『新天文学』第59章は次のようにはじまっている。
(引用はじめ)
互いに反対側にある頂点として円に内接する楕円を円の内に描き、円の中心と接点とを通る直径を引き、他の円周上の点からこの直径に垂線を下す。そうすると、これらの垂線はすべて楕円周によって同じ比に分割される。
(引用おわり)
これが『新天文学』における楕円の定義で、点Mの軌跡が楕円であることの証明はこれに基づいている(注)。
楕円の定義には、もう一つ、「2定点からの距離の和が一定の点の軌跡」があるが、これは使われていない。ケプラーが楕円軌道を発見した過程をたどってみれば当然であろう。ケプラーは1定点からの距離と垂線の比だけに着目していたからである。『新天文学』(1609年)の図にはA点はあるが、A’点はなく(注)、距離の和を考えようがないのである。2定点からの距離の和が意識されるのは後のことである。1621年の『概要』(「コペルニクス天文学概要」)には次のようにある。
「楕円はそこからそれが描かれるところの二点を有し、それを私は”焦点”と言い慣わしている。それゆえ、その二つの焦点から楕円上の任意の点に引かれた線分、ないし一つの焦点から楕円の中心にかんして対称な〔楕円上の〕二点に引かれた線分の和は、つねに長径に等しい」(山本義隆『世界の見方の転換』3より)
(注)
円をHEIとし、H、Iで円に内側から接する楕円をHFIとする。接点H、Iと中心Bを通る直径を引く。次いで点K、Eから垂線KL、EBを下ろし、楕円周との交点をM、Fとする。そうするとFB対EBはML対KLとなり、他の垂線もすべて同じ比をとる。
(引用はじめ)
互いに反対側にある頂点として円に内接する楕円を円の内に描き、円の中心と接点とを通る直径を引き、他の円周上の点からこの直径に垂線を下す。そうすると、これらの垂線はすべて楕円周によって同じ比に分割される。
(引用おわり)
これが『新天文学』における楕円の定義で、点Mの軌跡が楕円であることの証明はこれに基づいている(注)。
楕円の定義には、もう一つ、「2定点からの距離の和が一定の点の軌跡」があるが、これは使われていない。ケプラーが楕円軌道を発見した過程をたどってみれば当然であろう。ケプラーは1定点からの距離と垂線の比だけに着目していたからである。『新天文学』(1609年)の図にはA点はあるが、A’点はなく(注)、距離の和を考えようがないのである。2定点からの距離の和が意識されるのは後のことである。1621年の『概要』(「コペルニクス天文学概要」)には次のようにある。
「楕円はそこからそれが描かれるところの二点を有し、それを私は”焦点”と言い慣わしている。それゆえ、その二つの焦点から楕円上の任意の点に引かれた線分、ないし一つの焦点から楕円の中心にかんして対称な〔楕円上の〕二点に引かれた線分の和は、つねに長径に等しい」(山本義隆『世界の見方の転換』3より)
(注)
円をHEIとし、H、Iで円に内側から接する楕円をHFIとする。接点H、Iと中心Bを通る直径を引く。次いで点K、Eから垂線KL、EBを下ろし、楕円周との交点をM、Fとする。そうするとFB対EBはML対KLとなり、他の垂線もすべて同じ比をとる。