月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

7年で私が積み上げてきたもの

2014-04-19 | 仕事
随分と長い間、ブログを更新していなかった。
仕事が忙しかったわけではない。むしろその逆で、適度に仕事をした1週間だった。
取材が1本、ミーティングが半日。
原稿を書くためにパソコンに向かっている時間も、1日5、6時間しかなかったので、普段できないことをやろうと夕方からは動き出してしまい、パソコンに再び向き合わずに寝てしまうことが多かった。
普段できないこと・・・。例えば、天気の良い昼間に布団(夫と私のを合わせて合計8枚)のカバーをすべて洗って、布団は順番に干し、それでも間に合わないので布団乾燥機も使って、とにかく1日かけてすべての布団のダニを退治する。
夕方からはその布団に丁寧に掃除機をかける。ダニの死骸を吸い取るというわけだ。
そして、布団カバーを戻していく。
敷布団のシーツはしょっちゅう洗うが、掛け布団のカバーは時々しか洗わないし、ましてや全部をいっぺんになんて、まとまった時間があって天気の良い日でないと無理な話。
何時間もかかったが、気持ちの良い布団ができあがってホッとした。
あとは、庭の草むしりや延びてきたイングリッシュガーデンの摘心。
1・2月とほとんどサボっていた夫のお弁当作りも復活したし、朝昼晩とまともな食事を作って食べられるようになった。
やっぱり今週みたいに、週休2日、1日の労働時間が7時間くらいだと理想的。そうすれば家事もちゃんとできるし、晩酌したり本を読んだりする自分の時間も作れるし。なんだか追われてばかりの生活だといろんなものが失われていくような気がするなぁ。
かといって、たまに「追われる」くらい働かないと、「のんびりする」ということがどうも性に合わないようで不安になっていく。ややこしい。

さて、今週はイベントごとも多かった。
木曜日は日本酒雑誌のメンバーで創刊号発刊の打ち上げ。13時から17時まではミーティングをして、次号に生かせるよう改善点などを発表し合った。これはなかなか意義のあるミーティングだった。
最初は何を4時間も話すんだろうと思っていたが、集まってみればいろいろ議題はあるわけで・・・。
発行元の窓口2名、ライター2名、カメラマン3名、デザイナー1名、合計8名でのミーティングで、全体的な問題点の抽出はもちろん、各パート内での話し合いもできてよかった。

創刊号は、日本酒業界でものすごい反響らしい。
どこからか聞きつけた日本酒にこだわる飲食店や酒販店からの問い合わせもいくつかあったという。
書店には置かないのか?どこで手に入れられるのか?売ってはくれないのか?など。
すこぶる評判は良い。書き手としてはそれが何より。
前回のブログで紹介した相原酒造様は、なんとFBでこの雑誌のことをシェアしてくれた人たち全員に雑誌をプレゼントすることにしたという。版元に交渉して残り少ない部数を買い取ったそうだ。
シェアしてくれた人は100人以上!その人たち全員にタダで送ろうというのだから、なんとも太っ腹な行為で頭が下がる。
この100人以上の方に自分の記事を読んでもらえることも嬉しい。

メンバーの志気も高まる一方だ。次号は7月発行。私の担当は最低3蔵、プラス飲食店1店舗。
もしかしたらあと1蔵、大手酒造メーカーの取材も任せてもらえるかもしれないが、そこは未定。
とにかく期待に応えるものではなく、期待を超えるものが書けるよう、頑張らなくては!!

ミーティングの後はお店に移動して、打ち上げパーティー。
お酒は持ち込みの許可をもらい、版元のほうで用意してくれていた。
ミーティングに来れなかったメンバーも2名加わり、10名での大宴会。
まー・・・みんな飲む人ばかりやからね、あっという間に1升瓶が2本と4合瓶2本が空になって、お店のお酒もガンガン追加!
いろいろしゃべって笑って、もうとにかく楽しくて。
最高に楽しくて、最高に気持ちがよくて、最高に仕事ができて、最高に酔っ払いなメンバー。
このメンバーで1つのものを創っていけるということに改めて感謝した。

酔っ払う前に、店まで歩いていたら、私と一緒に組んで取材に行っていたカメラマンの方が「記事読みましたよ」と声をかけてきてくれた。
おとなしくて無口なカメラマンさんなのだけど、一生懸命言葉を選びながら、もう恥ずかしくなるくらい褒めたたえてくれた。

「すごくよかったです。
文章がすーっと頭に入ってきて、読みやすくて、わかりやすくて。
蔵元さんの言葉を引用されている部分も的確でよくて、
そして、最後の締め方もよくて・・・
とにかくよかったです」

言ってくれたのは、そんな感じのこと。
一番嬉しかったのは、「文章がすーっと頭に入って読みやすかった」ということだった。
いつも書くけれど、私が目指す文章は「誰にでもわかりやすい文章」だから。
そのスタイルが優れているというわけではないけれど、単に自分自身が目指しているスタイルがあって、それがちゃんと実現できて評価されているということはやっぱり嬉しい。
このカメラマンさんは自分から話しかけてくれることがあまりないので、わざわざ私にそれを言いに来てくれたから、よけいにじーんとした。

自分がやってきたこと、選択してきたことが「間違っていなかった」とわかる瞬間。
もしかしたら人はその瞬間を積み重ねることで何とかやっていけるのかもしれない。

そして、翌日は、昨年秋からずっと連続で一緒に冊子を作っていたデザイン事務所のメンバーとの打ち上げ。
これで一旦、冊子の仕事は一区切りしたので、お疲れさま会しましょうと誘ってくれたのだ。

・就活生に向けた中小企業の選び方の冊子
・高等技術専門学校(ぎせんこう)のPR誌
・レイブル自立支援事業の冊子

4、5ヶ月の間に、この3冊を作らせてもらった。
私もだけど、デザイン事務所もかなり大変だったようだ。
これらはすべて行政が発行元なので、その関係者も2名参加。私を含めて7名での打ち上げとなった。

ここでも高い評価をいただき、ありがたかった。
「上司が細かい人で、いつも何を見せてもいろいろ修正入れてくるんですけど、この冊子についてはほとんどノーチェックだったんですよ」と。
特に「ぎせんこう」の冊子は、昨年1年の成果物でナンバーワンと上の人に評価されたと聞いていたので、とても嬉しかったし自信にも繋がった。

評価も嬉しいけれど、この仕事はいろいろと勉強になることが多かった。
日常生活では関わることのない立場の人たちと触れ合い、その人たちの気持ちを考えて、役に立つものを作るという作業だったからだ。
大学へ行って、就活生(大学生)に混じって就職活動のセミナーを受けたり、技術専門学校を卒業した職人さんたちを取材したり、レイブルという社会でうまく働けない若者たちが成長していく場を見させてもらったり・・・。
この仕事をしていなかったら、まず関わることのない場所や人たち。
終わってみると、自分の知識や経験の層が少しだけ厚くなったような気がしている。

そして、またこちらのメンバーも最高なのだ。
デザイン事務所の4名はみんな仕事が早いし、センスがいいし、何より人がいい。
今回の取材での面白かったことを皆で思い出して大笑いしたり、これまでにデザイン事務所で起きたいろんな事件の話も聞いて、とにかく笑い転げていた。

帰りには「また一緒に仕事しましょうね」と声をかけていただき、自分は本当に幸せ者だなぁとじんわり。
電車で1人になって、この2日間の大宴会のことを思い出していた。
2006年10月、10年間も心血注いでやってきた社内報の職場を追われ、同時に契約していた会社が東京へ行ったり倒産したりで、大きな収入源の取引先をすべて失った。
10年かかって積み上げてきたのに、またゼロからのスタートか・・・と失望の中にいた。未来は明るいどころか色もなく、何も見えなかった。
世の中は甘くはなかった。
リーマンショックが不況に拍車をかけた時期でもある。
仕事がなくて鬱々と暮らしていたこともあるし、忙しく働いているライターさんたちを嫉妬と羨望の目で見ていたこともある。
ライターをやめて、とにかくお金を稼ぐ方法を考えないといけないと、真剣に夫に相談したこともある。
(夫の名誉のために書いておくと、夫の給料で十分に私を食わせることはできるのだが、私自身が対等でありたかった)
ライターをやめたいわけがない。
書いて書いてお金を稼ぎたい。
だけど、ライターである以前に、稼がなければ生活ができないということであれば、他の手段を考えるしかなかった。

でもいつも、もう限界か・・・と思ったときに、どこからか救いの手が伸びてくる。
T社長が私を拾ってくれて、社内報のレギュラーの仕事をくれた。
それから昨日のデザイン事務所のY澤さんが、別のディレクターさんを紹介してくれて、大手メーカーのサイトやカタログの仕事が定期的にまわってくるようになった。
そういう大きな収入源ができたので、波はあってもライターをやめることは考えなくてよくなった。
それでも年収は100~200万くらい激減したが、夫の支えもあって(足りない時は夫に借金!)なんとかやれている。

ゼロからの再スタートを切って7年・・・
私はずいぶんたくさんのものを手にしたなぁと、しみじみ思う。
それはお金ではなくて、知識や経験、それから人との繋がりだ。

「いいものを創りたい!」
その気持ちを共有して、1つのものを創り上げることができるクリエイターたちとの出会い。
ライター同士の横のつながりもたくさんできたし、師匠と呼べる人も現れた。
2日間、飲んで笑って笑って飲んで・・・。
あー、なんか高校の文化祭の後の打ち上げみたいだったなぁと思い、ふっと笑いがこみ上げてくる。

こうやって振り返ったときに、自分が「得た」と思えるものが「人」でよかった。
なんか幸せだなぁ、人に恵まれているなぁ・・・

帰りの電車の中で、そんなことを考えていた。
たぶんこれからも順風満帆とはいかないだろうし、フリーに仕事の波はつきものだから、また鬱々としてここに愚痴を書くこともあるだろう。
だけど、しぶとくライターは続けられるところまで続けるし、書き続ける。

人との出会いを大切にしながら。
そして、いいものを創りたいという気持ちを高く強く持ちながら。

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2 コメント

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Unknown (あんこ)
2014-04-19 23:41:33
たくさん、書きたいことがあるけれど、ひとつだけ。また、ゼロからのスタートか、と感じたときから、今日まで、積み上げてきたものの先にあったもの、得たと思えたものが「人」で、本当によかったね。
実直な仕事ぶり、こんな私にもじわじわと伝わってきます。
かおりんの歩んできた道に乾杯。
これからのかおりんの道に乾杯。
そして道の途中で出会えたことに感謝、です。
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Unknown (かおり)
2014-04-22 11:37:11
あんこちゃん、ありがとう。

大きな仕事をすること、
いい作品を作っていくこと、
人から仕事を評価されること、
お金をいっぱい稼げること、

どれも嬉しいことだとは思うけれど、
振り返ったとき、そこに「人」がいなければ、
私にとっては意味がないなぁと思ったの。
逆に言えば、他は空っぽでも、良い人との関係が築けていれば、それは何よりの財産。

この7年を振り返ったとき、もちろんそこにあんこちゃんの顔も見えたよ。
一緒にやっていた仕事はなんだか中途半端に終わってしまったけど、あんこちゃんと出会うためのものだったんだなぁと、今は思っています。感謝。
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