対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

Zを捨てMを選んだ理由1

2018-02-05 | 楕円幻想
ケプラーは楕円軌道を予感していた。火星に固有の力を想定し秤動論を構想することによって、離心円から楕円を導こうとする。最初、直径上の秤動を想定した。半径KB上の点Kから点Zへの秤動である。しかし、これば楕円ではなく、豊頬形を形づくった。ケプラーは「直径上の秤動が楕円に通じる道であるはずはない」(第58章)と思うようになる。しかし、「苦労した末」に、「楕円が秤動と両立すると着想する」(第58章)に至った。
垂線KL上の点Kから点Mへの動きは、本来の秤動ではないが、点Zと点Mが近くにあることを理由に秤動とみなし、楕円と秤動の両立を想定した。エイトンによれば次のようである。「ところが、惑星をMに置くこともできたのだと気づいたとき、ケプラーの眼前が急に明るくなった。というのは、この移動は小さいので、直径距離法則と磁気振動理論(秤動論のこと、引用者注)とのどちらをも保持できるからであった。」

ケプラーは最終的に半径KB上の点Zではなく、垂線KL上の点Mを選んで、楕円と秤動を結びつけている。しかし、ここには歴史的な意味はあるが、理論的な意味はないだろう。
ここで、ケプラーの秤動論を捨象してみよう。このようにしておいて、Mの選択を考えるのは、ケプラーの意識的な選択ではなく、無意識のうちに行われた選択に着目することになる。
その選択はケプラーの方法論に位置づけられるだろう。起点となった点Eと点Fに戻ってみよう。