名古屋・名駅街暮らし

足の向くまま気の向くままに、季節の移ろいや暮らしのあれこれを綴ります。

草刈りと飛騨牛繁殖農家

2012年05月31日 | セカンドルーム

 

山あいの小さな集落では、田植え機やトラクターのエンジン音が鳴り響いていたが、ここ数日は草刈機の音があちこちから聞こえるようになった。
田植えが終わって一段落する間もなく、田んぼの畦や段々畑ののり面に生えた雑草の刈払いが始まった。
雑草を放置しておくと害虫の発生源になったり、野生動物が潜む場にもなるので、収穫の秋まで欠かせない作業である。
菜園の草がかなり伸びていたので、周りのエンジン音に促されて草刈りをした。


草を刈った後はかなりすっきりしたが、山すそや庭が残っているので、これからは伸び盛りの草との競争が始まる。

去年の夏撮影


集落の人たちは、刈り取った草を干して堆肥の原料や牛舎の敷き藁、飼料などにも利用している。
かつて多くの農家で牛馬を飼い、化成肥料も使わなかった頃は、干草が貴重な農業資材であった。
田畑の周りだけでは足りず、山すそやなだらかな山腹などには集落の草刈場が点在し、1番草、2番草、3番草と競って草刈に励んでいた。
今は化成肥料に頼ることが多く、牛を飼う家も少なくなったが、むかしの名残りで大量の干草が今も田畑に漉き込まれる。


集落に住み始めた頃は、飛騨牛の繁殖農家が5軒あったが、この春に最後の1軒が止めて、集落から牛の姿が消えてしまった。
牛の飼育は朝夕の餌やりから牛舎の掃除、敷き藁の交換などの重労働が年中無休で続く。
ほとんどが高齢者で規模も小さく、2~3頭の親牛を飼って子を産ませ、9ヵ月後に市場へ出荷している。


 

 

 

 

 

 子牛の出荷

 

相場は変動が大きいが、平均すれば40~50万円前後とのことである。
飼料代や獣医の費用などを差し引き、休みなしの9ヶ月に見合う収入を考えると、若い人たちが希望を持って取り組む仕事にはなっていない。
この集落でも高齢者によって細々と続けられていたが、後継者に引き継がれることも無く、次々とやめていった。
飛騨地方では20年前に2500戸の農家で牛が飼われていたが、現在は700戸ほどだと言われている。
理由は様々であるが、この流れはとどまることが無く、いずれ肥育農家は飛騨生まれの子牛を手に入れることが難しくなることだろう。
循環型でエコな山里の農畜産業は、衰退の道をたどりつつある。

コメント (4)
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