【埼玉・川越市】古墳時代の欽明天皇二年(541)の創建とされ、武蔵一宮である大宮氷川神社を分祠したことに始まると伝えられている。 室町時代の長禄元年(1457)に太田道真・道灌父子が川越城を築城して以来、城下の守護神・藩領の総鎮守として歴代川越藩主(歴代川越城主)により篤く崇敬された。
主祭神は素盞嗚尊で、他に四柱(脚摩乳命と手摩乳命の夫婦神様、その娘で素盞嗚尊の妃神の奇稲田姫命、そして素盞嗚尊と奇稲田姫命の子とされる大己貴命)を祀る。
県道51号線に沿って繁る樹木の間に道に面して一ノ鳥居が立ち、直ぐ奥に二ノ鳥居が接近して立ち並ぶ。 いずれも石造りの神明鳥居だ。 二ノ鳥居をくぐると直ぐ左手に社務所、右手に何故か2つの手水舎が並んでいる。 一つは片流れ板葺屋根の簡素な手水舎で珍しいが、手水鉢に清水が張られ一個だが柄杓がおかれているのでこちらも禊に使われている。
直ぐ正面に拝殿があるが、殿前の左右に格子窓入り衝立を並べたような壁が設けられ、神々しい雰囲気が少し損なわれているようで残念だ。
平面T字型の拝殿の奥に、透き塀に囲まれて江戸後期建立の本殿が鎮座している。 本殿に近づいて唖然たる面持ちに....建物の全面が精緻な江戸彫り彫刻で埋め尽くされていて圧倒される。 調べると、本殿彫刻の特別見学会は年に一度の開催とあり、訪問した11月初旬の「七五三詣」祭りがその時期かな? また、本殿建立に7年の歳月を要したとのことだが、彫刻に時間を要した為と思われる。
本殿の右後方に2本のご神木が寄り添うように聳えるが、平成23年の台風で、約10メートルの幹を残して倒壊したとのこと。 幹の周りに敷かれた切石に乗って、ご神木の木肌にそっと耳をあてがい、古代の息吹を聞いてみた....。
氷川神社社殿と並んで西隣に八坂神社が鎮座する。 朱塗りの本殿は平面T字型構造で、江戸初期の建築で趣がある。 本殿内は黒漆塗りと極彩色仕上げの華やかな造りで、衣冠束帯を纏った武官姿の2体の随身像が鎮座しているそうだ。 神社を守る随身が、神門ではなく本殿内に鎮座するのは全国でも珍しいとされる....是非拝観したいものだ。
△道路に面して一ノ鳥居、少し中に額束に「氷川神社」の扁額が掲げられた二ノ鳥居が立ち並ぶ....いずれも石造りの神明鳥居
△切妻造銅板葺の手水舎....右に簡素な片流板葺屋根の手水舎が並んでいる
△手水舎屋根の拝に施された龍の彫刻....これも懸魚の一種かな/明治八年造立の手水鉢に清水を注ぐ龍の水口
△入母屋造銅板葺の拝殿....殿前の左右に格子窓を入れた衝立並べたような大きな壁が設けられている
△正面の中央間は板扉、脇間に引戸式の格子窓
△向拝柱上に連三斗、虹梁中央に脚間に彫刻を配した本蟇股
△軒廻りは二軒繁垂木、組物は「三斗六枝掛」(だったと思う)
△拝殿平面はT字型で、本殿側のガラス張りの建物は幣殿とみられる
△本殿境内を囲む銅板葺屋根の透き塀の連子の間から眺めた本殿
△入母屋造本瓦風銅板葺の本殿....松平斉典の寄進で、寛永二年(1849)の建立....屋根に千鳥破風を乗せ、唐破風向拝の兎毛通は精緻な鳳凰の彫刻
△貴重な彫刻を保護するためか、本殿周囲に深い軒の庇を設けている
△本殿前に堂々たる風格で鎮座する狛犬....明治五年(1872)の造立/大きく渦巻く巻毛は気品があり優雅さを感じさせる....台座には細い縄で結わえた太い注連縄の彫刻、そして正面に神紋らしき紋が刻まれている
△軒廻りは二軒繁垂木、組物は二手目と三手目が彫刻が施された尾垂木の三手先....正面三間は中央間・脇間いずれも桟唐戸、側面二間は桟唐戸と彫刻
△建物全面が関東特有の精緻な江戸彫り彫刻で埋め尽くされている....彫刻は当時屈指の名工と謳われた島村源蔵(俊表)の作で、特徴は槻材の木目を活かした無彩色の江戸彫り
△右奥面(東面)は桟唐戸と彫刻は「源義家」を表す構図....脇障子、腰回り、尾垂木、木鼻、海老虹梁などにも見事な彫刻が施されている
△腰回り(組高欄付廻縁の下側)には、川越祭の氏子十ケ町の山車の人形を主題とした表情豊かな彫刻がぐるりと施されている
△本殿背部(北面)は「大羽目三枚続きの頼朝の図」で、右端は通称「鶴ケ岡」と呼ばれる構図、中心は頼朝が鶴岡八幡宮の祭礼「放生会」で千羽鶴を放つ姿らしい
△平成殿の背後に聳える樹齢約600年のご神木の2本の欅/本殿の後方に聳えるご神木の2本の欅....平成二十三年(2011)の台風で幹10メートルを残して倒壊した
△ご神木保護のため幹の周囲に切石角柱を敷いている/ご神木近くに佇む石燈籠は寛政三年(1791)の造立
△切妻造銅板葺の八坂神社(拝殿)....氷川神社の摂社で、本殿は寛永十四年(1637)、江戸城二之丸の東照宮として建立、空宮となった後の明暦二年(1656)に川越城内三芳野神社の外宮として移築....現在地への移築は明治五年(1872)
△拝殿の軒廻りは一軒疎垂木、組物は舟肘木、妻飾は豕扠首....正面三間、側面二間で、土足の廻縁を設けている
△入母屋造本瓦風銅板葺の八坂神社本殿....朱塗りの本殿の平面はT字型構造
△八坂神社本殿(側部)....蔀戸の建物は幣殿を兼ねているのかな(右手が拝殿)
△切妻造銅板葺の社務所
△八坂神社拝殿前におかれた真鯛を釣りあげて引く「一年安鯛みくじ」
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