対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

矛盾論のスペクトル

2005-09-10 | 学問
 上山春平『弁証法の系譜』、三浦つとむ『弁証法はどういう科学か』、許萬元『弁証法の理論』。この三つの中で論じられている矛盾は、いずれも「問題解決」との関連で取り上げられていますが、違った性格をもっています。

 『弁証法の系譜』では、矛盾はアリストテレスの矛盾をさしています。矛盾は特別な名前を持っていません。

 『弁証法はどういう科学か』では、アリストテレスの矛盾とヘーゲルの矛盾が並存しています。ここでは矛盾は、二つの名前を持っています。一つは「敵対的矛盾」、もう一つは「非敵対的矛盾」です。敵対的矛盾はアリストテレスの矛盾で、克服によって解決される矛盾をさしています。これに対して、非敵対的矛盾は父と子、上と下などヘーゲルが提起した矛盾で、実現によって解決される矛盾をさしています。敵対的矛盾は矛盾の特殊なあり方で、ヘーゲルが矛盾を深く掘下げたと考えられています。

 『弁証法の理論』では、矛盾はヘーゲルの矛盾をさしています。ここでは矛盾は、二つに分けられています。理性の否定作用にもとづく「闘争矛盾」と理性の肯定作用にもとづく「調和矛盾」です。

 上山春平『弁証法の系譜』と許萬元『弁証法の理論』を両端に置き、三浦つとむ『弁証法はどういう科学か』を中央に据えることによって、矛盾が、アリストテレス(論理的矛盾)からヘーゲル(弁証法的矛盾)へと意味を変えていくようすを捉えることができると思います。



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