かえるネット木津川南

大阪市南西部で活動する日本共産党の青年後援会のブログです。

原発の危険を告発2

2011-04-02 12:47:04 | 東日本大震災

2011年4月2日(土)「しんぶん赤旗」

原発の危険を告発 国民の命守る日本共産党 (下)


独立した規制機関が必要

安全体制の根本的欠陥示す

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(写真)党首討論で、原子力の規制機関の役割についての資料を小渕首相に渡す不破委員長(当時)=1999年11月10日、衆院第1委員室

 日本の原子力開発が安全確保の上で世界から大きく立ち遅れているのには、原子力安全委員会が独立した権限と体制をもつ安全監視・規制機関とはなっていないことが根本にあります。日本共産党は原子力の安全確保の要の問題として、1976年の不破氏の国会質問で次のように提起しました。

 「これまでの原子力行政の根本転換を図る必要がある。そのためには、アメリカやイギリス、西ドイツ、フランスのように、原子炉の設計、着工、運転から、核燃料の運搬、将来の廃棄物の処理まですべてにわたって責任を一元的に負えるような、開発側とは結びつかない原子力の安全体制を緊急に確立する必要がある」(衆院予算委)

 独立した権限をもつ原子力の安全監視体制が日本に設けられてこなかったのは、国内の電力会社とアメリカの原子力産業が求める原発大増設計画のためだけではありませんでした。原子力の安全監視のための本格的な規制機関が生まれて動き出したら、日本に寄港する米の原子力空母や原子力潜水艦に対しても、国民の安全最優先の監視の条件が強まります。

 実際、1974年1月に不破氏が国会で分析化学研究所の放射線測定データのねつ造事件を取り上げてから、米原潜の入港は183日間にわたりストップ。同研究所が全面的に改組されるなど、原発や港湾の放射能汚染監視体制が一定の改革を受けることになりました。

 住民・研究者の要求と日本共産党の追及を受けた政府は、78年にようやく原子力安全委員会を設置しました。ところが、専門部会のメンバーは全員が非常勤という貧弱さ。当時でも1900人もの専門家や専任職員を擁した米国の原子力規制委員会の体制とは雲泥の差でした。

 99年11月、不破氏は党首討論で「原子力安全条約では、原子力の推進機関と規制機関を厳格に区別するよう定めている。日本の推進機関、規制機関は、それぞれ何か」と質問。当時の小渕恵三首相は、規制機関も推進機関も「通産省(現経済産業省)と科学技術庁(現文部科学省の一部)」だと答弁し、日本の安全監視体制が国際条約違反であることを認める結果となりました。

 この追及を受けた政府は2001年に、原子力安全委員会を内閣府の下に置く機構改革を実行。しかし、安全委員(5人)以外の各部門の専門委員はすべて非常勤です。安全体制の一部を担う原子力安全・保安院も、原発の推進機関である経産省資源エネルギー庁の下に置かれています。

 今回の福島第1原発の重大事故でも、保安院は、もっぱら東電側の説明をノーチェックで発表しているだけ。安全委員会も自らを「黒子」と称するほどで、国際条約が定める本来の役割を果たしていません。

新増設計画 白紙で検討

志位委員長に首相答える

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(写真)菅直人首相(右から2人目)に「提言」を渡す志位和夫委員長(左から3人目)、市田忠義書記局長(同2人目)、穀田恵二国会対策委員長(左端)。右端は福山哲郎官房副長官=3月31日、首相官邸

 志位和夫委員長は東日本大震災後、被災者、被災地への訪問をはさみ、3度にわたり政府への緊急申し入れを行い、このなかで福島第1原発事故を受けて、現地住民・自治体の声に応えた緊急要求の実現とともに、原子力行政の抜本転換を求めました。

 31日の菅直人首相との会談では、「東日本大震災にあたっての提言」を手渡し、「原子力行政、エネルギー政策の抜本的な転換を」求めました。「エネルギー基本計画」で14基以上の原発の新増設をめざすことは「きっぱり中止すべきだ」と迫った志位委員長に対し、菅首相は「白紙というか、見直しを含めて検討したい」と表明。従来の政府方針を根本的に検討する姿勢を示しました。

 「提言」は、今回の福島第1原発の事故について「『日本では重大事故は起きない』という『安全神話』をふりまき、安全対策をなおざりにして原発をやみくもに推進してきたこれまでの原子力行政による人災にほかならない」と指摘。(1)「安全神話」と決別し、原子力の危険性を直視した原子力行政を(2)原発総点検、原発新増設とプルトニウム利用の核燃料政策の中止(3)原子力の規制部門と推進部門の分離、強力な権限をもった規制機関の確立―を提起しました。

 菅首相は、原子力の推進部門と規制部門が一体となっている現状に対し「重大な反省が必要だ」と述べ、分離の重要性について「(志位委員長の)指摘を受け止めて(体制の)あり方の検討が必要だ」と答えました。



原発の危険を告発

2011-04-02 08:50:55 | インポート

2011年4月1日(金)「しんぶん赤旗」

原発の危険を告発 国民の命守る日本共産党(上)


 深刻な被害を広げつつある福島第1原発事故は、安全に根本的な欠陥をかかえる原子力発電所の大量増設をすすめてきた日本の原子力政策を厳しく問うものとなっています。日本共産党は、原発大量増設が開始された当初から、原子力行政の根本的な転換を歴代政権に要求し、住民とともに増設計画に反対してきました。この問題での日本共産党の立場と主張は、重大化しつつある今回の原発事故に対し国を挙げ安全対策をとるうえでも、また今後も原発事故を繰り返させないためにも、重要な問題提起となっています。


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(写真)北陸・近畿圏の地図を示し原子力発電の危険について質問する不破哲三書記局長(当時)=1980年2月1日、衆院予算委員会

“安全神話”を厳しく追及

不破氏 原子力は本来、危険はらむ未完成の技術

1976・80年

 日本の原子力行政の最大の問題は、“核燃料が大量に拡散するような重大事故が起こることは考えられない”という「安全神話」を基礎としていることにあります。こんな「安全神話」に固執して狭い国土のほぼ全域にわたって原発の大量増設を推進してきた国は、日本以外には世界のどこにもありません。

 1976年1月、日本共産党の不破哲三書記局長(当時)は、「原子力は本来、危険性をはらみ、未完成の技術だ」と指摘。そのため「原子力開発に取り組むには、今日の技術が許す限りの安全体制をとらねば非常に危険なことになる」という根本問題を指摘していました。

 当時、政府は4900万キロワット、約50基分の原発大量増設計画を開始。日本共産党は安全最優先の立場から、無謀な原発大量増設計画に反対してきました。

 79年には、深刻な炉心溶融を起こした米国・スリーマイル島原発事故が発生。不破氏は80年2月の国会で、米国が大統領令で設置した「大統領特別調査委員会」(通称「ケメニー委員会」)の「勧告」をとりあげました。

 不破氏は、アメリカが重大事故から学んだ一番の教訓は「原発は十分安全だという考えがいつのまにか根をおろしてしまった。これが失敗を招いたのだ」ということだったと指摘。同勧告が「原子力は本来、危険をはらんでいるということを口に出していう態度に変わらなければならない」と訴えていることを示したうえで、不破氏は「原子力は大丈夫」だという「安全神話」の立場を「信念」として推進しようとしている日本の原発行政の根本的な危険を明らかにしました。

 一方、原発を推進する立場の関係者(いずれも当時)は、スリーマイル島原発のような事故は「日本ではほとんど起こりえない」(吹田徳雄原子力安全委員長)、原発の緊急炉心冷却装置は「オーバーデザイン(過剰な設計)」(有沢広巳原子力産業会議議長)などと、相変わらず「安全神話」の立場からの発言を繰り返してきたのです。

 日本共産党の志位和夫委員長は、3月23日の全国決起集会で「こんどこそ『安全神話』を一掃し、原子力の持つ本来的な危険性について国民に正直に語り、政府が国民の安全確保のために万全の体制をとる、正直で科学的な原子力行政へと転換することを、わが党は強く求める」と述べました。

震源域への大増設 中止せよ

不破氏「民族的な安全が危機に瀕する」と指摘

76・81年

 日本共産党は、日本列島全域に大量の原発を建設する計画の中止を求め、住民とともにたたかってきました。

 不破氏は76年の国会質問で、原発大増設計画が推進されるなら、「日本国民の民族的な安全が危機に瀕(ひん)する」と厳しく警告しました。81年2月の質問では、現在深刻な危機を引き起こしている福島原発をはじめ、女川(宮城県)、柏崎刈羽(新潟県)、浜岡(静岡県)、伊方(愛媛県)、福井、島根などの原発が、いずれも大地震の想定震源域や活断層の真上にあることを示しました。「こんな危険な地盤の上に原発をつくろうとする国は、世界のどこにも例がない」と批判した不破氏は、計画の撤回と既存原発の全面的な安全総点検を求めました。

 この日本共産党の主張に対し、政府と電力会社は、原発の耐震性の若干の改善や核燃料輸送容器の耐久性強化など部分的な改良を進めましたが、震源域での原発増設にあくまで固執してきました。

 しかし、2007年の中越沖地震で火災などの重大事故を起こした柏崎刈羽原発(現在も三つの原子炉で運転停止中)に続き、今回の大地震では福島第1原発で重大事故を起こし、女川原発でも復旧のめどが立たない被害を受けています。まさに、日本国民を“民族的な危機”に直面させる事態を招いています。

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(写真)質問する吉井英勝議員=2006年3月1日、衆院予算委第7分科会

大津波・電源喪失 ともに警告

吉井議員 冷却不能指摘し対応迫る

2006・10年

 日本共産党は「安全神話」に反対し、既存の原発の危険性をただすために全力で取り組んできました。

 今回の福島第1原発の重大事故は、地震と大津波によって、冷却機器とその電源設備が破壊されたことによって引き起こされました。この二つの危険を、ともに国会で追及してきたのが、日本共産党の吉井英勝衆院議員でした。

 5年前の2006年3月1日の質問(衆院予算委員会第7分科会)。吉井氏は、大津波を引き起こしたチリ地震(1960年5月)、スマトラ沖地震(2004年12月)、明治・三陸地震(1896年6月)にふれながら、波の高さが10メートルを超え、明治・三陸地震では38メートルの記録があることを指摘。巨大津波を想定した対策を提起しました。

 巨大な“押し波”による原発機能の破壊とともに、吉井氏がこの質問で強調したのは“引き波”の影響。長時間の大規模な海面低下で冷却水の取水ができなくなり、炉心の冷却機能が喪失して、最悪の場合には炉心溶融を引き起こし、燃料棒の崩壊熱を除去できなくなる危険を明らかにしました。「どんな場合にも、チェルノブイリ(原発事故)に近いことを想定して、対策をきちんととらなければいけない」と吉井氏は要求したのです。

 これに対し広瀬研吉原子力安全・保安院長(当時)は「必要な海水を取水できるような設計をされている」「原子炉を冷却できる対策が講じられている」と、対応を拒否しました。

 吉井氏が、電源喪失の危険を追及したのは昨年5月26日の衆院経済産業委員会の質問。外部電源、非常用の発電機(内部電源)の破壊が「巨大な地震が起こると、同時に発生することが起こりえる」と提起。「自家発電や外部電源の喪失で二次冷却系が機能しなくなって炉心溶融に至ったときにはどれだけの規模の被害が発生するか、こういうことを検討しておくことが必要だと思う」と早急な備えを求めていました。

 いずれの質問も、今回の福島第1原発の危険性を予見し、対策を求める質問でした。

 東日本大震災後、日本共産党の大門実紀史参院議員の質問に対し、菅直人首相は、津波の影響について「認識が結果として間違っていたことは否定しようがない。予測が低すぎて、原発建設以前のチリ地震の基準を満たしていないとすれば相当問題だ」(3月29日)と答弁。“安全神話”に深くはまり込んだ政府と電力会社の対応が今回の“人災”を引き起こしたことを認めました。

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被災者支援・復興、原子力・エネルギー政策の転換を

2011-04-02 08:50:40 | 東日本大震災

2011年4月1日(金)「しんぶん赤旗」

被災者支援・復興、原子力・エネルギー政策の転換を

――東日本大震災にあたっての提言

日本共産党幹部会委員長 志位 和夫


 日本共産党の志位和夫委員長が31日、菅直人首相に手渡した「東日本大震災にあたっての提言」は次の通りです。


 東日本大震災の発生から20日間が経過した。巨大地震と津波による甚大な被害のうえに、福島原発事故の被害がくわわり、その被害は「国難」ともいうべき戦後未曽有の規模に達している。多くの被災者が、心身ともに深い苦しみのふちにあり、先の見えない不安のもとにおかれている。犠牲になられた多くの方々への深い哀悼とともに、すべての被災者の方々への心からのお見舞いを申し上げる。

 日本国民が、政治的立場の違いをこえて力をあわせ、国の総力をあげてこの大災害を乗り越えるとともに、それを通じて国民だれもが安心してくらせる新しい日本を築くことが求められている。

 わが党は、大震災の発生いらい、節々で政府に一連の要請・提起をおこなってきたが、それらを踏まえつつ、現時点で以下の諸点について実行することを提言する。

1、被災者救援、原発事故の危機収束―二つの緊急の大問題にとりくむ

 東日本大震災の被災者救援、福島原発事故の危機収束は、人命にかかわる重大問題であり、国の総力をあげ、何としても打開しなければならない緊急課題である。

(1)未曽有の大災害にふさわしい被災者救援を

 ――(避難所での二次被害の拡大をふせぐ)災害から救援された方々が、避難所で健康を害し、命を落とす痛ましい事態の拡大を、何としても防がなくてはならない。燃料、食料、水、医薬品など支援物資を被災者のもとに安定的に供給すること、医療・介護などのケアスタッフの派遣を強化することを求める。

 ――(安定した避難所の確保)公共住宅、雇用促進住宅、公務員宿舎の活用、民間住宅の借り上げなど、より安定した避難所を確保するために、近隣自治体にも協力を要請しながら、国として最大限の措置をとることが必要である。

 ――(希望者全員が入れる仮設住宅建設)「住まい」の問題は、家を失った被災者の深刻な不安であるとともに、切実な要求である。政府は、「希望者全員が入居できる仮設住宅を確保する」という立場を明確に打ち出すべきである。そのうえで、目標と計画を発表し、随時、進捗(しんちょく)状況を被災者に公表すべきである。民有地の借り上げも含め、必要な土地の確保に責任をもってとりくむことが必要である。仮設住宅建設にあたっては、地域のコミュニティーを守ることに最大限配慮すべきである。

 ――(被災者支援制度の周知徹底と柔軟な対応を)被災者の医療費無料、生活支援制度や貸し付け、各種の税・保険料の減免制度、雇用保険、特別な融資制度など、不十分であっても存在する現行の被災者支援制度が、多くの被災者と関連自治体に知らされていない。国として、被災者、関連自治体、医療機関、金融機関、教育現場に、周知、徹底し、被災者がすべての制度を活用できるようにする。そのさい、実情をふまえ、被災者の最大限の救援のため、柔軟で適切な対応をすることを要求する。

 ――(雇用、農漁業、中小企業を守る緊急の手だて)大企業による、震災を口実にした不当な解雇や雇い止め、内定取り消しを防止するとともに、大企業に、被災地での雇用確保、関連・下請け企業の再建支援などの社会的責任を果たすことを求めるべきである。雇用調整助成金などを最大限活用するなど、雇用の維持をはかるためのあらゆる手だてをとることを求める。甚大な打撃を受けた農漁業、中小企業を守るために、無利子無担保の緊急融資、休業補償など、緊急のあらゆる手だてをとることを要求する。

(2)福島原発事故の危機収束と、被災者・被害への賠償を

 ――(原発事故の危機収束に総力を)福島原発事故の拡大を抑え、危機をすみやかに収束させるために、原子力安全委員会、原子炉メーカー、原子力機構、大学など内外の専門家、関係技術者の知恵と能力の総結集をはかることを引き続き強く求める。

 そのためにも、原発事故の現状について政府・東京電力・原子炉メーカーが持っている情報を全面的に開示すべきである。それぞれの原子力施設を襲った地震動や津波の数値、原子力施設の被害・破損の状況、政府の情報収集衛星が撮影した画像、放射能の核種ごとの線量――など事故についての情報を全面的に開示することを求める。そうしてこそ、さまざまな分野の専門家・研究者・技術者の知恵と能力を結集することができる。

 また、政府が、原発事故の収束にむけて、どういう戦略でのぞみ、現段階でどういう見通しをもっているのかを、可能な範囲で国民に説明すべきである。

 ――(放射能汚染のデータの公表)放射能の拡散と汚染のデータを、政府が一元的に責任をもって、国民にたいして、正確に、すみやかに、継続的に伝えることを求める。データの公表にあたっては、政府の公式発表だけでなく、国民がその意味を正確に理解でき、取るべき行動がわかるような、専門家による補足説明を必ずおこなうことが必要である。公表したデータの説明と、国民への行動の指示が矛盾するような発表の仕方は、あらためるべきである。正確な情報を国民に公開し、国民と共有してこそ、安易な楽観視も、過剰な危惧も抑制し、風評被害を防止することもできる。

 ――(原発事故被害の被災地にたいする責任ある対応)原発事故被害の被災地の住民と自治体にたいして、放射能の拡散と汚染のデータの全面的・継続的な提供、福島第1原発から20キロメートルから30キロメートル圏の地域への責任ある対応、国として責任ある権限をもった職員の関連自治体への配置、風評被害防止と被害の全面補償、あらゆる避難者を区別せず宿泊場所の提供など手だてをとることを要求する。ヨウ素剤の周辺住民への配布、被ばく検査と除染について、政府が責任をもっておこなうことも必要である。

 ――(原発事故被害にたいする全面的賠償)原発事故によって、すでに一部の原乳、農産物から暫定基準値を超える放射能が検出され、政府が出荷停止を指示するなど、農家などに重大な被害をあたえている。風評被害も含めた農業・漁業被害、原発事故で避難を余儀なくされている中小商工業者の被害にたいする全面的な補償と賠償を、東京電力と国の責任でおこなうことを求める。当面、東京電力に、被害を受けた農家や避難住民への補償仮払いを直ちにおこなわせることが必要である。

 ――(「計画停電」を見直し、大口需要者の総量抑制を)社会的経済的混乱を引き起こしている「計画停電」を見直し、東京電力まかせにせず、大口需要者への総量抑制などによる節電をすすめるべきである。

2、戦後未曽有の災害からの復興に、国の総力をあげてとりくむ

 地震と津波で破壊された市町村では、住宅も、商店街も、役場も、学校も、病院も、道路や橋も、港も、あらゆるものを一から作り直さなければならない。壊滅的打撃を被った農林漁業と中小企業を再建しなければならない。復興には、国民的なエネルギーを総結集した、文字通りの国家的プロジェクトが必要である。

(1)生活再建、地域社会の再建こそ、復興の土台

 復興にあたっては、「生活再建、地域社会の再建こそ、復興の土台」――住宅がつくられ、地域のコミュニティーが再建されてはじめて復興といえる――という立場を堅持することが大切である。

 ――(個人補償の抜本的拡充)生活再建にあたっては、家を失った被災者への個人補償の抜本的な拡充が不可欠である。阪神・淡路大震災を契機に、被災者をはじめ国民的な運動で、「住宅は私有財産だから個人責任」という従来の国の姿勢をかえ、被災者生活支援法がつくられた。しかし、現行制度は全壊でも300万円の支援にとどまっており、とてもこれでは生活再建はできない。支給額の大幅な引き上げを強く要求する。巨大津波によって基盤となる土地そのものが破壊されている場合も多数あり、深刻な被害の実態にそくした制度の抜本的拡充も必要である。

 ――(被災自治体への十分な財政支援)地域社会の復興のためには、特別の復興交付金、各種補助金の抜本的拡充など、自治体への十分な財政支援が必要である。今回の大震災では、津波で押しつぶされ、地盤が沈下した同じ場所に、街を再建することが困難となり、新たな土地に街をつくることが必要になるなどの、従来になかった新しい問題も生まれている。何よりも住民と自治体の自主性を尊重しながら、住民合意で新しい街づくりをすすめる抜本的支援をおこなうことを求める。

 ――(農林漁業、中小企業復興のための一大プロジェクト)太平洋沿岸の漁業は、東北を中心に、北海道から九州にいたるまで甚大な被害を受けている。農業も、東北地方を中心に、広大な農地が海水につかり、土砂で埋め立てられるなどの深刻な被害を受けている。農林漁業の復興のための一大プロジェクトが必要であり、従来の法律の枠組みを大きく超えた支援と補償を要求する。中小企業や自営業者への思い切った支援と補償も、地域経済復興のために不可欠である。

(2)復興財源についての提案

 被災総額は、阪神・淡路大震災を大きく上回る。財源の見通しを示すことは、被災者、国民の不安にこたえるうえでも、きわめて重要である。

 ――(11年度予算を抜本的に組み替える大規模補正)法人税減税や証券優遇税制の延長など、2兆円におよぶ大企業・大資産家減税を中止する。歳出全般を見直し、不要不急の大型公共事業の中止、米軍への「思いやり予算」やグアムの米軍基地建設費の中止、高速道路無料化の中止、原発の建設・推進経費の削除、政党助成金の撤廃などを行い、復興のための予算にあてる。これらによって年間5兆円程度の財源を確保する。

 ――(大企業の内部留保の活用を提唱する)政府として、244兆円にのぼる大企業の内部留保を、復興と被災地域の経済再建に活用する手だてをとることが必要である。従来の国債とは別枠で、「震災復興国債」を発行し、大企業に引き受けるよう要請することを提唱する。大企業は「手元資金」だけでも64兆円におよび、「使い道がなくて困っている」状態である。この巨額の資金を、震災と日本復興のために役立てるべきである。それは日本全体の内需を拡大し、日本経済が打撃から立ち直って発展をとげるうえでも大きなプラスとなるだろう。

3、原子力行政、エネルギー政策の抜本的な転換を

 福島原発の事故は、「想定を超えた」自然災害による不可抗力の事故ではない。福島原発についても、日本共産党や市民団体が、チリ地震級の津波がくれば冷却設備が機能しなくなり、重大事故に陥る危険が存在することをくりかえし指摘し、改善を求めてきたにもかかわらず、東京電力側がそれを拒否してきたという事実がある。この事故は、「日本では重大事故は起きない」という「安全神話」をふりまき、安全対策をなおざりにして原発をやみくもに推進してきたこれまでの原子力行政による人災にほかならない。

 福島原発事故の収束のためにあらゆる知恵と能力を結集することを最優先課題としてとりくむとともに、日本の原子力行政、エネルギー政策は従来のままでよいのかを、根本的に再検討することが必要である。

(1)安全最優先の原子力行政への転換を

 ――(「安全神話」と決別し、原子力の危険性を直視した原子力行政を)日本の原子力行政の最大の問題は、「安全神話」を基礎としていることにある。原発に関しても、政府は、「苛酷事故――大量の放射性物質が放出されるような重大事故――が起こることは日本では現実に考えられない」として、国際原子力機関(IAEA)が求める苛酷事故を想定した対策をつくることすらしてこなかった。「安全神話」とは、「原子力は安全だから心配はない」とする立場だが、これを国民に宣伝するとともに、自分もこの「神話」にとらわれて、安全対策をおろそかにするというものである。こんな「神話」に固執している国は、日本以外には世界のどこにもない。

 アメリカで、1979年にスリーマイル島の原発事故が起こったとき、事故調査の最終報告書でもっとも強調されたのは、「原子力発電は安全だ」という思い込みに最大の問題があった、これを「原子力発電は本来的に危険性の高いものである」という姿勢に切り替えなければならないという反省だった。この教訓は、いまでは世界の多くの国ぐにの共通の認識になっている。

 こんどこそ「安全神話」を一掃し、原子力のもつ本来的な危険性について国民に正直に語り、だからこそ政府が国民の安全確保のために万全の体制をとる正直で科学的な原子力行政へと転換することを強く求める。

 ――(原発総点検、原発新増設とプルトニウム利用の核燃料政策の中止)この基本的立場にたって、原子力政策の思い切った転換をはかる必要がある。国際基準に合致し、今回の震災の教訓も踏まえた、新しい安全基準をつくり、それにもとづいて全国の原発の総点検をおこなうことを求める。

 政府が昨年策定した、14基以上の原発を新増設する無謀な計画はきっぱり中止すべきである。東海地震の想定震源域の真上に位置する浜岡原発の停止、老朽化した原発の「延命」の中止、危険きわまりない高速増殖炉「もんじゅ」、ウランより危険性の高いプルトニウムが入った燃料を一般の原子炉で燃やすプルサーマルなど、プルトニウム利用の核燃料サイクル政策の中止を要求する。福島原発は廃炉にすべきである。

 ――(原子力の規制部門と推進部門の分離、強力な権限をもった規制機関の確立)原子力の安全確保の体制でも、日本の体制には、世界の水準からみて、重大な欠陥と立ち遅れがある。わが国が批准している「原子力の安全に関する条約」では、原子力の安全のための規制機関は、原子力発電を推進する行政機関と、明確に分離することを義務づけている。イギリスでは保健安全執行部(HSE)が、ドイツでは環境省が、アメリカでは独立した行政機関として3900人の常勤スタッフを擁する原子力規制委員会(NRC)が原子力の安全のための規制機関としての仕事にあたっている。

 ところが、日本では、規制機関とされる原子力安全・保安院が、推進機関である経済産業省の一部門となっている。現在、推進部門から独立した形になっているのは、原子力安全委員会だけだが、その権限はきわめて弱いもので、安全規制や事故対策でも補助的な権限しかあたえられていない。独立した規制機関が存在しないという日本の体制は、国際条約に違反するものであるとともに、この深刻な制度的欠陥は、今回の事故においても重大な弊害をもたらしている。

 こうした原子力行政の制度的欠陥を、ただちにあらためる必要がある。日本でも、アメリカの原子力規制委員会(NRC)のような、推進部門から独立し、強力な権限と体制をもった原子力の規制機関を確立することを強く求める。

(2)自然エネルギー、低エネルギー社会への戦略的転換を

 ――(原発依存から自然エネルギーへの転換)原発依存のエネルギー政策から、自然エネルギー(再生可能エネルギー)への戦略的な転換を決断すべきである。

 ドイツでは、発電量の16%を再生可能エネルギーでまかなっている。これは福島第1原発1号機の25基分に相当する。さらに、2020年には発電量の30%以上、2050年には80%の目標をかかげ、長期的な戦略として再生可能エネルギー計画を立てている。原発依存のエネルギー政策から脱却し、太陽光・熱、風力、水力、地熱、波力、潮力、バイオマスなど再生可能エネルギーへの転換を決断し、大胆な目標と、それを実行するプランを策定すべきである。

 ――(低エネルギー社会への転換)同時に、社会のあり方として、「大量生産、大量消費、大量廃棄」、いわゆる「24時間型社会」という社会のあり方を、根本的に見直し、低エネルギー社会への転換をはかるべきである。異常な長時間労働を是正し、夜間労働を規制して、人間らしい労働と生活を保障することは、その重要な内容の一つである。