怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「臆病者のための株入門」橘玲

2017-05-04 08:02:35 | 
これはこれから株でも初めて一儲けしようとする人が読む株必勝法の類ではありません。
今や預金金利は消滅してしまい、これからはリスクを取って投資だとやんやと言われていますが、何も知らずにリスクだけとっても、こんなはずではなかったとなるだけです。
それでも時代に乗り遅れないようにと恐る恐る株投資でも始めてみようという臆病な初心者が読むのに最適な本です。新書版で読みやすく、巻末の参考文献にあるように基本的な文献もちゃんと抑えてあります。
世の中にはこれで何億円と儲けましたという株指南本と言うか成功談が溢れているのですが、基本的に短期の株取引ならゼロサムゲームなので儲かった人の後ろにはそれ以上に損をした人がいるはず。誰も損をした体験談を声高らかに言わないので認知できないだけです。まあ、濡れ手に粟のうまい儲け話を持ち掛ける人にはそんなに儲かるのならなんで自分でやらないで人に教えるのかと言うことですが、たぶん儲かった時には分け前を要求して損した時には知らんふりと言うことだからですよね。
著者も一時デイトレードに嵌った時があって、ちょうどITバブルの上がり調子の時だったのでどんどん儲かっていったそうですが、四六時中株価が気になり、パソコンのモニターにくぎずけになってしまい精神的にも肉体的にも限界に達してリタイアしてすべてを清算したとか。因みにそのままやっていれば4億円近い利益を手にしていたはずだがITバブル崩壊で7億円余りを失って破産していたとか。始める時には土地や資産もないので損をすれば破産すればいいと思っていたそうですが、失うものがなければ一丁賭けてみるかと勝負するのもありなのかも…でもそのためには会社勤めの片手間とかでは絶対無理で24時間株価の動きに目を離せなくなるということですけどね。よほど強靭な体力気力が必要です。
株取引自体はゼロサムゲームでも今やパソコンを通じてプロと平等に取引できるし、その手数料はどんどん安くなってきているので、宝くじとか、競輪競馬、パチンコと比べたらお上への上納金がないだけギャンブルとしては還元率がいいとも考えられるのですが、ディトレードをやるには安定した暮らしは望むべくもないということです。ギャンブルとして割り切って楽しむことですが、やりだすとのめり込んでいってしまうのがギャアンブルの怖さです。
ところで最近またテレビなどに出てきていますが、ホリエモンの錬金術と言ってよい手法についても解説してありますが、今さらながら、うまく制度の歪みをついていたものと感心してしまう。ライブドア事件と言うのは被害者がいないのだがあまりにも上手く制度のスキを突いたことから刺されてしまったということか。
株式投資というゲームのルールは
①株式投資は確率のゲーム(絶対に儲かる方法は、絶対にない)
②株式市場はおおむね効率的であるが、わずかな歪みが生じている(その歪みは有能な投資家によってすぐに発見され、消滅してしまう)
③資本主義は自己増殖にシステムなので、長期的には拡大し株価は上がる。
ここから導き出される投資法は、市場の歪みを利用するか、長期投資で木から果実が落ちるのを待つかの二つ。
市場の歪みを利用することは素人には至難の業だとすると、株の初心者がやるべきことはインデックスファンドで長期投資することになります。
これは最近かなり浸透してきている話ですが、アクティブファンドのリターンは市場平均と比べると低いし、どのファンドが好成績を収めるのかなどと言うのは未来がわからない以上誰にもわからない。ファンドマネージャーがいろいろ研究しても平均では猿にも負けるということで手数料が高いだけ手を出さないほうが無難です。でも手数料が高いので銀行などの販売会社は強く勧めますけどね。
結論についていえば山崎元さんもいろいろなところで同じようなことを書いていますし、ほぼ定説と言っていいでしょうけど、そこまで導き出すのに手を変え品を変え説得力を持って読ませるのは著者の腕前。理論面もきちんと押さえてあって入門書としてはいい出来だと思います。一攫千金を狙おうと思っている人には役に立ちませんけどね。
最も経済学的に正しい投資法は世界市場全体に投資することなのでMSCIワールドインデックスで十分ということですけど、それでは何の面白みもないという人(私もその類ですけど)は趣味の範囲でギャンブルとして応援したくなるような気に入った個別企業の株を買って楽しんでいくのがいいのでは。私はボケ防止の意味も兼ねて配当と株主優待を楽しみにちょこちょこ投資しています。毎朝為替と株の動きを気にしてチェックして、その日の動向を推理するだけでも頭の体操と思っています。
コメント
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