観るも八卦のバトルロイヤル

映画・ドラマを独断と偏見(?)で、
斬って斬って斬りまくる。
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「僕たちの戦争」。勝手に反戦週間。七作目は、タイムスリップ。

2010年08月16日 | 映画・ドラマ
 2006年と戦時下が交差。互いの同じ顔の音顔が入れ替わった。そして、見知らぬ時代で生きて行く事を余儀なくされた2人を森山未來が二役で演じ分ける。
 これも,数年前、観た作品だが、勝手に反戦週間。そして今日は終戦記念なので、数年振りに鑑賞。
 入れ替わった互いが見知らぬ世界でのとまどいや、週間の違いへの憤りを感じながら。自分の世界を重んじるという深い意味合いがある。
 過去から現代はいいとしよう。しかし、今から戦時下へ、しかも軍隊へ行くという過酷な運命。これは受け入れ難い。
 ラストの選択がお見事。
 海を巧く使って時代を行き来する手法も素晴らしい。
 深い作品であると思うが、森山未來、上野樹里、古田新太、麻生祐未、内山理名、樹木希林、玉山鉄二といった巧者が場面を盛り上げる。
 現在を見た戦時下の森山未來が「こんな世界を作るために我々は…」と嗚咽するシーンは、「帰国」にも繋がる。
 コメディタッチながら訴えているのもシリアスで重い。そんな重さを感じさせない森山未來に拍手。
 今日まで、なんで? と思っていたが、だって変な顔だもの。とても主演の顔じゃない。でも、森山未來、巧いんだわ。役者だわ。
そしてラストはかなり切ないよ。平和しか知らない我々には思いもよばない選択。
 前に書いた事は忘れたが(忘れるくらいの印象だった)、今日観直して、この作品は深い。
 戦闘シーンとか、悲惨なシーンはないが、戦争の無情さを十分に現している。とわたくしは思う。
 そして、こういう作品を観ても、「チョーむかつく」とか、「あり寝ない」とか、疑問系で話すバカ、過去形で話すバカには伝わらないんだよね。
 これまで戦争物を観て来て、戦時下の人々の思いや、生き方に切なくなったが、彼らの屍があったればこその今をどれだけの人が理解しているのだろうか?
 親父狩りとか苛めとか、虐待とか、平和であればこその事件だ。
 他人を自己満足の為に傷つけるやつは戦争に行け!

「15歳の志願兵」。勝手に反戦週間。六作目は、心理戦。

2010年08月16日 | 映画・ドラマ
 太平洋戦争末期、軍からの要請で「予科練」に49名の志願兵を送らなければ成らなくなった愛知一中。エリートと呼ばれる彼らは決起集会で、全校生徒700人が志願を決める。
 「予科練」=特攻=死を意味するその選択に苦悩する少年の夢や友情。彼らを戦地に送らなければならない教師や親の葛藤を静かに表現している。
 こちらも戦闘シーンは無く、言うなれば、戦時下の心理戦。軍や軍国主義の教師に乗せられる形での志願から、集団心理へと動き、思いとは裏腹に志願をせざるを得ない少年の心理。死ぬ事が良しとされた時代に本心を隠し精一杯強がる少年の痛々しさが、悲しい。
 そして、見送る母を夏川結衣が好演。感情を表さず、静かに静かに、息子を見送るが、心の叫びを表情だけで表現している。
 教師でもあり、生徒の1人が息子でもある藤山順一に高橋克典。その息子・正美に池松壮亮。この子、竹野内豊に凄く似てるんだけど、誰? 順一の妻・明子に鈴木砂羽。ほか、福士誠治、平田満、竜雷太、太賀、佐戸井けん太、近藤芳正らが出演。賛成派反対派、どちらの主張も間違いでないように思わせる演出が見事だ。
 最後に生徒を志願させる事を良しと推奨した教師の佐戸井けん太が終戦後、新たな生徒と野球を楽しむシーンが映し出されるが、このワンシーンで、軍国主義の教師の心が戦後一瞬にして民主主義へと変わっていったことを現している。
 時代が流れが人の心をも飲み込んでいった「戦争」という悲しい史実を描いている。
 

「歸國」。勝手に反戦週間。五作目は、現在に問いかける社会派ドラマ。

2010年08月16日 | 映画・ドラマ
 倉本聰原作の「歸國」。
 舞台は現代の8月15日、終戦記念日の深夜。
 終電が終わり、静まり返った東京駅のホームに、1台の軍用列車が到着する。降車したのは、60余年前、南の海で玉砕し海に沈んだ英霊たちだった。
 彼らの目的は、平和になった故郷を目撃し、かの海にまだ漂う数多の魂に、その現状を伝えることだった。
 故郷へ、また思いを残す人の元へ、それぞれが散って行く。
 戦地で死んだものの、英霊とされなかった者は、日本を彷徨うことを余儀なくされ、その1人である立花報道官(生瀬勝久)がナビゲーター的役目を果たし、60余年の年月を英霊達に知らせる役割も担っている。
 東京の深夜を「明るいな」と話すワンシーンがあるが、車の量や、町の様変わり、高層ビルには感心を示さないあたりは…むむむ。
 出演は、大宮上等兵(ビートたけし)、木谷少尉(小栗旬)、河西洋子(当時/堀北真希、現在/八千草薫)、日下少尉(向井理)、竹下中尉(塚本高史)、志村伍長(ARATA)、水間上等兵(遠藤雄弥)、坂本上等兵(温水洋一)、大宮上等兵の妹/あけび(当時/小池栄子)、大宮上等兵の甥/大宮健一(現在/石坂浩二)、秋吉部隊長(長渕剛)、看護師(現在/西田尚美)、医師(現在/矢島健一)。
 戦闘シーンは一切なく、戦時下の人々の思いが現在に伝わっているのか? 彼らが「お国のため」と捧げた命の意味は現在に繋がっているのか? を問う。
 靖国神社の鳥居に浮かぶシルエットが見事であると同時に物悲しさを伝える。