月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

妙心寺退蔵院で、満開のしだれ桜を。

2019-04-11 | 
ライター友達のアンデルさんから「妙心寺退蔵院の季節限定特別拝観の花見に行きませんか?」とLINEが来た。
ちょうど仕事も暇な時期だったので、誘いに乗った。

あの辺りは、仁和寺、竜安寺、等持院など、見どころも多い。
そういえば、数年前にも彼女と一緒に散策したことがあったな、と懐かしく思い出した。

妙心寺はとても広い禅宗の寺院だ。
今回のプランはその中の退蔵院で、ミシュラン星付き「阿じろ」の精進料理とともに、庭園の花見を楽しむというもの(要予約:4500円)。
庭園だけでなく、通常非公開の退蔵院方丈内や枯山水庭園「元信の庭」、隠れ茶室「囲いの席」なども見られる。

アンデルさんが13時~のプランを予約してくれたので、12時過ぎに京都駅で待ち合わせた。
前日は1日中雨が降り、春とは思えないような寒い日だったが、この日は快晴。肌寒さは残るものの、気持ちの良い春の日だった。

受付を済ませて中に入ると、最初にプロジェクターを使っての簡単なガイドがあった。
あまり頭でっかちになってもいけないが、ざっくりとでも説明を受けておくと、その後で見るものの価値が変わってくるので、こういうのはいいなと思う。
説明を聞きながらも、先ほどから出汁の良い匂いが漂っていて、食欲をそそられていた。

ガイドが終わると部屋を移動して、「阿じろ」の精進料理をいただいた。



もっと粗食かと思っていたら、天ぷらやお菓子まであり、なかなかのボリューム。どれも優しい味付けで美味しかった。
しかし、イメージとしては向かい合っておしゃべりでもしながら食べられると思っていたのだが、横1列にお膳が並べられ、参加者全員が誰とも向き合うことができない。
なんだか変な感じだなと思っていたら、アンデルさんがこそっと「精進料理を食べることも修行なんだって」と、料理に添えられていた説明書きを見てささやいた。
なるほど、そういうことか。
納得し、ただひたすら料理と向き合って、食べた。

食べ終わると、あとは自由に散策ができる。
こちらは国宝の『瓢鮎図(ひょうねんず)』。※模写



山水画の始祖といわれている如拙が、足利義持の命により描いたものだ。
「ナマズを瓢箪で捕まえる」という禅問答をどう解決するか、という内容を描いていて、上部にある文字は禅僧31名の回答だ。

ガイドで説明を聞いているとき、私だったらどうするかなと考えた。
瓢箪に酒を入れてきて、それを池に流し、ナマズが酔っ払ってきたところを捕まえるというのはどうだろう?
ちなみにこれに「正解」はない。
禅問答とはその問題に向き合った末、自分の内なる思いを発することに意味があるらしい。
なかなか興味深かった。

茶室や元信の庭も見て、ようやくお目当ての余香苑(よこうえん)へ。
門を入るやいなや、目に飛び込んでくる大きなしだれ桜に、思わず声が漏れる。



巨大なので、外から眺めるのではなく、しだれ桜の中に入って見上げられるのが素晴らしい。
桜の中に入っていることに気分も高揚する。



しだれ桜を挟むようにして、敷砂の色が異なる2つの庭がある。
白っぽい敷砂の「陽の庭」。


黒っぽい敷砂の「陰の庭」。


この空間は本当にいくらいても飽きることがなかった。
ただ、いつまでもいるわけにいかず、散策を続ける。
外国人が嬉しそうに記念写真を撮っているのを横目で見ながら、アンデルさんと二人で池のほとりで座っていた。

ゆっくり流れる時間。

私は最近、アルコールで脳細胞がだいぶんやられているのか、それともただの「老い」なのかわからないが、いわゆる「ぼーっとする」ということができるようになった。
「ぼーっとする」という意味がずっとどうしてもわからず、「ぼーっとしてみよう」と思っても、いつも頭の中はいろんな思考で埋め尽くされていた。
でも、最近は「あ、これがぼーっとするということが」とわかる瞬間がある。
この時も、ほんの数分だが、ぼーっとした。(逆に、大丈夫か?)

数分でも、本気で頭を休めるというのはいいことだなと思う。

庭の中に「大休庵」という茶室があり、そこで庭を眺めながらお抹茶とお菓子をいただけるとのことだったので、入ってみた。
老松とのコラボだというオリジナルのお菓子とお抹茶。


こういうところでいただく抹茶は、あまり点てるのが上手じゃないものもあるが、こちらのお抹茶はとても美味しかった。
久しぶりに抹茶を買って、家でも点ててみようかなと思うほどに。(子供の頃、10年ちょっと習っていた)

このお茶室の前にも大きなしだれ桜があり、こちらも見ごろ。


十分に桜を堪能して、妙心寺をあとにした。
アンデルさんが「美味しそうなチーズケーキの店がある」というので、そちらへ。
「kew(キュー)」さんというカフェ。こじんまりとしたお店だが、なんだかもう「絶対おいしいものしか出てこない」空気感。
一歩入っただけで、私の「おいしいものアンテナ」が作動した。

メニューはシンプルで、ベイクドチーズケーキやマドレーヌなど、4、5種類の焼き菓子。
私たちはベイクドチーズケーキとコーヒーを注文した。

大きい!ふわっふわ!
「おいしそう~!!!」と思わず言ってしまう。この「言ってしまう」感じは間違いないやつ。
中はとろとろ。ちゃんと甘い。



大満足で店を出た。
最近、ダイエットで糖質制限をしていたので、余計においしかったのかもしれない。
「甘い」って最高。なんて幸せなんだ。

気づけばもう夕方だったので、西院まで戻った。
少しだけ飲みましょうということになり、私が前から西院で気になっていた「メーカー」さんへ。
大きなテーブルを囲むようにして座るお店で、インテリアの1つ1つに店主のこだわりが感じられるようなお店だ。



メニューはすべて単品で金額も明確なのだが、アラカルトで居酒屋的に使う店というよりは、自分でコースを組み立てるタイプのお店だった。
なので、「前菜は?」「メインは?」「デザートは?」という聞き方をされる。
ただ、先ほどの大きなチーズケーキでお腹がいっぱいだったので、「今日はメインなしで、お酒を少し飲ませてください」とお願いした。
ちょっとお店のコンセプトと違う使い方をして申し訳なかった。(こういうのを異常に気にするタイプ・・・)

気になったものを3つ注文した。
メニューの名前は忘れたので、なんとなく食材のみ記載。

ホタルイカとセリなどの香草。


九条ネギとゴルゴンゾーラのグリル。


炙りホタテと赤かぶと柑橘のマリネ。


どれもボリュームがあり、丁寧に作られていて美味しかった。
ワインと合う。
今度は夫とゆっくり来てみようと思った。

早めに解散したが、盛りだくさんの1日で、リフレッシュできたなぁと思った。誘ってくれたアンデルさんに感謝。
長岡天神で別れ、準急を待っていた時、ふと思いつき、かどやのバーへ。
まだ9時にもなっていなかったので、少し立ち寄った。
こんなふうに、思い付きで立ち寄れる友達のバーが近くにあるっていいなと思う。

結局、日本酒を2合ほど飲み、終電で帰宅した。
遊び疲れた春の日。
酔っ払った頭で、昼間見たしだれ桜の色を思い出していた。

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