戦機動をするとなると燃料残量的に前線での滞空時間はたったの10分そこらになる。
滞空時間については空中給油で補完することができても到達スピードについては解決できない。

またもし尖閣諸島に中国軍が上陸した場合、
もちろん自衛隊は奪還作戦を開始するわけだけど、
そのために水陸機動団という新設の専門部隊もあるのだけど、
占領された島への上陸作戦となると当然、航空機による対地攻撃支援が必須である。
しかしその爆撃任務も往復に時間がかかってはこれまた時間単位辺りの延べ攻撃回数が制限される。

つまり航空優勢をとるにも爆撃するにも発進基地が遠いと著しく効率が悪い。
上記2つの問題点は1982年フォークランド紛争 の戦訓でもある。


これが空母があると前線で発進できるので、攻撃の延べ回数も増大するし、
艦隊防空のエアカバーも、哨戒機を巡らせるにもあらゆる点で効率が良い。
さらにF-35は最新鋭のレーダーと電子装備により目が良いので、
哨戒任務の効率が上がれば前線海域での敵状況の捕捉精度も上がる。
まとめると空母はいろいろ使えて有用 ということである。

もちろん戦闘機の空母運用という新たな訓練や、そもそものコスト、
管轄や作戦統合はどうするのかとか、諸問題もあるけど。


くわえて、海自は2週間前の報道では無人攻撃機アベンジャー の導入を検討するという報道があり、
これがあればパイロットの危険や負担なくミサイルを運べる。
また空自は昨年、無人偵察機RQ-4グローバルホーク を3機導入決定した。
どうも最近の自衛隊は空母や無人機といった飛び道具を重視しているように見える。
その反面、陸自にはイージスアショア というミサイル防衛システムの導入を決定したし、
海自にはイージス艦を2隻追加配備することも決定している。
昨年と今年で新しい武装として矛と盾をバランス良く揃えている印象。


それはやはり勢力を増す中国軍に対抗するための陣容だろう。
ここ1,2年で急激に自衛隊周りが活性化しているような気がするので今後も楽しみ。

個人的に気になるのは、現在のヘリコプター搭載護衛艦 の艦種記号はDDH なわけだけど、
戦闘機搭載護衛艦 となった場合の艦種記号がどうなるのか気になる。
アメリカ空母にならえば翼を象形したVがつくのでDDV か・・・?

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