Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Western Electric 86 について(5)

2016-11-03 13:48:16 | Western Electric

 WE86Aの出力トランスは166A、WE86Bの出力トランスは166Bで両者の違いは出力インピーダンスとのこと。シアター用途のWE86Aに対しWE86Bはテレホンラインにも使われたということで8Ωと500Ωの出力となっている。
 しかしこのWE86Aは出力トランスはピアレスと思われるものに変更されている。それに伴いシャーシの穴が大きく、また取り付けネジ穴が開けられている。もちろん入手当時は承知していたわけだがいつかオリジナルのトランスに変更したいと思っていた。今回ラッキーにも166Bが入手できました。
 

 
 現在のトランスをはずして
 
 みるとピアレスではなくUTC

 規格はけっこう変わっていて1次側は9KΩ、2次側は最低で30Ω。これに8Ω接続すると1次側が見かけで2.4KΩ、、となるのかならないのかはよくわかりませんが、ちょっと変化球的な使い方だった様子。

 早速取り付けて配線
 
 我ながらひどいハンダ付け。太いコードを細い端子にハンダ着けるのは難しい。。ギリギリの長さのワイヤーを切れないので新しい芯線を出せないから仕方ない、、と自分を慰める。
 これで試聴。やっぱり異なりますが劇的な違いは無い。カソード電流もほぼ一緒。ところがメーター回路が復旧したので両300Bの電流を見ると結構違いがある。ゲッターも少ない老人球だと思います。出力トランスへの影響も心配なので完実の復刻WE300Bと交換するとほぼ100%で揃いました。メーター監視はなかなか有効。Marantzのようにバイアスを可変できるわけではないのでできることはせいぜい左右を入れ替えてお伺いを立てる程度。

 1086Aの下段には「714A Apparatus unit」が収まります。Apparatus unitとは単に「設備」とかの意味らしい。


 
 86本体にも使われたチョークコイルRET179Aが2機搭載されている。外部のプリアンプにB電源を供給する。現在は未接続でネジ2本でケースの底に固定されている。ネジ穴からこのスペースには複数のユニットが搭載できそう。

 気のすむまで掃除して再び組み立てました。しばらく聴き込んでみます。モニタースピーカーは最近お嫁入りした「ALTEC755A」なのですが残念ながら1本が歪みます。大阪の「リテルマネジメント」さんに相談してみます。(ここのご主人のSさんにはとても学ぶ事が多かったです)
 残留ノイズは測定して無いですが私には許容範囲でスピーカーに耳を近づけると60Hzが聞こえますがちょっと離れると聞こえない。ただしALTEC755AではなくWE555であればわかりません。現在はチョークインプットでチョーク後のコンデンサーは32μFですので許容範囲を超えてたらこのあたりの対応となるかもしれない。

 しばらく聴いていますが最初の頃と比べても角が取れて来て滑らかになって来た印象です。私の中では「シアターアンプは中高域の明瞭度が高くきつい音」というイメージがあります。ハスキーな歌手がシャウトしているような。WE91もWE86も聞いたことはありませんでしたが、WE91の代替え機のALTECAA1000を聞いた時はその感を強くしました。しかしこの個体はそういった印象は薄くどちらかというと美音の部類だと思います。もちろんスピーカーのキャラクターもあると思うがとても聞きやすい。歪み感の少なさは特筆です(測定もしていないので偉そうなことは言えないが)いままで接して来たメインアンプの序列でも最高位の部類かと思う。ただ現在はアッテネートを最減衰に設定してありますし、CDプレーヤー出力をT型アッテネータを介して接続しているだけなので周辺の機器を整備するとまた状況が変わるのでは無いかと思います。

 全体を通しての印象は古典的アンプには違いないが大きなシャーシでもありゆったりとわかりやすい構成になっていてメンテナンスもしやすい。CR類はほぼ交換が必要なのは仕方ないし場合によってはトランスの交換、巻き替えもあり得ること。しかしシャーシの剛性とワイヤーハーネスが生きていることは思った以上に重要な事柄では無いかと考えます。ここが失われてしまったものは取り返す事ができません。(ひょっとするとオリジナルかレプリカかの違いはここかもしれない。)ネジもオリジナルでしっかりと適切な工具を使ってきちんと締め付けてあることも大切かと。こういったことの積み重ねがキャラクターを決定するような気がしています。

 

 

 

 お読みいただきありがとうございました。

 

追記1

 オークションを見ていたら2000年当初に製造されたWE300Bが元箱付きで出品されていた。計測はしていない、箱は少し傷んでいる(写真付き)などの説明だが真空管の写真を見るとかなり酷使されているらしくゲッターは消失し管内にも茶色の焦げがこびりついている。最終的に2本で結構な値段で落札されていたがほぼ寿命は尽きていると思われた。切れかかった白熱電球を高額で買うようなものでWEというだけでこんなジャンクに大金払って、、と思う。真空管の売買はリスクが伴うのはもちろん承知の上だと思うがなにか虚しさが残る。売り手の最低の礼儀として客観的なデータを添付してほしいとおもう。

 WEならなんでも構わないというひとにはお節介な話でした。