拝啓、世界の路上から

ギター片手に世界を旅するミュージシャン&映画監督のブログ(現在の訪問国:104ヶ国)

セッション23/カズさんのパート「Pray for Japan」

2012-02-29 | ニッポンジン!


シンジへ。

マジかよ~~~!!!もうびっくりだよ~~~!!!!!のカズです。(涙)

ようやく日本に戻ってこれたよ。

ただし震災から3週間も経つのに、まだ横浜の自宅には1度も戻れていなくて、仕事の都合で名古屋にいるんだ。

実は震災の3日前から一昨日まで、仕事でタイのバンコクにいたんだよ。

だから当日テレビの映像をみて、本当にびっくりした。しばらく現実を受け入れることができなくて、テレビの前で立ち尽くしていたよ。

実はオレ、温泉が好きで、昔よく東北の温泉巡りをしていたから、まさか津波でこんなことになるなんてまだ信じられなくて、悪い夢なら早く覚めて欲しいって、今も心のどこかでそう思っている。


ドイツでは、反原発運動がスゴイみたいだな。

でもバンコクでは、震災から1週間もしていない頃から、日本の為の募金活動やチャリティイベントが連日、ものすごい盛り上がりをみせていたんだ。

世界でも屈指の親日国だけあって、週末などはあっちでもこっちでもタイの人達が、日本の為に一生懸命募金活動やチャリティイベントをしてくれていて、BTSスカイトレイン(モノレール)に乗っていても、中心部のサヤーム・スクウェアで食事をしていても、Pray for Japan(日本の為に祈ろう)と書かれたTシャツを着た人達にしょっちゅう出くわして、日本人として、なんだか胸が熱くなる思いだったよ。

そしてそのPray for Japanのムーブメントに賛同した、世界中の人達によって、被災地を励ますメッセージが、連日インターネットのサイトにも投稿されているんだ。


オレも何か役に立ちたいという気持ちがあって、すぐにでも被災地に飛んで行きたい所だけれど、今はまだ規制もあるし、オレが被災地に行ってもむしろ足手まといだから、こんなことしかできなくて、本当にすまないっていうモドカシイ気持ちになりながら、機会がある度に、募金活動に参加させてもらっている。


一時期と比べると少し落ち着いたものの、まだ福島の原発事故が予断を許さない状況だし、震災は本当に哀しく耐え難い出来事だけれど、今回の出来事は、日本が1つになる大きなチャンスだとも思っているんだ。

そして驚くべきことにその輪は、日本国内のみにとどまらず、タイ等の外国まで広がっていて、これは本当にすごいことだと思う。

タイでは、福島の発電所事故の影響で、日本が電力不足で困っているからと、発電所設備一式を日本へ送ることにしたというニュースが出ていたよ。


今は仕事で名古屋にいるのだけれど、東日本の状況とはうって変わり、名古屋から西では、いつもと殆ど変わらない日常が続いていて、ちょっと拍子抜けしてしまう程だ。

でも日本中が自粛、自粛じゃ、日本がどんどん沈んで行ってしまうから、いつもと変わらない生活を続けて、西日本が東日本の分まで、経済を支える為に頑張らなきゃいけないと思ったりもする。

それぞれの立場や置かれている状況は違っても、多くの人々が、被災地の為にと気持ちを1つにして、今自分にできることを頑張ることが、大切だと思うから。

そしてその想いは、日本の未来にとって、きっとプラスに働くと、オレは信じている。


日本に戻ってきてから、Pray for Japanのサイトにオレも投稿してみたけれど、日本人からの投稿も沢山あったよ。

このようなムーブメントを、オレ達ニッポンジン自身の手によって、この先も続けていかなくちゃいけないって思うんだ。

ニッポンの未来に、希望の光を灯し続ける為にね。



P.S.
4月になって、名古屋ではもう桜の枝に、ちらほらと花がつき始めているよ。

その中に、折れた枝の横で、仲間と身を寄せ支えあうかのようにして、懸命に美しい花を咲かせようと頑張っている、小さなつぼみをみつけたんだ。

Pray for Japanのサイトには、その折れた枝の横で咲く桜の花の写真を投稿したんだよ。


桜の花は美しいけれど、春の終わりを待たずに、あっというまに散ってしまう。

でもまた新しい季節がくれば、次の新しい花を咲かせるんだよな。


そうやって、花も人も、次の時代に命のバトンをつないでいくのだって。

この花をみてオレも、懸命に自分の花を咲かせなきゃって、そんな気持ちにさせられたんだ。


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セッション23/シンジのパート「3.11」

2012-02-28 | ニッポンジン!


拝啓、カズさん。シンジです。

3月11日に起こった東日本大震災ですが、お身内は大丈夫でしたか?


ウチの横浜の両親はとりあえず無事でしたが、首都圏でも帰宅難民が沢山出たそうですね。カズさんは無事に家に帰れたのでしょうか。

ドイツでは今、福島第一原子力発電所事故の話題で持ちきりです。

しかも異常なまでに過剰な報道がされており、日本の国土全体が放射能に汚染され、原発事故と原爆投下が同じことのように扱われ、「もう日本はオシマイだ!」といった意見が多数をしめています。


それを裏付けるかのように、周りのドイツ人達は、僕や妻の麻友に、「日本の家族は無事なの?もしそうなら今すぐドイツに呼び寄せなさい」とまくし立てます。

「僕の横浜の両親も、麻友の福岡の両親もとりあえず無事みたいです」と言っても、「日本政府は情報を隠している、残念だけど日本はもう放射能に汚染されているから、早く家族を日本から脱出させないと危険だ」と真顔で言われます。


先日出張でドイツの新幹線ICEに乗っていた時にも、隣の座席の見ず知らずのドイツ人から突然「フクシマ?」と聞かれ、次いで「日本は今回の事故でもう駄目だけど、君はドイツに住んでいてラッキーだったな」と言われる程、今や"日本=福島の原発事故"、"日本=放射能汚染"という風潮です。


妻の友人に、フランクフルト在住のルフトハンザ航空のCAさんがいるのですが、今回の福島の原発事故でドイツから日本へ直行便が無くなり、全て韓国経由で日本にフライト・クルーを滞在させない、ソウルのホテルにスタッフを滞在させるプランに切り替えたとか。

それでもその同僚のドイツ人CA達が、日本便(しかも大阪便や名古屋便)にアレンジされると、私は死にたくないと言って、シックリーブ申請をする人が後を絶たないのだそうです。

そんなドイツの人達は、日本の国土の広さも、日本のどこに福島があるのかさえ知らないというのに。


他にも首都ベルリンを含め、ドイツのあちこちで、原発反対を唱えるデモが起こり、これを受けドイツの首相が会見で、全ての原発を2022年までに停止させることを発表しました。

ドイツの世論はこの発表を「当然だ」と受け止め、ひとまずデモは落ち着いたそうですが、日本でいうところの「隣の県」位しか距離の離れていない、日本以上の原発大国であるフランスから、原子力で作られた電気は、今後も輸入し続けるのだそうです。

何だかすごくおかしな話です。


おまけに日本からドイツへの食料品が輸入制限され、いつも納豆を買っていたドイツの日本食材屋さんから、当面日本の納豆は入ってこないと言われました。

被災者の人達を思えば納豆ぐらいどうってことありませんが、今のドイツの人達の対応を見ていると、少なからず憤りを覚えます。


そんな人達の前で「ニッポンは決して沈まない!!!」と大声で叫びたくなります。


確かに復興までの道則は大変だと思いますが、16年前の阪神大震災だって、そしてアメリカに2発の原爆を落とされた第二次世界大戦だって、日本人は乗り越えてきたのですから、きっと今度だって乗り越えられると僕は信じています。


でもインターネットでの日本のTVを通して聞こえてくるのは、未だかつて無い国難が起こっているにも関わらず、震災の被災者をそっちのけで、相変わらず政治家が、国民不在の政局争いを繰り返しているという話ばかりです。

おまけにそんな日本のメディアの報道を見ていると、まるでワイドショー番組を見ているかのような錯覚を覚えます。

そしてその報道をみながら「僕達の祖国はどうなってしまうのだろう?」と、不安にならないかと言えば、正直嘘になってしまいます。


そういえば、今朝アパートの部屋のドアを開けると、入り口に小さな鉢植えのチューリップが置かれていました。

そしてその花には、「今回地震・津波で被災した日本の皆さんが、この苦難に負けず、希望を持って前に進んでくれることをお祈りして、この花を贈ります」と書かれたメッセージカードが添えられており、カードを裏返すと、隣に住むドイツ人のお婆さんからでした。


チューリップの花言葉は「希望と前進」


このつぼみが咲く頃には、原発の問題が収まり、被災にあった方々の生活が少しは落ち着いているといいなと願いをこめて、この花に毎日水をあげようと思っています。

ドイツでの過剰な報道の中で、お隣から戴いたこの小さなチューリップは、一筋の希望の光のように感じました。


僕達日本人が、日本の未来を信じられなくなったら、本当にオシマイだと思います。


例え世界中から「日本はオシマイだ」と言われたとしても、僕は絶対に「日本は沈まない」と信じています。




P.S.
お隣のお婆さんから貰ったチューリップの花の写真をアップします。

この小さな善意が、さらに大きな輪となって広がって、被災者の方々に届けばいいなと思っています。


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祝!香川選手の試合復帰

2012-02-27 | その他


香川選手が予想より早く、日曜日の対ハノーファー戦のホームゲームで復帰してくれました。

もちろん今週末もスカパーでの欧州サッカー観戦です。


最初は少し恐々という印象もありましたが、随所にキレのあるパスがみられ、ゴールこそなかったものの、試合後半にはいつものようにチームの中心として、トップ下でプレイする香川選手の姿がそこにありました。

日本代表の対ウズベキスタン戦にも追加召集されたみたいですが、日本への長時間移動は体にも負担があるので、あまり無理をして欲しくないというのが正直なところです。

ただ呼ばれてしまったものはショウガナイので(本来なら大変名誉なことですが、次節は実質的に消化試合の為)、怪我なく無事にドイツに戻って欲しいものです。

次節の代表戦には、ボルトンでレギュラーを掴みそうな宮市選手(ボルトンは今チーム状態が最悪ですが、スカパーのプレミア中継で宮市選手のプレイをチェックしています)が代表初招集で、こちらも楽しみにしています。


それから土曜日の試合でガッツあるプレイでゴールをあげた、岡崎選手にも注目しています。
(シュトゥットガルトも岡崎選手と酒井高選手が頑張っているので、ここのところ毎週試合をみています)




なお日曜日の試合で、試合開始早々、ドルトムントのボランチのベンダー選手が負傷交代しました。

鼻の骨折の疑いがあり、29日のドイツ代表対フランス代表戦も欠場が発表され、心配しています。

今季のドルトムントは、ベンダーがいるといないでは、まったく別のチームと言っても過言でないので、ドルトムントの2シーズン連続マイスターシャーレ獲得の為に、1日も早くチームに復帰してくれることを祈っています。




セッション22/カズさんのパート「アラブの春という1つのヒント」

2012-02-26 | ニッポンジン!


シンジへ。

お疲れ~、カズです。

同僚が半年間病欠で、現場技術者がシンジ1人なのか。それは大変そうだなあ。

Rock魂があれば、仮病で病欠してラクしようなんてチンケな気持ちは、どこかへ吹っ飛ぶと思うけどな。(笑)


確かにシンジの言うとおり、今の資本主義と社会主義は、それぞれ問題点があると思うよ。


ふた昔前の資本主義と社会主義の代表は、アメリカとソ連だったけれど、その両国を旅した時のことだ。

旧ソ連の1つである、ウクライナのキエフで、ホテルにチェックインしようとした時に、「ちょっと今電話中だから待ってろ」と言われ、明らかに私用っぽい、笑い声まじりの電話の為に、10分以上レセプションの前で、荷物を持って立ったまま待たされたことがあった。


他にも旧ソ連のラトビアのリーガで、ロシア人の経営する、ロシア風水餃子のファストフード店で食事をした時、自分の注文した水餃子の写真をとろうとしたら、店のおやじにいきなり怒鳴られたことがあった。

とっさに「自分の注文した料理の写真をとっているだけじゃないか」と返すと、「ここはオレの店だから、オレが駄目といったら駄目だ。オレの言うことが聞けないなら今すぐこの店から出ていけ」と、ひどい罵声をあびせられたんだ。

店様がモノを売ってやっているのに、客ごときが意見するな、黙って言われた通りにして、さっさと金を払って帰りやがれ位の考え方だ。

社会主義国家には、お客様という概念が無いんだって、その時わかったよ。


それから10年以上前に、貧乏旅の途中でアメリカのNYで足を捻挫し、病院に行こうとしたことがあった。でも他の旅行者から、バカ高い医療費の相場を聞いて、病院に行けなかったんだ。

NYで感じたのは、金を持っている奴らは楽しい生活をエンジョイできるが、金が無ければ惨めな生活しか送れない。

底辺での生活が嫌なら、自分の力で這い上がれって考え方だ。

日本では当たり前の国民医療保険さえ、アメリカで導入が決まったのはつい昨年のこと。

しかしその国民医療保険制度に対して、国民の半数以上が「オバマは社会主義者だ」と今も猛非難していると聞く。

アメリカでは歴史的な背景から、"社会主義=平等=悪"という考え方があり、"資本主義=自由=善"という価値観と重なって、反国民保険制度導入の大規模デモでも、「オレ達の求めているのは平等ではなく自由だ!」と書かれたプラカードが掲げられていた。


そういう意味では、シンジの言うとおり、どちらかの考え方をそのまま持ってきても、今の日本にはマッチしないというのは確かだと思う。


まったく別の視点では、日本は世界でも屈指の、物資が豊かで便利なサービスが享受できる国なのに、今の自分が幸せだと感じている人が少ない。

一方で宗教に熱心な国の人達は、その教えによって"幸せの定義"が明確だったりする。

しかし実質的に無宗教な人が多い日本人は、何が幸せなのかが曖昧で、どうしたら自分が幸せと思えるかよくわからないって、自分自身を振り返ってみてそう感じるんだ。


"死ぬことは恐いこと"と思う人は、沢山いるけれど、死んだ後に自分がどうなるかわからないから、恐いと感じている部分がある。

でも"死"は、人間を含む全ての生き物に、いつか必ず訪れる出来事の1つで、それがどんなに恐くても、どんなに心配でも、避けることは誰にもできない。もしいつか訪れる死を悲観して、人生の大半を哀しみに暮れて過ごすとしたら、それはすごく悲劇的なことだ。


それと同じように今の日本人は、自分達の未来が見えないから、必要以上に将来を心配しすぎて、今の自分が幸せだと感じられないのではないか?って気がしているんだ。

そういう意味では、ハリボテの救世主でも、なんちゃってヒーローでもいいから、「ほら皆だいじょうぶだよ」と、明確な未来のビジョンを示してくれるリーダーが、今の日本には必要なんだと思う。


例えばオイルマネーで税金が無いサウジアラビアやブルネイのように、30年後の日本は、国策によって化石燃料に代わる新エネルギーの研究開発に成功し、その次世代エネルギーを使った、自動車・航空機開発の分野で世界をリードして、国営のエネルギー関連収益によって、医療費や教育費を無料にし、65歳から一定の生活ができる年金の支給を実現するといった具合だ。

同じく国策のロボット開発の分野でも成功を収め、エコカー減税のように、ロボット導入企業の法人税を下げる"ロボット減税"で産業を活性化させ、ロボットでルーチンワークを自動化し、欧州のように年有給約30日の消化を法律で義務づけるといった、「ロボット減税でリゾートにGO!」みたいな、キャッチーなフレーズも大事なのかもしれない。(ネーミングセンスはイマイチか?)

一方で国の最も重要な基盤は"人"という視点から、欧州のように単身者の所得税率をあげ、子供の人数が多い程税率を下げる「子沢山減税」を導入するとか、一芸に秀でた30歳未満の外国人の日本国籍取得を緩和する、「助っ人帰化キャンペーン」等で、人口の年齢比率の若返りを促進させることも、必要かもしれない。


まあ、こんなものは所詮、絵に描いた餅だけれど、シンジの言う"新しい仕組み"を実現する為に、今必要なことは、「日本が目指す具体的な未来の姿」を描くことなんだと思う。


ただ各々がアイデアを持っていても、どうやってその声を集めて、大きな力にしていくかが問題だ。

そこでシンジも言っていた、最近チュニジアやエジプトで起こっている、"アラブの春"が1つのヒントになるのかもしれない。

アラブの春は、Face bookというインターネットの力と、アルジャジーラという新興メディアの力によって実現されたものだ。

独裁政権を倒したこの革命の主役は、どこかの偉大な英雄ではなく、オレ達のような普通の国民達だ。


オレ達ニッポンジンも、"アラブの春"のように、Facebookやインターネットを使って、既存のメディアとも連動することで、何かできることがあるかもしれない。

オレ達ニッポンジンが、今よりもっと、自分達の毎日の生活が幸せだと感じることができる、日本の未来を作る為に。



P.S.
アラブの春の一翼を担ったと言われている、アルジャジーラの無料インターネット放送をみてみたよ。

スポンサーや視聴率至上主義から脱却して、この国の未来の為に必要な番組をもっと作っていこうっていう、気骨あるメディア制作者達が、日本でも出てきて欲しいと思う。

そしてFace bookを使ってアラブの春を実現させた、チュニジアやエジプトの若者達のように、オレ達にも何かできることがきっとあると、オレは信じているよ。



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セッション22/シンジのパート「資本主義と社会主義」

2012-02-25 | ニッポンジン!


拝啓、カズさん。シンジです。

大変です。フランクフルトの同僚IT技術者のダイスラーが、手術も必要な長期のシックリーブ(病欠)に突然入ってしまいました。

最短でも復帰は半年後だとか。


他にもIT技術者はレーマンとゲッツェがいるのですが、2人共別のお客さん先に常駐がきまったばかりで、とうとうフランクフルトの現場のIT技術者は僕1人になっちゃいました。

先日ベテラン駐在員営業の赤井さんが日本に本帰国し、後任の芦田さんはまだドイツに来たばかり、そして現地採用営業の洋子さんも産休に入り、その後任のハイニッシュさんは新卒の社会人1年生と、フランクフルトの営業部は大変だなと思っていたところでしたが、今度は自分達技術部が火の車です。

特にゲッツェが常駐することになった日系企業のお客さんは、ドイツ人のIT技術者が2名情報システム部にいたのですが、2人共シックリーブになって、もう3ヶ月以上も会社に出てきていないそうです。

上司の堤さんに交代の技術者を採用してもらうよう頼んでいるのですが、通常ちゃんとした技術者を見つけるのに、半年程度は時間がかかるそうなので、当面は僕1人で頑張るしかないみたいです。


こんなこともあって、堤さんと久しぶりに2人で、フランクフルト市内の居酒屋で一杯飲んだのですが、必然的にドイツの社会福祉制度の話題になりました。

ゲッツェの常駐先のお客さんでもそうですが、ドイツでは通常の有給とは別に、何ヶ月も給料が保障されるシックリーブ(病欠休暇)があり、また試用期間を過ぎると解雇も簡単ではないので、シックリーブで会社に出てこないワーカー達が後を絶たないそうです。


他にも失業保険がかなり充実しているらしく、半年ちょっと真面目に働いて、試用期間後にシックリーブを続けて、解雇時に違約金をもらい、失業保険が受けられなくなるとまた働いて、試用期間が終わったらシックリーブに入って~を繰り返す人が増えて困っているそうです。

これによって税金が年収の半分まであがり、消費税が19%になるというのは、真面目に働いている人間ほどバカを見る世の中になってしまい、ちゃんとやっている奴らのやる気をそぐことになってしまう。だからアメリカみたいに駄目な奴はすぐクビにして、頑張った奴等が報われる社会の方が絶対良いはずなんだと、アメリカで生まれ育った堤さんは、このドイツの社会保障制度を強く非難していました。

約20年前まで国の半分が共産圏で、かつ多くのトルコ人移民を受け入れたものの、働かずに福祉だけ受ける旧移民が増えているドイツでは、今この過剰に膨らんだ福祉関連費用は頭の痛い大きな問題の1つになっているようです。

それもあってドイツでは、そんなトルコ系移民に対してネガティブな感情が増大しており、ネオナチのような極右思想の集団が、トルコ人やイスラム系外国人を襲う事件が多発しているそうです。

ネオナチの多くは、あまり生活的にも裕福でなく、しっかりとした教育を受けていない人達も多いので、「自分達の生活がよくならないのは、トルコ人みたいな外国人のせいだ」と決め付けて、殺人を含めた過激な行動に出ているとも聞きました。

だたネオナチは極端にしても、ドイツ社会全体でイスラム系外国人に対してネガティブな感情が広まっているのは事実で、先日フランクフルトで労働ビザを更新した際にも、僕達日本人が1人30分もかからないのに対して、イスラム系の人達は2時間以上時間経っても、ビザ発給手続きの部屋から出てこないという状況も目にしました。


バブル崩壊後、アメリカ化を進めてきた日本は今2極化が進んで、中流階級が事実上なくなりかけており、わずかな勝ち組と、多数の負け組みに分かれ、世の中が殺伐としてきている印象があります。

アメリカ型の実力至上主義の資本主義社会が良いのか、ドイツのような福祉主義の社会主義社会が良いのか僕にはよくわかりません。

でも何となくどちらも"帯に長しタスキに短し"という感じで、そのまま今の日本がマネをしても駄目なような気がしています。


これまでの日本の歴史をみる限り、日本の最大の武器は、"オリジナルの良いとこ取りをして、それをアレンジしてさらに良いものに進化させること"だと思います。

まだ21世紀は始まったばかりですが、ひょっとすると僕達日本人が、この"アレンジ力"をいかして、資本主義と社会主義の良いとこ取りをした、"新しい社会の仕組み"を作り出す必要があると感じています。

先程のキリスト教社会とイスラム教社会の対立の話もそうですが、宗教的なしがらみが少なく、どちらの社会からも好印象をもたれている日本は、その"新しい社会の仕組み"を作り、世界へと広めていく上でも、重要な役割を果たせる可能性があると僕は思います。


今日本は「政治が駄目だ駄目だ」と言われていますが、この"新しい仕組み"を作り出すことができれば、ひょっとすると日本の政治を根本から変えることができるかもしれないと思うのは、僕の幻想でしょうか。


最近チュニジアやエジプトで起こっている"アラブの春"の民主革命は、今僕とカズさんがやりとりをしているFacebookを使って、フツーの人たちが達成したと言われています。

そのきっかけは小麦の高騰で、パンが買えなくなった人達が、「俺達の手でこの駄目な社会を作り直そう」と、Facebookで呼びかけたことから始まったそうです。

僕達にも何かできることは無いでしょうか。カズさんはどう思いますか?





P.S.
今日は僕の加入しているドイツの健康保険証の写真です。

ドイツはホームドクター制度がありますが、「ちょっと気分が悪い」、「まだよくならない」と言えば、ドクターの中には簡単にシックリーブの診断書を書いてくれる人もいるそうで、イカサマのシックリーブでズル休みする輩が後を絶たないそうです。

そういう輩達には、カズさんのRock魂を注入してやって下さい!(怒)


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あと1つ勝って本大会へ

2012-02-24 | その他


サッカー男子五輪(U23)代表が、マレーシア戦で4-0で勝利。

別会場のシリアがバーレーンに1-2で負けた為、日本は再びグループ首位に返り咲きました。


ただ勝ち点とは裏腹に、現在の五輪代表の試合をTV観戦していると、フラストレーションが溜まることが多かったのが正直なところです。

しかし昨晩の試合は、比較的ピッチの選手全員が攻撃の意識が高く、これまでのちぐはぐな試合展開と違い、ある程度チームとしてまとまりがあったと思います。
(相手が格下のマレーシアで、かつ彼らのホームゲームということで、引かずに前のめりで来てくれたことも1つの要因ではありますが)


次の最終戦では、引き分け以上でロンドン五輪本大会への出場が決まりますが、何が起こるかわからないのが最終予選です。

ぜひ次もチーム一丸となって「試合に勝つこと」だけに集中して、すっきり決めて欲しいと思います。


このチームのレギュラーメンバーでは、右サイドバックの酒井選手と、ボランチの扇原選手に期待していますが、2人には今年の五輪をステップに、欧州のチーム、そしてA代表で活躍して欲しいところです。

セッション21/カズさんのパート「新しい仕組み」

2012-02-23 | ニッポンジン!


シンジへ。

お疲れ~、カズです。

リーダー論の話は面白いね。

日本でぐいぐい引っ張っていくタイプのリーダと言えば、思いつくのがワンマン社長位だけれど、どちらかというとその言葉も、ネガティブなイメージさえある。

出る杭打たれる日本の文化では、絶対的なリーダーシップは育ちづらいのかもしれないな。

郵政民営化をぶちあげた日本の元総理大臣も、元々永田町では「変人」と言われていて、政治パフォーマンスもエンターテイメント的な印象が強かったし。

日本の大企業のリーダーは多くの場合が、会議室での議長的な役割と、承認決済のハンコつきや数字管理に終始することも少なく無いから、人柄重視の「調整型リーダー」が、日本では多いというのはその通りなのかも。


それと、円高の影響で"日本で作って世界で売る"から、"日本で管理しながら、現地で作って現地で売る"にシフトしている話は興味深いね。


そういえば今年結婚10周年を記念して、昔ダイビングが好きだった嫁のみさ子の希望で、GWに1週間、紅海リゾートのシャルム・エル・シェイクへ、家族旅行で行ったんだ。

ギター抱えて路上を巡る一人旅は多かったけれど、ひたすら家族サービスをする旅行なんて本当に久しぶりだったから、高級ホテルも慣れなくて居心地が悪いし(格安のドミトリーの方が、居心地が良い自分も嫌なんだけれど)、ある意味こんなに旅がキツイと感じたのは久しぶりだったよ。(苦笑)


そのエジプトの紅海リゾートで、タクシーに乗った時の話。


タクシーの運転手が、オレ達が日本人だってわかると、日本の製品は優秀だってほめ出したんだ。

まあこれは世界のあちこちで同じようなことがあるから、いつものことだと思っていたのだけれど、この日はちょっと違ったんだ。


その運転手の話では、以前は安くてすぐ壊れる中国製品と、高いけれど殆ど壊れない優秀な日本製品との間で、彼らは日本製を選んでいたらしい。

でも最近はそこそこの品質で、安価な韓国製品が入ってきて、一部の金持ちは今も日本製を選ぶけれど、多くの人々は皆、韓国製品で充分と思っていると言うんだ。

もう韓国製品があるから、日本製品は彼らにとって必要ではないとね。


で、実際にあたりを見渡すと、あっちでもこっちでも、そしてオレ達が乗っているタクシーも、ヒュンダイなんだよ。

そしてその運転手は、オレ達にサムスンの携帯電話を見せたんだ。


今や日本製品が世界で戦う上で、最大のライバルは韓国で、国によっては一流の日本製品が、ことごとく韓国製品に、市場を喰われてしまっていたりする。

オレも仕事で、アジアや中国への日本の中小企業進出に関わっているけれど、関税対応(FTA)等も含めて、官民一体となった韓国には、日本の先を行かれている印象がある。

そして中国もすごいスピードで躍進していて、そのうちGDPだけじゃなくて製品でも、日本は中国にさえ市場を喰われてしまうんじゃないかっていう危機感があるんだ。


これから日本が世界で戦い、より大きな成果を収める為には、「新しい仕組み」が必要になっていると実感しているけれど、シンジが今とりくんでいる、日本で品質管理をして、現地で生産、販売する為のシステムっていうのも、その新しい仕組みを再構築する流れの1つなんだと思う。


第二次世界大戦後、オレ達の両親の世代が頑張ったおかげで、オレ達は気軽に海外にも行けるし、世界でも屈指の豊かな生活を享受できている。

でもそれは大きな歴史の流れでみた時に、わずか半世紀程の短い時間の中での話でしかないんだよ。

幕末に黒船が来た時も、欧米の列強と比べて日本は発展途上国だったし、このままじゃいつかまた日本は、中国や韓国より発展していない、極東の途上国に逆戻りする可能性だってあると思うんだ。

歴史上世界で最も反映した時代を持つ、エジプトやギリシャ、モンゴル等の今の現状を考えるとね。


これからの日本の未来の為に、その新しい仕組みを作るのは、オレ達、シンジ達の世代の仕事なんだと、オレは思っているよ。




P.S.
写真はシャルム・エル・シェイクの、ホテル前の海で撮った1枚だよ。

船にも乗らずに、こんなに魚がうじゃうじゃいたのは、初めての体験だった。

日本でも身の周りにある製品を裏返せば、メイド・イン・韓国や中国等のアジア製品が、うじゃうじゃあることに気付くのと同じか???



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セッション21/シンジのパート「トップダウン型の欧米社会と、現場主義の日本社会???」

2012-02-22 | ニッポンジン!


拝啓、カズさん。シンジです。

今僕は、新しく担当することになったプロジェクトの関係で、ロンドンに来ています。

日系製造業のお客さんの、製品の品質管理を行うITシステム導入における、プロジェクト・マネージメントが、僕の今回の仕事です。


PLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)というこのシステムは、製品の設計から製造、部品の調達や管理、出荷後のサポートまでを、1つのシステムで一貫して行い、各工程のスピードアップや品質管理に役立てるものです。

今回はネットワークを介して、イギリスとドイツ、そして日本で一緒に使うシステムなのですが、PLMの先進国はドイツやフランスらしく、ドイツのシステム開発会社を使うので、ウチのドイツ拠点がイギリスを含めてサポートすることになりました。


さて、昨晩このお客さんの拠点長である柴崎さんと、ロンドン市内の日本料理店で食事をした際のこと。

今回のPLMシステム導入の経緯をお聞きしたのですが、なかなか興味深いお話を伺いました。


柴崎さん曰く、今円高が進み、製品コストの関係で、欧州等の現地の部品を使って、現地側でデザイン、製造、顧客サポートを行い、日本側で品質管理を行う流れが進んでいて、それを円滑に行う為のシステム導入が、今回のプロジェクトの"建前"なのだと。


「では本音があるんですか?」と柴崎さんに尋ねると、日本は現場でモノを考えて進める、"現場主導型"なので、システムなんて無くても良いが、欧米は経営者がモノを考え、現場がそれに従う"トップダウン型"。

なのでこのようなシステムを使って、上流から下流まで一気にシステマチックに工程を流さないと、なかなか物事が進まないのだとか。

特に日本人のリーダーはこのトップダウン型が苦手で、その為のチャレンジでもあるのだと。

組織で物事を進めるときには、皆が同じ方向を向いて、自分の役割を全うしなくてはいけないものの、単一民族で中流層の意識が非常に高い日本人だけなら、何もしなくてもちゃんと夫々が考え、ある程度同じ方向を向いて物事を進めることができる。

だから日本は所謂、「調整型リーダー」が多いのだそうです。

しかし異なる民族、異なる価値観・手法を夫々が持つ欧州等の国際社会では、強烈なリーダーシップによって全員に同じ方向を向かせ、1人1人に明確な役割を与えて、なぜそれが必要かを理解させるところから始めないといけない。

でも出る杭は打たれる文化の日本のリーダーはそのような経験が少なく、いきなり現地人社員のハートをわしづかみにする感動的な英語のスピーチもできないので、結局現地人リーダー達を介して、物事を進めることが多いのだそうです。


そして現地人リーダー達が、前職で使っていたこのPLMシステムが無いと仕事ができないと強く主張するので、高いお金を払って今回このシステムを入れるハメになったのだと、かなりのぶっちゃけ話をされました。(苦笑)

また欧州等の海外現地法人では、日本人だけが孤立無援で頑張っているのに、現地人が働かず、日本からの支援や理解がまったく無いことがよくあるので、日本の経営層にまで、全体像が直接よく見えるようにして、現地の日本人が討ち死にせずにすむと助かるのだがと、付け加えておられました。


柴崎さんのおっしゃるリーダー論の話は、日本の総理大臣と、欧米の大統領を比べてみても、確かに当たっているかもしれないなと感じます。

そして僕が今プロマネを担当しているこのシステムは、"クオリティが命"の日本製品にとって非常に意味があるものだと思うので、建前だけでなく実の部分でも、日系企業が良い製品を提供し続けるための、"新しい仕組みの1つ"になってくれる事を願っています。(笑)


インターネットは僕達の生活だけでなく、ビジネスの仕組みまで変えようとしています。

この10年でインターネットは世界を変えたといわれていますが、この先もまだ世界を変え続けていきそうです。




P.S.
先週末にロンドンの新ランドマークの"ビックアイ"に行ってきたので、その写真をアップします。

変化を嫌うイギリスにあって、ロンドンのランドマークは長く、"ビックベン"でしたが、ここロンドンでも新しい流れが来ているのでしょうかね???




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香川選手の1日も早い復帰を願っています

2012-02-21 | その他


香川選手が練習中の怪我で戦線離脱です。

今年に入ってから、スカパーで毎試合ドルトムントの試合を観戦していましたが、まさに香川のチームといってもよい程、絶対的な存在になっていただけに本当に、本当に痛い怪我です。


今週末の試合は辛くも1-0で勝利しましたが、内容的には終始良い所がなく、かなり厳しいものでした。
(それでも勝ち点3がとれたのは大きいです)


幸いライバルのバイエルンが取りこぼしてくれたおかげで、かなりブンデスリーガでは有利な位置につけていますが、まだ後半戦も始まったばかりで、ゲッツェと香川選手の攻撃2枚看板を欠く状況が続けば、あっという間に順位が入れ替わってしまう程度のアドバンテージでしかありません。


今のところ3月上旬には試合に復帰できるのではないかという予測がされていますが、1日も早い香川選手の復帰を願っています。

セッション20/カズさんのパート「まずは知ること。そして行動すること。」

2012-02-20 | ニッポンジン!


シンジへ。

お疲れ~、カズです。

海外の最前線では、日本人同士が手を取り合って、皆で助け合っているのか。

それはすごく素晴らしいことだと思う。

でも相変わらずこのちっぽけな島国の中では、哀しいことに、日本人同士が毎日、足の引っ張り合いをしているよ。


発展途上国を旅していると、常にトラブルと隣り合わせの毎日だから、やられないようにと、いつもオレはピリピリしている。

しかし日本に戻ってくると、何事もなかったのかのような、平和すぎる日常がそこにあって、拍子抜けするのを通り越して、苛立ちすら覚えることがあるんだ。

きっとシンジも、成田空港に到着したら感じるのだと思う。

シンジが日本を離れる前と同じ。日本は何も変わっていないってね。



そう、こんな話がある。

これはまだオレがギター片手に、世界を旅しはじめて間もない頃のこと。


以前オレがタイに、1ヶ月位滞在していた事があったって話したよな。

その時にひょんなことから、バンコクで知り合ったタマサート大学の学生達と、タイ北部をヒッチハイクで旅したことがあったんだ。

まだ旅慣れていなかったオレは、地元のタイ人の方が詳しいだろうと、全部旅のプランをおまかせにしてしまったのだけれど、それが間違いの始まりだった。

チェンマイからヒッチハイクで、トラックの荷台に乗って3時間程走った山の中で、今日はキャンプ場でテントを借りて泊まると、その大学生達に突然言われ、車を降りることになった。

キャンプ場という場所に行ってみると、他に誰もテントをはっておらず、もちろん山で野営をするなんて聞かされていないから、寝袋どころか、防寒具や寝具もなし。

山の中腹にあった山小屋で、テントだけはレンタルできたものの、結局何の準備もないまま、山小屋の管理人に言われた、そこからさらに山を1時間程登った先にある、野原の一角で一泊するはめに。

もちろん事前に何も聞かされていなかったオレは、いったい自分がどこにいるのかも分からない。

しかも結構標高が高い山のようで、誰もがTシャツ1枚だけの真夏のタイなのに、昼間でも結構肌寒く感じる状態。

それでも、大学生達も同じように、寝袋も何も無いにも関わらず、しきりに「大丈夫、大丈夫」って言うものだから、交通手段もなく1人で下山もできないしと、その言葉を信じて一緒にキャンプをすることにしたんだ。


だけどキャンプ場といってもライト1つ無いただの野原で、日が暮れると辺りは真っ暗。

タイ人の大学生達に、懐中電灯とかある?と聞くと、「ろうそくは山小屋でもらったけど、ライター借りるのを忘れた」と笑っている。
それでようやく、こいつらマジでヤバイって気づいたのだけれど、もう日も暮れた後で、時既に遅し。


幸い自分がライターを持っていたので、それでろうそくに火をつけたものの、夜も更けるとぐっと気温が下がって、寒くて皆ガタガタと震えている。
 
一旦は何とか眠りについたものの、薄手のテントで毛布1枚も無しに、横になっているだけの状態だから、深夜にはあまりの寒さで、皆目が覚めてしまったんだ。


とりあえず、ろうそくの火で暖をとったものの、深夜3時過ぎにはそれも無くなって、持っていた小説を破いては、燃やしてを繰り返して、何とか夜明けを待っていたのだけれど、いよいよ皆限界になり、ライトすら無い真っ暗闇の中、急いでテントをたたんで、山の中腹の山小屋まで急遽下山して、その山小屋で夜明けを待ったんだ。

今思えば、あの時下山せずにいたら、凍死していたかもしれない。


無事に下山した後で、一緒にヒッチハイクをしたタイ人の大学生達に、どうしてこんなことになったのか?って聞くと、「まさか山がこんなに寒いなんて思わなかった」とのこと。

実はその大学生達は、山でキャンプをしたことも、その山へ行くのも初めてだったんだ。

タイの一流の国立大生が、何の下調べも準備もせずに、いきなり山で野宿することは危険だという、そんな基本的なことを知らないのか???って、違う意味で驚いたよ。


知らないってことは当然、"もしもの場合に備える"なんてことはできない。

知らないことの恐さと、知ることの大切さ、そして有事に備え、行動することの大切さを思い知らされた出来事だった。


そして今の日本の国際化対策も、どこかこの話と似ているような気がしているんだ。


ミュージシャンあがりのオレは、一流企業へ正社員で就職する道なんて無かったから、家族を養っていく為に、旅で出会った仲間と一緒に、ベンチャー企業を立ち上げて、今日までやってきた。

でも経営者なんて名ばかりで、実際にやっていることは、家内制手工業の町工場のオヤジと変わらないのだけれど、世界を旅する中で、これから日本の企業はもっと世界に出て行かなくちゃいけないだろう?って思い、オレは旅の仲間や、旅で得たコネクションを使って、中国やアジアへ進出する、中小企業を支援する仕事をしている。

そんな仕事の中で、日々直面しているのは、頭の固いオッサン達に、15年、20年前、へたすりゃ30年前の、インターネットも無い時代の、前世紀のカビた常識をしたり顔で語られて、オレ達の経験談なんて、まったく聞いてもらえず、オレがまだ何も言葉を発していないのに、資料を1ページもめくっていないのに、もうそのオヤジ達の中では、「NO」という答えが決まっていて、ろくに話もさせてもらえない状態で、散々にこき下ろされる事がよくあるよ。

そんなヅラのずれたオッサンに、ピントのずれた説教を喰らわされたりすると、ホントげんなりする。(苦笑)

めまぐるしく世界の情勢が変わっていることも、今までと同じじゃヤバイっててことも、この人達には、まったく理解できないんだって、哀しくなるよ。


でもそのおっさん達の、哀しいまでの視野の狭さと、危機感の無さを目の当たりにすると、タイ北部で遭難しかけた時の大学生達と、なんだか重なって見えるんだよ。オレには。


今シンジが直面している、世界の最前線で起きていることは、自分達が行ったことも無い遠い国の出来事で、自分達には関係ないって、きっと思っているんだろうな。

日々ものすごい勢いで、地球のサイズが小さくなっている現代において、もはやこの国は、外敵が容易に近づくことのできない大海原と、カミカゼに守られた極東の島国ではないってことを、知らないんだ。


そしてこれは、やはり実際に世界に出て、その場で身をもって実感しないと駄目なんだと思う。

いくら言葉や映像で伝えても、所詮テレビの中の映画やゲームのバーチャルな世界を見るのと同じで、それを強く実感することはできないと思うんだ。

シンジみたいに実際に海外の最前線に出て行って、大きな荒波に揉まれるしか無いんだよ。

まずは"それ"を知らないと、次の1歩を踏み出すことなんて、誰もできやしないのだから。


だからシンジの言った、「これからの日本の未来の為に、海外に出て行く敷居は低ければ低いほどいい」という意見には大賛成だ。


故郷を遠く離れた異国の地の、自分達の常識の外側の世界で、達成することが困難な出来事に日々直面して、初めてオレ達日本人は、心から手をとりあって、1つになれるのかもしれないな。




P.S.
そのタイ北部の旅で、オレは生まれて初めて象に乗ったんだ。

象の背中には硬い毛が生えていて、肌も結構ザラザラしていたのを覚えている。

それに驚いて、一緒にヒッチハイクをした大学生に、「びっくりしたよ~!」って話すと、大笑いされた。

タイ人には、「そんなことも知らないのかよ!」っていう感じだったのかもしれないな。


それと、シンジとのFacebookのやりとりから、オレも本当に沢山のものをもらっているよ。

これからも4649!!!

カズより



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