『月の光』/冨田 勲…1974年作品です。キノコさん12歳、小6。手に入れたばかりのラジカセでNHK・FMの『サウンド・オブ・ポップス』をエア・チェックしてはため息ついてました。
「なんだろう。この聞いたことない不思議な音は…」
『電子音』っていわれても『シンセサイザー』っていわれても…全く見当もつかない。身近な電子音といえば当時は電子オルガンくらいでしたから。
とにかくシンセサイザーの「絵」が浮かばない。
そんなある日新聞に冨田さんのインタビュー記事が掲載されました。写真も載っていました。どれどれ?冨田さんの背後にシンセサイザーらしきモノが映っています。んっ?「なんだ?このタンスのオバケは!」
キノコさんビックリしたと同時に写真を穴が開くほど見つめました。タンスには無数のツマミとケーブルを差し込むジャックがついています。まさに「21世紀・未来の楽器」がそこにあったのです。冨田さんはインタビューの中でこう仰っていました。「ピアノ曲を聞いてる時にはピアノの絵が、バイオリン協奏曲を聞いている時にはバイオリンの絵が頭に浮かびますでしょ?でもシンセサイザーで作る音楽には『奏者の姿がない』のです。曲を聞きながら何を思い浮かべていただいても自由なのです。」そうなのです。私が冨田さんの曲を聞く時私の頭の中には音色によって何種類かの『妖精』が登場してくるのです。お茶目ないたずらっ子、物知りの長老、全てを抱擁する母、理路整然として厳格な父、クールな吟遊詩人、そして3枚目のポンコツロボット…なんてステキな世界なんでしょう。電子音に魂をふきこんだ冨田さん。私は冨田さんから「音に愛情をこめること」と「ユーモアの大切さ」を学ばせていただきました。ちなみにNHK『きょうの料理』のテーマ音楽、冨田さん作曲ですよ。もう50年近くずーっと同じテーマ曲だそうです。スゴいことですね。冨田さん、今年74歳。いつまでもお元気でいてください。