月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

ニュージャンル

2015-10-20 | 仕事
ずっとノンジャンルで仕事を受けていたら、この間、ついにこんなのまで依頼された



まず驚きは、私がこの雑誌に書くということよりも、こんな雑誌があるってこと。
業界専門誌というのは、そのジャンルに無関係だと、一生その存在すら知らずに生きていくものなんだなぁと改めて思う。

でも、ちゃんとした商業誌で販売もしているし、電気工事に関わる試験の対策問題なども入っていたので、その道の人にはメジャーな雑誌なのかもしれない。

なぜ私が?と思うが、実は全く無関係ではなくて、この表紙にもデカデカと書かれているホーム・エネルギー・マネジメント・システム、いわゆるHEMS(ヘムス)の広告コピーはもう3、4年書いているのだ。

HEMS・・・
たぶんこれを読んでいる人の中にも「何それ?」という人がいると思う。
簡単に言えば、家中の電気やガス、水道などエネルギーの流れを見える化して、いろんな設備機器や家電とも連携させて、エネルギーを賢く上手に使いましょう、というもの。
その流れをつかさどる脳みそみたいな役割をする機械のことだ。

これがあると、モニターで電気の流れがすべて見える。
太陽光発電をつけている家なら、作っている電気や売ってる電気も、他のエネルギーとまとめて1つのモニターで見られるし、もちろん太陽光がなくたって、普通に「今エアコンにどれだけ電気が使われていて、いくらかかっている」というように、各部屋ごと、各家電ごとにも見ることができるのだ。

だから?それがどうした?と思うかもしれないが、来年には電気の小売自由化が始まるので、自分の家の電気の使い方がわかっていれば、お得なプランを選ぶこともできる。
そのうえ、国の方針としては、2030年までには全世帯にHEMSを設置することも検討されている。
マイナンバーだけでなく、家で使ってるエネルギーまで管理しちゃおうってことなんかな。

ざっといえば、そんな感じで、今どこのメーカーも力を入れている商材だ。
で、私は数年前から、家にHEMSを設置している電気会社や工務店、ハウスメーカー、さらには一般のお宅まで取材に行き、どんなにこの商品が良いかということを語ってもらい、メーカーのサイトの採用事例に掲載していたのだ。(主に法人向け)

前置きが長くなったが、全く無関係というわけではなく、商品の知識はあったし、いつもこの仕事を依頼してくれる制作会社からの依頼だったので、「なんで私が急に電気工事の雑誌に?!」ということではなかった。

ただ、ディレクターさんに「打ち合わせしたい」と呼ばれて、その制作会社へ行き、話を聞いていると、私が持っている知識ではまったく足りないような内容だったのだ。
この話を持ってきた営業さんが説明するのを聞いて、ディレクターさんも焦りだして、「すみません、私が言ってたのと違いますね」と謝る始末。
ディレクターさんは最初、この雑誌に「HEMSの広告を6ページ書くからお願いします」と言ってきたので、私もOKして打ち合わせに言ったのだが、実際営業さんが言うのには、「電気工事会社の施工する人に向けて、施工のポイントや手順を説明してほしい」と。

いや、いや、いや~
それは無理でしょ!(と、実際言った)
施工のポイントもなにも、施工したことがない私が、施工のプロに何を言うんだ?と。
こんな専門誌に無理でしょ、と。

しかし、営業さんもいい加減なもんで、どっさり資料を渡すと「ここに書いてあることばっかりなんで、読んで動画も観てもらったら、書けると思うんです」と言う。
「いや、こういうのはライターより、実際に施工されている方が書かれたほうが・・・」と提案すると、
「それが、施工する人っていうのは、作業はできるんですけど、文章にして伝えるっていうことはできないんですよね・・・」とあっさり却下。
ディレクターまでいよいよ「あなたの理解力とコピー力があれば、できると思うんです。頼りにしてます!」と何が何でも私にやらせるつもりで迫ってくる・・・。
いつものことだが、このディレクターさんは日本一やさしい笑顔としゃべり方でムチャを言う。
結局、だいたいの構成案を聞き、資料をどさっと渡されて打ち合わせは終了となった。

もうやるしかないのだ。
不安を抱えて帰ろうとすると、珍しくディレクターさんがエレベーターまで送りにきた。
さすがに申し訳ないと思ったのか、さすがにこれは無理かもしれないと思ったのか・・・。
「金額、いつもよりだいぶん乗せられるんで、これくらいはもらわないとやってられない!っていうくらいの金額つけてもらったらいいので!」とまで言ってくれた。

じゃ、遠慮なく、たっぷりもらいます!

家に帰って、どーしよー、ムチャやー、どうしよー、なんてムニュムニュ言っていたら、夫が一言。
「でも、ほんまは得意やろ?書けるって思ってるやろ?」

さすが!
だてに私の夫を8年もやっていない。

もちろん初めてのことだし、電気工事なんて一番苦手な分野のことだから不安はあった。
でも、
「莫大な情報を処理して分析して言葉にしてまとめる」
これは自分にとってライター以前の得意分野。
ごちゃごちゃ言いながらも、実はすごいのが書けるんじゃないかとも思っていたのだ。
というか、すごいのを書いて、ディレクターさんをびびらせようと、そんな企てまであった

実際取り掛かってみると、そんな甘くはなく、ひたすら専門用語を調べて動画観て、マニュアル見て・・・の繰り返しだったが、それでも1日半くらいで完成!
写真や図の指示まで入れて、提出した。

結果はというと、おかげさまで高評価。
「思っていた以上のものが出てきてびっくりしています」と営業さんからもお褒めの言葉をいただいた

よかった、よかった。
私も新しいジャンルを切り開けたし・・・。いや、もうやりたくないけど

でも、いつも新しいこと、難しいことをやり終えると思うのは、「解決できない問題は自分に与えられない」ということ。
自分にまわってきた時点で、それは「やれる」ことなんだと思う。
「やれる」ことを前提に考えれば、「やれる」方法を模索し、努力し、やり遂げることができる。

もしここで、「なんで私にこれが?絶対できないよ」という前提から入ってしまうと、どうにかしてそこから逃れることしか考えられなくなってしまう。

だから、「やれることしかまわってこない」といつも思うようにしている。
一見無茶に思えることでも。
できるとやっぱり嬉しいしなぁ・・・

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