拝啓、世界の路上から

ギター片手に世界を旅するミュージシャン&映画監督のブログ(現在の訪問国:104ヶ国)

セッション15/シンジのパート「火事場で消える人、蓋をする人」

2012-02-08 | ニッポンジン!



拝啓、カズさん。シンジです。

3ヶ月前にお話していたメールシステムの移行プロジェクトですが、やっぱりというか、残念なことに大炎上しています。

日本に移行したメールシステムがうまく動作せず、この2日間は電話がじゃんじゃんなりっぱなし。

僕達の部屋の前にも、クレームを言うお客さん達の長い行列ができて、もう大変。


これまでのシステムはドイツ側にあり、僕達が管理者権限を持っていたのですが、今回の日本のメールシステムは、僕達に管理者権限が与えられておらず、プロジェクトからも外されているので、日本側に確認しますとしか言えず、ただの苦情受付窓口状態で、どうしようもできないんです。

おまけに今このプロジェクトを仕切っている、日本からの長期出張者の増田さんが、欧州社長のいるパリへ出張していて、ドイツにいないんです。


増田さん経由で日本のシステム業者へ問い合わせてもらい、最低限のメールの送受信や、アドレス帳機能は復旧したものの、スケジュール共有機能がまだ復旧しておらず、おまけに日本語と英語端末以外で、一部のメールが文字化けする不具合も出ています。

しかし日本側のシステム業者曰く、スケジュール共有機能の移行は、増田さんからの要件に入っていなかったらしく、ドイツ語端末等で発生している文字化け不具合も、日本語と英語以外の端末サポートは対象外と、予め契約でうたっていたらしくて、まともに対応してくれません。(でも日本語と英語の端末って、全体の半分以下なんですよ)


おまけに新しい同僚のバウムさんが、システム移行の翌日からシックリーブ(病欠)で、会社に出てこなくなっちゃいました。(ハミングどころの話じゃありません。涙)

まずは自社の担当営業の赤井さんに相談したのですが、「ウチの請負範囲では無いので」と言われ、バウムさんの病欠についても、「ドイツ人ワーカーにはよくあることですし、契約上は1名オフィスにいれば良い事になっているので」と、まるで他人事です。

赤井さんからは「一営業の権限で、何とかなるレベルの話ではなくて」とも言われ、それもそうかと思い、自社の技術部長の肩書きを持つ、矢部さんという人に応援を要請したのですが、入社直後に1度しか会っていないということもあってか、「ウチも人手不足で、契約範囲外なら手出しできないし、今キミが困っているのは苦情の受付なのだから、それは増田さんに直接聞いてくれと言うしか無いでしょう」と言われてオシマイ。

「でも現地のお客さん達は困っていて、日本側の業者も対応してくれず、増田さんからも日本側に確認中と言われ、何も進展しないんです。欧州側のITはウチの会社が請け負っているので、僕達は知らないとは言えないと思いますが」と、矢部さんに話したんです。

そうしたら、「現場は回らないかもしれないけれど、ウチのせいじゃないなら、無理にまわそうとしなくてもよいんだよ」と言われ、挙句に「あんまりバカ正直にやっているとこっちが持たないし、下手に首を突っ込むと逆にこっちに飛び火して、もしかすると案件を失くすことになるかもしれないから、そういう時はうまく立ち振る舞って、深入りしないことだよ」と、ご丁寧な助言まで戴く始末。


でもよく考えてみてください。

500人以上が利用してる基幹システムがちゃんと動いておらず、お客さんの業務が止まっている状況で、お客さんから1日100件以上、クレーム対応に追われているのに、その人達を前にして「僕のせいじゃないので知りません」って言えますか?
(新しい同僚のバウムさんは逃げちゃいましたけれど。怒)


ある意味、矢部さんの言う事が正論なのかもしれませんが、現場はそれでは勤まりません。


そういえば、会社をクビになった前任者と引継ぎが無かったと言いましたが、実は1日だけ常駐開始前に、赤井さんの好意で、携帯電話番号を教えてもらい、日曜日の夜にフランクフルトの中華インビスで、2人だけで食事をしたことがあるんです。

その前任者の戸川さんは、見た目が所謂"秋葉系"のIT技術者なんですけど、常駐案件のことは、「田川さんならシステムにログオンすればわかると思いますから」とロクに引継ぎをしてくれなかったものの、1年間の彼の常駐期間での不満話を延々と聞かされたんです。

その時は「ふーん」ぐらいにしか思っていなかったのですが、彼の話の中にこんな内容がありました。


彼曰く、僕の会社の現地法人には、「駐在員」、「現地採用のドイツ人」、「現地採用の日本人」という3つの身分制度があり、僕達のような現地採用の日本人は最下層に位置していて、殆ど使い捨てなんだそうです。

特に3~5年で日本へ帰ることが前提の駐在員は、減点が恐いので日本の上役の目ばかり気にして、ろくに現場のことを見ようとしない、上だけに目がついた魚の"ヒラメ"みたいだと話していたことを、今回の矢部さんの言葉を聞いて思い出しちゃいました。


戸川さんも僕と同じく、日本で面接を受けて現地社員として入社し、そのままお客さん先に常駐していたみたいですが、単身者の彼は殆どプライベートな会話もない中、慣れない約1年間のドイツ生活で鬱状態となり、自分でもよくわからないウチに馬鹿な問題を起こしてしまったのだと話していました。


僕には何が真実なのかよくわかりませんが、ただ今言えるのは、このままじゃいけないっていう事です。

エライ人達は、臭いものに蓋をするだけで良いのかもしれませんが、現場の人間である僕は、そんな訳にはいきません。

今回の日本側のメールシステムは、日本語環境らしいので、ドイツ人が対応するのは無理ですが、管理者権限さえもらえれば、僕である程度の切り分けもできるかもしれないので、まずはそれをアメリカで駐在経験もある、日本の情報システム部の畠山さんに相談してみようと思います。

他の全員が「知らない」と言って逃げ出しても、僕は逃げるつもりはありませんよ。

だって僕は他の人達みたいなエリートじゃない、大学中退の雑草ですから。

雑草の意地を見せたいと思います。


自社の人達からはバカだと言われるかもしれませんが、カズさんはきっと応援してくれますよね???



P.S.
12月となり、南ドイツでは雪が降り積もっています。

家の窓から見える森の木にも、樹氷ができていました。

写真のように寒々しい外の景色とは裏腹に、現場は燃えまくっています。(涙)


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