山内 圭のブログ(Kiyoshi Yamauchi's Blog)

英語教育、国際姉妹都市交流、ジョン・スタインベック、時事英語などの研究から趣味や日常の話題までいろいろと書き綴ります。

第94回新語・語法研究分科会で研究発表を行なう

2010-11-13 23:24:48 | 日記
11月13日(土)、東京都中央区立ハイテクセンターで行なわれた日本時事英語学会第94回新語・語法研究分科会で、研究発表を行ないました。

研究発表のタイトルは、「英語の新聞・雑誌のヘッドラインおよびキャプションに見られる文学作品名について―John Steinbeckの作品名を中心に―」。

これまで、英字新聞や雑誌を読む中で集めてきたジョン・スタインベックの作品名を使ったヘッドラインとキャプションを紹介したのです。

今日の会は午前中開催だったため、昨日の夜、新見を「サンライズ出雲」で出発し、今日の朝、東京入り。

今、風邪を引いていて、眠くなる薬を服用しているため、寝台車中でもよく寝ることができました。

会場の最寄り駅に早めに着いたので、近くの公園のベンチに座り、読書タイム。
これが、その公園のベンチから撮った写真です。


時間となり、会場のハイテクセンターに向かいました。


今日の、発表は、まず僕が新聞・雑誌の見出しに興味を持った経緯を話しました。

僕が若い頃、電車に乗っているときに、他の乗客がスポーツ新聞を読んでいました。
そこには、「古池ヤ」と書かれた見出しがありました。
これは、プロ野球の記事でしたが、古田選手と池山選手が活躍して、ヤクルトが勝利したという記事でしたが、それを芭蕉の句「古池や~」にかけて表現する、何と見事な言葉遊びだと衝撃を受けました。
そして、英語の見出しはどうなっているのか興味を持ったのがきっかけです。

その後、自分で集めたキャプションとヘッドラインを分析し、「キャプション及びヘッドラインに見られる言葉遊び」というタイトルで、日本時事英語学会第34回年次大会で発表し、それを「新聞記事のキャプション及びヘッドラインの言葉遊び」というタイトルで、当時、出身の横浜国立大学の教育学研究科の英語専攻の大学院生で発行していた同人誌Touchstone(No.4, 1993) に発表しました。(1-24)

その中で、私は、ヘッドラインおよびキャプションを次の9つのカテゴリーに分類しました。
1) 語呂合わせ
2) 定型句
3) 諺
4) 聖書
5) 縁語
6) 韻
7) タイトル
8) 写真との関係
9) その他

今回の研究発表では、7)のタイトルに分類されるものを扱ったということになります。タイトルと言っても、その中には、文学作品のタイトル、映画作品のタイトル、歌のタイトルなどがあります。そのうちの、文学作品のタイトルを利用したヘッドライン・キャプションのうち、私の専門とするJohn Steinbeckの作品名を利用したものを紹介しました。

収集例を紹介する前に、ヘッドラインおよびキャプションに言葉遊びが見られるのはなぜかについて指摘をしておきました。

まずは、読者の目を引き付けるという機能があります。
忙しい新聞読者にいかに本文まで読ませるか、そのためにヘッドラインが果たす役割は重要です。

次には、インテリ読者の知的な心を満足させるという機能もあります。
見出しの言葉遊びに気付き、ニヤリとして知的満足感を得る、このような快感を新聞は読者に与えることができるのです。

そして、これは、新聞作成者側の知的レベルを示すという機能をも果たしていると考えられます。新聞のデスク担当や記者が、自分たちの知識をひけらかす、言葉を変えると衒学の機会にもなっているのです。

ということは、新聞を読むという行為が、そのヘッドラインやキャプションをめぐって、新聞製作者側と読者が、一種の知的ゲームを楽しんでいるということとなる、そんな気分にさえなります。

上記のことから、僕は、毎日読む英字新聞のヘッドラインやキャプションを楽しみに読んでいます。「ヘッドライン・ハンター」と言うべき存在なのです。
ちなみに、この「ヘッドライン・ハンター」、英語ではheadline hunterと書き、立派な英語として存在する言葉です。

今日の、研究発表で紹介したヘッドライン・キャプションのリストを下に挙げておきます。
Of Mice and Men(1937) 10例
“Of mice and men” The Age・Saturday, March 27, 2004 A2 4
“OF MICE AND MEN” Newsweek, May 18, 1998 pp.50B-50C
“Of Vice And Men:” from Newsday (The Daily Yomiuri, October 4, 1992)
“Of Dogs and Men” Time, June 16, 2003 p.60
“Of mice and yen: Remember the name ‘Tososhin’” The Daily Yomiuri, October 29, 1998
“Of mice, mollusks and men” The Daily Yomiuri, October 22, 1998
“Of Mice and Menopause” Time, March 29, 2004 p.49
“Of magic and Men” Time, September 6, 2004
“Of Mice and Morons” from Sports Illustrated, June 5, 2006, (The Daily Yomiuri, June 12, 2006)
“Of moths and men” The Independent, September 7, 2003, (The Daily Yomiuri)

The Grapes of Wrath(1939) 5例
“Grapes of wrath in wine country” The Age (Saturday), August 25, 2007 News 9
“Grapes of wrath” (caption) The Daily Yomiuri, September 21, 1994
“Grapes of wealth” (caption) The Daily Yomiuri, December 7, 1996
“Fruit Of Wrath” (caption) The Daily Yomiuri, March 5, 1993
“Grapes of wrath” from The Sydney Morning Herald, January 7, 2000 (The Daily Yomiuri, January 10, 2000)

Bombs Away(1942) 7例
“Bombs away” The Daily Yomiuri, June 23, 2005 p.22
“Bombs away: Yanks blast Rangers” The Daily Yomiuri (Newsday), August 7, 2003
“BOMBS AWAY” (caption) The Daily Yomiuri, November 3, 2001 p.24
“BOMBS AWAY” The Age・Saturday, August 25, 2007, p.1
“ESSENDON BOMBERS AWAY” The Age, August 27, 2007, p.20
“Bombs away” (caption) The Daily Yomiuri, February 3, 2000
“BOMBS AWAY” (caption) Newsweek, August 20, 1998 p.18

Burning Bright(1950) 3例
“Tigers fans burning bright” The Daily Yomiuri, September 17, 2003, p.3
“The Tigers, Burning Bright in Detroit” The Washington Post, October 25, 2006 (The Daily Yomiuri)
“Still burning bright” The Sunday Age, September 3, 2006 Extra 18

East of Eden(1952) 1例
“West of Eden” Herald Sun, August 6, 1999 p.10

The Winter of Our Discontent(1961) 5例
“WINTER OF DISCONTENT” GOALS, April 1, 1996 p.6
“Winter of discontent” The Daily Yomiuri, November 1, 2002 p.20
“A Summer of Discontent” Newsweek, July 12, 1999 p.37
“SUMMER OF DISCONTENT” The Independent (The Daily Yomiuri), August 7, 1992
“now is the Winter of Our Content” Seasons, winter 1997 p.3

です。
それらを紹介した後、作家が作品のタイトルを決めるプロセスと、新聞社が記事のヘッドラインを決めるプロセスが類似している可能性を指摘しました。
スタインベックも過去の作家の作品を拝借して、自分の作品の名前をつけています。
例えば、スタインベックの作品Of Mice and Menは、Robert Burnsの“To a Mouse”という詩から、The Grapes of Wrathは、Julia Ward Howeが作詞した歌“The Battle Hymn of the Republic”の一節から、Burning Brightは、William Blakeの詩“The Tyger”の一節から、East of Edenは聖書の創世記(Genesis 4. 16)から、The Winter of Our DiscontentはWilliam Shakespear のRichard III(Act 1 Scene 1 1-4)からとられているのです。

Steinbeckが自分より先に存在する作家の作品のイメージを拝借し、それを自分の作品の表題とする、新聞社が、自分たちの記事よりも先に存在する作品のイメージを拝借し、自分たちのストーリー(記事)に見出しをつける、これはおそらくかなり類似するプロセスではないかと思うのです。

そのようなことを述べ、最後には、Sunil Saxenaの著書Headline Writing(New Delhi: Sage Publications, 2006)に出てくる、“A good headline is one that in less than a dozen words summarizes what a reporter has said in 100, 250 or even 500 words.”(「よい見出しは、記者が100語、250語、いや500語かけて述べていることを、数語以内で要約するものである)、という言葉を紹介して、発表を終えました。




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