ブラよろ完結

「ブラックジャックによろしく」が完結した模様です。

最初はモーニングで連載していたのですが、新章がスピリッツで始まり、その後３年ぐらい不定期連載をしていました。どうも作者が漫画家の報酬アップを主張しているらしく、ネット上で「バクマン」より露骨に漫画家の実情を暴露していました。そこまで言うなら隔週なり月刊なり、しっかり連載の体裁は保ってほしいというのが読者の意見なのですがね。

今回も最終巻のカバー絵の報酬をめぐるトラブルがあり、今までは主人公の顔のアップが水彩画風に描かれたものでしたけど、昨日発売された最終第９巻は、ぱっと見、真っ白で何も書かれていないように見え、よく見るとボタンが２つ描かれており、白衣のアップを表現していることが分かると言うものでした。主人公やキャラクターの絵さえなければ、これくらいのカバーは絵心のある人なら誰でも描けそうなものです。結局作者が放棄し、別の人に頼んだのか、それとも「カバー絵が無報酬ならこの程度で十分」と作者が判断したのか、いずれにしても寂しい表紙であることは変わりませんな。

「ブラックジャックによろしく」「海猿」といえば、ドラマや映画にもなった人気漫画の代表作です。マンガの中には、こうした大ヒットになるものはごく一部で、この作者は数少ない恵まれた作家であると言えるでしょう。そんな彼でも、雑誌連載の収入はアシスタント代や経費を除くと収支はほぼ差し引き０だと言います。月に１８００万ももらっていてその全て使ってしまうと言うのはにわかに信じがたい話ですけど、確かに１人で考えて書く（というか、パソコンで打つ）文章作家に比べ、何人かを養わないといけない漫画家というのは、それだけで１つの会社みたいなものですから、月１８００万が右から左と言う話もあながちホラとも言えないのです。これが本当なら、損をしていない彼らはまだ良いとして、余り売れていない漫画家にとっては書けば書くほど首を絞める生活であることが伺えますね。ゲゲゲの女房の極貧時代を思い出します。
そんな中で一番の収入となるのがコミックスの印税。原稿はすでに上がっているわけですし、製本、出版はノータッチ。寝ていても本が売れれば儲けが入ってくるわけです。単価こそ書籍の半分～３分の１以下ですが、売れ方はその１０倍の１００万部単位で売れるわけで、例えば一冊５００円のマンガが１００万部売れれば売り上げは５億円、作家にはその１０％の５千万が懐に入る計算になります。週刊連載なら年に数冊出ますから、１年で億万長者も夢ではない業界なのですな。コミック累計１億冊だと５０億円か・・・もちろん、そんな作家は一握りなのでしょうけど。

しかし、佐藤先生は、この１０％を「出版社が勝手に決めた額で、適正でない」と主張し、１１％プラス出来高制を勝ち取っていました。１％アップでも一般サラリーマンの年収ぐらい違いますから、どちらにとっても切実な問題です。また印税１００％？を目指して独自に販売ルートを作り、自費出版の道も探ってみたわけですが、これはかなり元手がかかることが分かり、現状のシステムでは不可能であると結論づけた模様です。今回の騒動は、コミックス化に際しての言わば不文律であった「カバー絵書き下ろし、本編への加筆修正はタダ働き」に対しての対価を求めた末の決別、と言った所でしょうか。今後、佐藤先生はマンガ誌には描かず、ネット上のＷＥＢページ販売の路線を模索している所のようですが、これだけのヒット作が出せる人ですので、ぜひ創作活動自体は今後も続けてほしいものです。

結局、手塚治虫の「ブラックジャック」との相関関係はなかったなあ。