我が地区には現在病院がなく、「名取出張診療所」と書かれた看板があるところで、週に一度出張診療が行われている。他の地区からお医者さんと看護師さんが来られて、診察したり、薬を出したりしている。今日水曜日午後がその診療日なので、お昼頃からにぎやかな声が聞こえていた。「診療所」は我が家から直線距離で100mくらいしか離れていないので、数人でわいわい話していると、その声が聞こえてくる。急病や突然のケガでない場合の「足が痛い、腰が痛い、手がしびれる」というような高齢者にとっては、週に一度とはいえありがたいことだと思う。以前は、この出張診療所も大賑わいだったようで、日が落ちてもまだ診察が続いているというような時期もあったらしい。しかし、一度閉鎖された時期があったそうで、その頃に他の病院にかかり始めたお客さん(?)がいたり、高齢者の人数が減ったりで、今は随分お客さんが減ったそうだ。
ところで、現在「出張診療所」になっているところは、実は私が子供の頃は(少なくとも中学生頃までは)病院だったところだ。そして、その病院には1,000人の集落住民からの信頼篤い女医さんがおられた。この女医さんはとても優しい、温厚な方で、私も何度かお世話になった。だから、お医者さんのいない近隣の集落からも、歩いて診察を受けに来る人が少なくなかった。その当時は、夜中に急に子供が熱を出したような場合でも、この女医さんの所に行けば、快く診てくれていたようだ。歩いて行ける距離に病院があるということは、とても心強く、当時の住民はそう実感していたに違いないだろう。あるいは、その当時は当たり前のことと思い、女医さんがいなくなってから、そのありがたみを身に沁みたかも知れない。
昨今、地域格差が広がっているようだけれど、病院の有無もその最たるものだろう。