拝啓、世界の路上から

ギター片手に世界を旅するミュージシャン&映画監督のブログ(現在の訪問国:104ヶ国)

セッション19/シンジのパート「日本人が求めているもの、ドイツ人が求めているもの」

2012-02-17 | ニッポンジン!


拝啓、カズさん。シンジです。

翼がフランクフルトの日本人小学校に、通い始めました。
入学式はまさに日本と同じ。

違いは、入学式が行われる体育館に、ドイツと日本の国旗が2つ飾られ、式典で両国の国家が流れることぐらいでしょうか。


さて春の人事異動の季節になりました。

技術部長の矢部さんが日本へ帰国となり、シンガポールから新しい上司の堤さんという方が、後任としてフランクフルトにやってきました。

堤さんは、アメリカで生まれのアメリカ育ちらしく、誰にでもズバズバものを言う人なので、まわりのドイツ人も日本人現地社員も、そして若手の日本人駐在員までが、戸惑っているようですが、僕はこの人とウマがあいそうです。

というのも、これまでウチの会社で抱えていた、"事なかれ主義"で"なーなーの体質"を、「アホかお前ら?」と一刀両断し、カイゼンしようとしているからなんです。


早速これまで個人的に進めてきた、"問題が起こる前に、事前に対策を打つこと"や、どのIT技術者でも、会社の顧客サポートができるように、"社内の技術情報をドキュメント化すること"、そして日本人・ドイツ人関係なく顧客サポートができるよう、"システム言語やドキュメントを英語で統一すること"等を、全社的に進めるよう助言したところ、「君みたいな技術者がウチには必要だ。ぜひ君が中心になってそれを進めてくれ」と賛同してくれたんです。

日本では"そんなの当然だろ?"と思うことばかりですが、現場に目が届かない現地法人では、各々が自分流でバラバラに進めている(しかも"面倒なことはやらない"になりがちな)現実があります。

 以前は自分が何か提案すると、面倒そうなことは(実際は何もしないことの方が、トラブルになってから面倒なのに)、いつも「まーまー」と言われて何も変わらず、問題が起こっても、再発防止の為の抜本的な対策ではなく、とりあえず目先の沈火作業に終始していたので、ようやく現場を回す上で、最低限必要なことが、進められそうです。
(踊る○捜査線じゃないですが、「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」みたいなことが、これまでは度々あったんです。苦笑)


もっともドイツ人同僚達は、かなりノリが悪いみたいですけれど、、、。


先日この堤さんと2人きりで、夕食をご一緒する機会がありました。

お酒を飲んでいることもあり、堤さんの口からは、ドイツでの生活が始まったばかりで、カルチャー・ギャップから生じる、溜まった愚痴がこぼれます。

「シンガポールでは、現地人技術者が日本に憧れを持っているから、日本人マネージャの指示をよく聞き勤勉だったが、ドイツ人ワーカーはプライドばかり高いものの、働かないことの言い訳ばかりを並べて、ドイツ人マネージャの言う事しか聞こうとしない。」

「おまけにシンガポールでは、優秀な現地人が"日系企業から学ぼう"と集まってくるのに対して、ドイツでは優秀な現地人が、世界的にも有名なドイツ企業に就職してしまうので、日系企業に集まる現地人は、意識の低い奴らが多い」とこぼしていました。


そして夜もふける頃、「ドイツでは本当に"消費ニーズ"があるのだろうか?」という話題になりました。

「現在ドイツのサービスレベルが低いのは明らかだが、それはサービス提供者だけの問題ではなく、そもそも高レベルな付加価値サービスを、市場が求めていないからではないか?」と、ドイツに来たばかりの堤さんが、ドイツ生活3年目の僕に問いかけます。

"実はドイツの人たちは、それ程便利にならなくてもよい"と考えており、基本的に旅行と車以外にお金をかけない人たちなので、"高くて便利なものより、不便でも安いもので充分"と考えているから、サービスの質があがらないのではないか?と言うのです。

極論を言えば、我々日系企業が目指す、高いクオリティの製品やサービスというものは、そもそもドイツ市場はそれ程求めておらず、欧州内の日系顧客以外の現地企業は、韓国製品のように、安くてそこそこなモノがマッチしているのではないか?と続けます。


思い当たる節があったものの、僕は即答することができずに、その場は「1度同じ質問を少し噛み砕いて、ドイツ人の同僚達に聞いてみてはどうでしょうか?」と答えました。

僕も周りのドイツ人達が、本当はどのように考えているか、すごく興味があったからです。


しかし後日この話題を、社内のチームミーティングで、ドイツ人同僚達にぶつけてみたところ、意外な答えが返ってきました。

「日本のクオリティは素晴らしいけど、ドイツのそれも劣っておらず、どちらも高品質で素晴らしい。そして我々ドイツ人は、常に高品質なものを求めている」とドイツ人同僚達は言うのです。

これは彼達が、日本に1度も住んだことが無いから、このように感じているものの、実際に日本の"本当に便利な生活"に慣れれば、また違う答えが返ってくるかも、、、という印象。

でも同時に、以前ドイツ人同僚達と一緒に飲んだ時の、こんな話を思い出しました。


「日本はコンビニやファミレス、ファストフード等、24時間のサービスも多く、日曜日でも平日と同じように買い物ができるけど、ドイツもそんな風になったらいいって思わない?」と僕が訪ねると、彼らは「それで休日出勤や残業が増えて、家族と一緒に過ごせる時間が減るなら、便利じゃなくても構わない」と、皆口を揃えて即答されたんです。

堤さんの言葉が適切かどうかわかりませんが、僕が思うに、きっと日本人が求めているものと、ドイツ人が求めているものは、完全に同一ではないような気がします。

それは"文化の違い"であり、"価値観の違い"なのだと僕は思うんです。


最近はインターネットの普及で、今や世界中どこへ行っても、大都市は皆同じようなものが同じように流行っていると、海外生活の長いベテランの方達はよく言っていますが、実はそれに至るプロセスや内容は、少しずつ事情が異なっているのではないかと、自分の周りを見渡すとそんな風に感じるんです。

もちろん圧倒的な優位性を持った、世界的ヒット商品であれば、話は別なのかもしれませんが、、、。


そうそう。もう1つ。
ドイツ人の同僚達に対して、堤さんが聞いた別の質問の回答が、すごく面白かったんです。


堤さんが「ウチの会社の顧客は日系企業が多いが、ドイツ企業を新規に獲得する為に、1番有効な対策は何か?」と問いかけると、満場一致で、「まずは大きくて、キレイで、立派なお客さん向けの会議室を作ることかな?」と答えるんです。

「ドイツではいかに安くて良い製品やサービスでも、その会社の会議室がみすぼらしかったら、絶対その会社と取引をしようと思わない。うちの会社にドイツ企業の顧客が少ないないのも、この会議室がショボイからだ」とまで言います。


そこで僕が彼達に、「安くて、ものすごく美味いけれど、小汚い小さな店」と、「雰囲気が良いけれど、高くてマズイ店」どっちに入る?と返しました。

するとこちらも満場一致で、「マズくても、雰囲気の良い店に決まっているでしょう!!!」と、即答されました。

そして僕が「小汚くても、安くて美味い店が、自分は好きだけれどなあ、、、」と呟くと、ドイツ人同僚達に「え???」っと、衝撃的な顔をされ、その場がシーンとしちゃいました。
(その時、野毛でチンチン麺食べている、カズさんの姿を思い浮かべていました。笑)


僕は日本とヨーロッパしか知りませんが、世界各地を旅したカズさんはどう思いますか?





P.S.
写真はドイツ人が大好きなケーキ、"ザッハ・トルテ"です。

オリジナルはウィーンですが、ドイツ全国の洒落たカフェで食べられる、いわゆる"チョコレートケーキ"です。

ザーネという生クリームと一緒に食べるのですが、一般的な日本人には甘すぎるので、半分も食べられません。

先日ウィーンに出張したお土産に買って帰ったのですが(結構いいお値段なんです)、ドイツ人には「いいね!」と大好評。

でも日本人には「うーん」という感じでした。(笑)



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