カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ミツ の アワレ 3

2020-06-21 | ムロウ サイセイ
 3、 ヒ は みじかく

「アタイ ね、 サッキ から かんがえて いた ん だ けれど、 こんな リッパ な イレバ を おいれ に なって も、 オジサマ は、 オトシ だ から まもなく しぬ でしょう」
「そりゃ しぬ ね、 キン の イレバ だって なんにも なり は しない よ、 けど、 これ で なんでも かめる から しごく アンラク だね」
「ハグキ の ツクリ が みんな キン でしょう、 いったい、 どれだけ メカタ が ある かしら」
「ナンモンメ ある もの かな、 なぜ、 そんな こと を ききだす ん だ、 きまりわるそう に して さ」
「オジサマ が しんじゃったら、 ダレ が いっとう サキ に イレバ を とっちゃう かしら」
「ダレ だ か わからない な、 あるいは キミ かな、 キミ は、 キン を ほしがって いる ん じゃ ない か」
「あ、 あたっちゃった、 アタイ、 オジサマ が おなくなり に なったら、 それ、 ダレ より も サキ に いただく わよ、 それ で ミミワ と ユビワ と を こさえる の、 イマ から オヤクソク して おいて ね、 きっと、 やる と おっしゃって おいて よ」
「やって も いい けれど、 クチ の ナカ に ユビ を いれて イレバ を はずす とき に、 かみついて みせる から、 それ が こわく なかったら とる ん だね」
「ホント、 かみつく キ なの、 だって オヤクソク だ から いい じゃ ない の」
「その とき の キブン-シダイ なん だよ、 ハラ が たって いたら、 ユビサキ を がにっと かんで やる」
「しんで いる ヒト が かみつく こと なんか、 ない じゃ ない の」
「クチ だけ いきのこって やる」
「ふふ、 そしたら アタイ、 サキ に オジサマ の クチ の ナカ に フデ の ホ を いれて、 まだ、 いきて いらっしゃる か どう か、 ためして みて から に する わ、 くすぐったがらなかったら、 すぐ はずす わ」
「ボク は くすぐったくて も、 じっと ガマン して いて、 ユビサキ が クチ の ナカ に はいる の を まちうけて いる」
「いや よ、 そんな イジワル する なんて、 くださる もの なら、 あっさり と くださる もの よ」
「やる よ、 しんで まで かみつき は しない、 ただ、 そう いって みたかった だけ だ」
「サッキ から の オハナシ を みんな きいて いて、 ボックス に いる カタ、 わらって いらっしって よ、 でも、 あの カタ、 オジサマ の カオ と アタイ の カオ と を みくらべて いて、 どんな アイダガラ だ か を よんで いる みたい ね、 あの メ どう でしょう、 ちっとも、 チエ の まじって いない メ の ウツクシサ だ わね」
「きいた ふう な こと を いう ね、 ああいう メ を して いる ヒト は、 も ヒトツ オク の ほう に ベツ の メ を もって いて、 それ が なんでも みとどけて いる カワリ に、 オモテガワ の メ は いつも ルス みたい に うつくしく みえる ん だよ」
「ドナタ か を まって らっしゃる の かしら?」
「さあ ね、 なかなか いい カオ を して いる。 キミ みたい に、 やはり ぽかん と して いる けれど」
「ゴアイサツ ね、 あの カタ、 アタイタチ が はいって くる と、 すぐ アト から いらしった カタ よ、 アタイ の カオ ばかり みて いて、 おはなし しかける みたい よう に、 にこにこ して いらっしゃる じゃ ない の」
「キンギョ の バケノカワ が わかって いる の かも しれない よ、 コーヒー は のまず に ミズ ばかり のんで いる から だ」
「アタイ、 あの カタ と、 おはなし して みよう かしら」
「それ より デガケ に きた テガミ を みせて くれ」
「ほら、 はい。 これ を よむ と いい キモチ よ、 この オジョウサマ の オカアサマ の ショウセツ なの よ、 いい か わるい か は わからない から、 よんで いただきたい って、 オジョウサマ の テガミ が はいって いる のよ」
「こういう バアイ も ある ん だね」
「オカアサマ が オジサマ に チョクセツ に、 テガミ を おかき に なる の が、 きっと キマリ が わるい のね、 アタイ、 こういう オジョウサマ に なって みたい」
「もう 1 ツウ の は?」
「オジサマ の オウチ の マエ を いったり きたり して いる の は、 じつは ワタクシ なの で ございます、 ジカン は 5 ジ、 もし オテスキ で ございましたら おあい くださいまし と かいて ある わ、 アタイ、 その オジカン に でて みて、 いらっしったら おとおし する わ。 かまわない でしょう、 5 ジ なら いつも ぽかん と して いらっしゃる オジカン だ から」
「おとおし して も いい よ、 べつに ぽかん と して いる わけ じゃ ない」
「だって なにも なさらない で、 ぼうっと して いらっしゃる じゃ ない の。 アタイ ね、 キノウ フイ に (ウミ を わたる 1 ピキ の キンギョ) と、 かいて みた のよ、 とても おおきい ウミ の ウエ に キンギョ が 1 ピキ、 そりかえって もえながら わたって ゆく ケシキ なの よ、 そう かんがえて みたら、 アタイ たまらなく エ が かきたく なっちゃった、 それ の カエシウタ が フイ に でた わ、 (ヤマ を のぼって ゆく アタイ、) と いう の」
「ふむ、 (ウミ を わたる 1 ピキ の キンギョ、) か、」
「きこえた の かしら、 あの カタ、 コンド は コウシキ に ワライガオ を して いらっしゃる わよ、 きっと、 オジサマ の オナマエ を しって いる カタ なの よ、 だから、 アンシン して わらって きいて いる のよ」
「キミ の コエ が おおきい から なん だ、 ウミ を わたる 1 ピキ の キンギョ と きいた だけ で、 ぷっと わらいたく なる じゃ ない か」
「キンギョ は オサカナ の ナカ でも、 いつも もえて いる よう な オサカナ なの よ、 カラダ の ナカ まで シンク なの よ」
「なぜ そんな に サカナ の くせ に、 もえなければ ならない ん だ」
「もえて いる から、 オジサマ に すかれて いる ん じゃ ない の」
「そう か、」
「オジサマ の イカイヨウ だって アタイ が はいって いって、 なめて あげて、 オクスリ を たんと ぬって あげた から、 なおった の じゃ ない の、 アタイ の もえた リン が あんな おおきい イブクロ の キズ まで、 おなおし して しまった じゃ ない こと、 ナニ いってん の、 そんな ノウコウ な オカシ まで めしあがれる よう に なった の も、 みな、 アタイ の リン の せい なの よ」
「それに ビョウイン の クスリ の こと も、 わすれて は ならない ん だ」
「ビョウイン の クスリ は タダ の ブッシツ だ わよ、 アタイ の リン と、 ウロコ の ヌラヌラ は、 みんな いきて いる ヌラヌラ なの よ、 イチド イチョウ に はいって いったら、 アタイ、 メダカ の よう に ショウスイ して でて くる の、 オジサマ に それ が わからない の」
「わかる よ、 おおきな コエ を だす と、 ほら、 また あの ヒト が わらう じゃ ない か」
「あの カタ、 ここ に よんで みる わ、 ダレ も き も しない ヒト を まつ なんて、 どうか して いる」
「はなしかける の は よしなさい、 ナレアイ の キンギョ みたい に、 ニンゲン は すぐ トモダチ に なれる もん じゃ ない」
「それ も そう ね、 アタイタチ は すぐ オトモダチ に なって しまう けれど、 ニンゲン は そう は カンタン には、 オトモダチ に なれない わね」
「キミ デンワ だよ、 ハイシャ の チリョウ ジカン なん だ」
「じゃ、 いって まいります。 ここ に いて ね、 40 プン くらい かかる けれど、 キョウ で、 もう オシマイ だ から ガマン して ね」
「フタリ とも ハ が わるくて は こまる ね。 なるほど、 ハイシャ さん には ちゃんと、 クチベニ は おとして でかける なんて、 カンシン だね」
「で なかったら センセイ の テ も、 オドウグ も、 クチベニ で マッカ に なる じゃ ない の? どう、 とれました か」
「とれた よ、 クチベニ を とる と、 まるで ぼやけた カオ に なる」
「クチベニ は オンナ の トウダイ みたい に、 あかあか と ともって いる もの よ、 きえたら、 シン まで しょんぼり して くる わ。 じゃ いって きます、 あの、 それから、 あの カタ と アタイ の ルスチュウ ナカヨシ に なったら、 きかない わよ、 うふ、 アタイ って ヤキモチヤキ だ わね」
「おおきな コエ を たてる と きこえる よ、 ほら、 オカネ、」
「キョウ の オキマリ の タバコ は もう あがって いる から、 アト は ハンボン だって おのみ に なっちゃ いけない わ、 タバコ の ハコ、 もって ゆく わよ」
「1 ポン だけ おいて いって くれ」
「ダメ、 つい 1 ポン が 2 ホン に なる から、 タバコ を みたら、 ドク と おもえ と いう こと が ある わ、 おとなしく まって いらっしゃい。 じゃ、 いって きまあす」

「あら、 いつか の オバサマ、 ほら、 コウエンカイ で おあい した オバサマ、 アタイ、 ちらっと みて、 すぐ わかっちゃった」
「オヒトリ じゃ ない わね、 ずいぶん、 おおきく おなり に なった のね」
「オジサマ と ゴイッショ なの、 さあ、 いきましょう、 オジサマ ヒトリ で オチャ のんで いらっしゃる から、 ちょうど、 いい ジブン だわ、 いつか フクロコウジ で おにげ に なった でしょう、 でも、 キョウ は はなさない わよ」
「キョウ も イソギ の ヨウジ が ある んで、 こうして は いられない の。 だから、 オジサマ には おあい できない わ、 アナタ と だけ、 ちょっぴり おはなし する けど」
「そんな こと いわない で、 いらっしって よ、 オジサマ は きっと およろこび に なります、 ミョウ ね、 ハ の オイシャ サマ の ところ に くる と、 きっと、 オメ に かかれる なんて、 コノアイダ も そう だった わね。 コノアイダ は どうして あんな に おにげ に なった の」
「はずかしい から でしょう、 こんな きたない カッコウ して いる から、 おあい したく ない のよ」
「ちょっと でも いい ん です から いらっしって、 ここ、 はなさない わ」
「オジサマ は、 アナタ を かわいがって、 くださる、……」
「ええ、 そりゃ もう、 なんだって いう こと きいて くださる わよ、 アタイ の オシリ だって かゆい って いえば、 かいて いただける し」
「まあ、 オシリ だって、……」
「アタイ が こんな に ちいちゃい でしょう、 だから コドモ だ と おもって いらっしゃる のよ、 ホント は、 アタイ、 コドモ なんか じゃ ない ん です けれど、 そして なんだって しって います のよ、 オバサマ が おあい に ならない ワケ も、 ちゃんと わかって いる のよ」
「では、 その ワケ いって ちょうだい、 どうして おあい できない か と いう こと を ね」
「オバサマ は、 ユウレイ でしょう、 だから おあい に なれない の でしょう、 ほら、 ヘン な オカオ に なった わ、 ムカシ の ユウレイ は、 カワ の ソバ の ヤナギ の キ の シタ に いた けれど、 コノゴロ は、 ビル の ナカ から も でて いらっしゃる わね」
「その ユウレイ が モノ を いう のね、 ほほ、 でも アナタ だって ユウレイ じゃ ない こと」
「アタイ、 いきて ぴんぴん して います、 なんでも たべて いる し、 けっして にげたり なんか いたしません」
「いたしません けれど ね、 ニンゲン に うまく ばけて いらっしゃる じゃ ない こと」
「ばれちゃった わね、 オジサマ が ショウセツ の ナカ で ばけて みせて いらっしゃる のよ、 モト は、 アタイ、 500 エン しか しない キンギョ なん です。 それ を オジサマ が いろいろ かんがえて イキ を ふきこんで くだすって いる の、 だから、 ミズ さえ あれば どこ に でも オトモ が できる ん です、 そして アタイ、 あまったれる だけ あまったれて いて、 いつも、 オジサマ を とろとろ に して いる の、 オジサマ も それ が たまらなく おすき らしい ん です」
「あの カタ は もとから そういう カタ なの よ、 メダカ 1 ピキ スイバン に いれて、 イチニチジュウ ながめて いらっしゃる よう な カタ なの ね、 ナニ が おもしろい ん だ か わからない けど、 あきる こと も ない らしい、 そして とつぜん カオ を あげる と マチ の ナカ を あるく ため に、 オウチ から とびだして おしまい に なる、……」
「そして オバサマ と おあい に なる、 オバサマ は いつのまにか しんで おしまい に なった、 その オバケ さん が オジサマ の スキマ を みつけて、 トコロ と ジカン を かまわず に おはいり に なる、……」
「そこで キンギョ の アナタ に みつけられた と いう こと に、 なる わね。 でも、 キンギョ を みつけた こと は さすが に オジサマ だ けれど、 キンギョ だって トウセツ ユダン が ならない わよ、 アナタ みたい な ダイタン な キンギョ も いる ん だ から」
「アタイ ね、 キンギョ だ って こと みやぶられた こと、 はじめて なの、 いつも それ が キ に なる ん だ けど、 ユウレイ の オバサマ に あったら、 かなわない わよ、 けど ね、 オバサマ が ユウレイ だ と いう こと、 ホントウ の こと かしら?」
「さわって みる と いい わ、 つめたく ない でしょう、 ほら ね、 ここ に テ を いれて みたって わかる でしょう、 こんな に、 ほかほか と あたたかい でしょう」
「ええ、 オッパイ も ある し ムネ の フクラミ も ある わ、 やはり ユウレイ と いう こと は ウソ なの ね、 アタイ の キンギョ だ と いう こと は ホンモノ だ けれど、 あ、 オバサマ、 いつのまにか きちゃった、 ここ なの よ、 ほら、 あそこ に ヒトリ で ぽつん と して すわって いらっしゃる でしょう、 あれ も ユウレイ の オジサマ かも しれない けど、 ね、 おはいり に なって、 ちょっと でも いい から、 あって おあげ して ね、 あら、 サッキ の ヒト が ソバ に きて ナニ か いって いる わ」
「じゃ、 ワタクシ これ で」
「ダメ だ と いったら、 カオ だけ でも みせて おあげ して よ」
「ワタクシ の ほう で オカオ を みた から、 それ で いい のよ、 オジサマ は ワタクシ なんか みなく とも、 みる ヒト が たくさん おあり に なる ん です から、 じゃ、 ダイジ に して あげて ね」
「また いっちゃった、 なんて アシ の はやい ヒト なん だろう。 オジサマ、 ただいま、 あら、 ごめん あそばせ」
「この カタ は ね、 サッキ の テガミ の カタ なん だ、 キョウ ユウガタ いらっしゃる はず だった が、 マルビル に ヨウジ が あって いらっしって グウゼン に でっくわして、 アト を つけて みえた ん だ そう だ、 はは、 アト を つけた なんて これ は シツレイ」
「でも おつけ した こと は ジッサイ なん です もの、 オメ に かかれて とても うれしゅう ございます わ、 ハ の ほう、 おなおり に なった ん です か」
「ええ、 もう すっかり、……」
「では、 ワタクシ、 これ で シツレイ いたします」
「そお、 そのうち、 タク の ほう に いらっしって ください」
「ごめん あそばせ」
「ヘン な カタ ね、 アタイ が かえって くる と、 ろくに ハナシ も しない で いく なんて、 あの カタ、 オジサマ が とうから しって いる カタ なん でしょう、 それ を アタイ が まだ コドモ だ と おもって、 ごまかして いらっしった のね、 ちゃんと わかる わ、 アタイ の いない アイダ に たんと おはなし した の でしょう。 どうも、 にこにこ と おはなし したそう な ヨウス が おかしい と おもって いたら、 あたっちゃった、 ナニ、 おはなし して いらっしった の」
「キミ の こと さ」
「アタイ の ナニ を おはなし して いた の」
「キミ は ボク の オジョウサマ か と きいた から、 まあ、 そんな もの だ と こたえた ん だ。 そしたら、 とても、 おちいさい けれど オリコウ そう だ と いって いた」
「ヤキモチヤキ で こまる と、 おっしゃった の でしょう」
「それ も いって おいた よ、 なんでも ユダン の ならない コ だ と、」
「アタイ が キンギョ だ なんて、 おっしゃり は しなかった でしょう ね」
「それ は いわなかった、 いって も ホントウ だ とは おもわない から だよ、 キンギョ が そんな に うまく ニンゲン の カタチ を ととのえる こと は、 ヨソウ イジョウ の こと なん だ」
「で、 いったい、 なんの ゴヨウ が あった の」
「ちょっと した こと だ、 キミ に いったって わかりっこ の ない こと だ」
「たとえば?」
「キミ には わからない こと なん だよ」
「アタイ に わからない こと なんか、 ヒトツ も ない はず よ、 かくさない で いって ちょうだい、 アタイ、 はじめ あの カタ に コウイ を もって いた けれど、 オジサマ を とりあげる よう な ヒト は、 ことごとく ミンナ テキ に まわす わ」
「てきびしい な」
「ナニ か かくして いる こと おあり でしょう、 きっと、 かくして いる」
「かくして なんか いる もの か」
「オカオ の イロ が アイマイ だ わよ、 キ を つけて、 ごまかそう と して いらっしゃる。 オジサマ は、 そんな とき には、 メ を アタイ から そっと おそらし に なる もの」
「もう、 ここ を でよう じゃ ない か」
「ハクジョウ しなきゃ でない わ、 いつまでも、 すわってて やる」
「じゃ、 キミ ヒトリ いたまえ。 ボク は もう かえる から、 キュウジ さん、 カンジョウ して ください」
「とうとう、 ハクジョウ しなかった わね、 じゃ、 アタイ も、 ある オンナ の ヒト に あった こと いって やらない」
「ダレ に あった の、 ロウカ かね」
「そんな こと いう ヒツヨウ は ない わ、 オジサマ が いわない のに、 ダレ が いう もん です か」
「レイ の コウエンカイ で あった ヒト の こと だろう、 キミ の しって いる の は あの ヒト の ホカ には、 およそ ニンゲン の ウチ で ダレ も しって いない はず だ、 どう だ あたったろう」
「うまく おあて に なった わ、 イシン つうじる もの が ある のね、 あの カタ、 とつぜん、 ロウカ で アタイ を よびとめた の、 オジサマ が きて いる こと、 ちゃんと しって いらっしった わ」
「ボク には あいたく ない と いって いた だろう」
「あんまり おあい したい とき には、 ギャク に ニンゲン は あいたく ない と いう もの らしい わ、 それでいて、 あわない で かえって ゆく の は、 なんとも いえない つらい キブン が ある らしい わ」
「どんな カオイロ を して いた」
「ええ、 オカオ は はればれ して いました、 アシ が はやくて わかれた と おもう と、 もう、 カイダン を おりて いらっしった。 アタイ、 オジサマ に つられて みんな いって しまった けど、 まだ、 オジサマ は あの ヒト の こと は ちっとも はなさない わね、 いったい、 どういう オハナシ を して いらっしった の」
「ひっくるめて いう と ゼイキン の ハナシ なん だ、 あの オンナ は コノゴロ、 なんでも はたらきつづめて やっと アナ を ぬけだした らしい の、 アナ って カカエ の ウチ の こと なん だ がね、 そしたら 2 ネン ブン の ゼイキン が どかっと やって きた と いう ん だ、 2 ネン-カン で 8 マン ナンゼン エン と いう ゼイキン の コクチショ を メノマエ に おいて、 メ が くらんだ そう だ、 それ を カカエヌシ が すぱっと はらって くれた ん だ、 べつに たのみ も しない のに ね、 そこで、 ほら、 あの オンナ は モト の ショウバイ に ギャクモドリ させられる と いう こと に なる ん だ」
「ゼイキン が また アナ ん ナカ に あの カタ を つきおとした こと に なる のね。 やっと はいあがった ところ を、 アタマ から むりやり に つきもどして しまった のね」
「ボク は そんな ハナシ を はじめて きいた が、 ゼイキン を はらう ため に ね、 どれ だけ の ニンゲン が しななく とも いい イノチ を しんだ こと か」
「その ゼイキン の オンナ の ヒト と オジサマ と、 どんな カンケイ が ある と いう の」
「カンケイ は ない ん だ けれど ハナシ だけ は きいて くれ と いう ん だ、 だから ボク は ハナシ を きいた の だ、 あの オンナ が カカエヌシ から にげだした こと を きいた の だ」
「はらえない もの ね、 ところで オジサマ に その カネ はらって くれ と いう の」
「キョウ あった ばかり の ヒト が、 そんな こと を いう もの か」
「では、 オジサマ の オナマエ を しって いる と いう こと だけ で、 それ を いいたかった と いう の」
「そう だ、 うまく いいあてた よ、 ワタクシ は それ イガイ に なにも のぞまない と いって いた けれど、 ボク は こう いって みた のさ、 では、 アナタ は ある トクテイ の オカネ を さしあげれば、 ボク と ショクジ を し イチニチ あそんで くれます か と いったら、 ええ、 と こたえて くれた、 では、 アナタ は イマ ボク の いった よう な こと を いう アイテ に、 ミナ そういう こと を のぞみ、 また それ を ヘイキ で やります か と いう と、 たぶん、 それ は そう いたしますまい と こたえて いた、 つまり その オンナ は アタマ を つかう シゴト が して みたい と いう ん だ、 ジムイン とか ケイリ の ほう とか の、 アタマ の いる シゴト を みつけたい と いいつづけて いた の だ」
「ところで オジサマ は どう おっしゃって、 あの カタ の ミチ を ひらいて おあげ に なった の」
「ボク は タバコ の ケース を シンテイ した だけ だ」
「ケース の ナカ に、 イツモ の クセ で、 オカネ かくして もって いらっした の でしょう」
「うむ、 まあ ね」
「どうも タバコ を とりだす フウ も なさらない のに、 ケース を よく もって いらっしゃる と おもって いた わ。 オンナ の ヒト は それ を ヘイキ で うけとった の」
「もらって も よい ヒト から もらった ふう で、 うけとって いた よう だ、 そして ワタクシ どのよう に おっしゃる こと を おつとめ したら いい の でしょう か と、 マジメ な カオツキ で いった の だ、 キミ の イイブン では ない けれど、 エイチ の ない ミズ みたい な メ で、 ボク を おだやか に みて いた」
「で、 オジサマ は、 ナニ か オヤクソク を なさいました」
「ボク は また ワリ の よい シゴト で カネ は とれる こと も ある ん だ から、 その カネ で にげられる だけ にげなさい、 イマ の アナタ には にげる より ホカ に ミチ は ない、 ダレ でも ニンゲン は にげなければ ならなく なったら、 スガタ を けす に かぎる と いったら、 ワタクシ も それ に かぎる と おもいます と いった。 で、 ね、 キミ、 この オンナ の ヒト は キョウ デガケ に ボク の ウチ の マエ を ぶらぶら して いて、 ボクラ が でかけた アト から、 ずっと マチ まで つけて きて いた ん だ」
「オジサマ は、 ソコナシ に オンナ に あまい わね」
「ボク が あまい ん じゃ なくて オンナ の ほう が あまい ん だ、 ボク は ことわる こと は しって いる し、 しらぬ タニン に ダレ が カネ なぞ やる もの か、 ところが ニンゲン の ココロ に ハズミ が できる シュンカン には、 じつに きれい に アイテ に おうずる キアイ が ある もん なん だよ、 つまり ワリ の よい シゴト が まわって きて うしなった もの を、 ベツ の ニンゲン が かえして くれる バアイ だって ある もの だ、 それ の ヨソク と いう もの が ケイケン の ナカ に いきて いる と したら、 ショウガイ の ある ヒ には そんな こと の イッペン くらい したって いい ん だよ。 それ を しない の は、 ニンゲン の カチ を なくする ケチ な ヤツ の シワザ なん だ」
「その アト で オンナ の カタ が、 オジサマ の アト を おうて きたら どう なさる」
「おえば おうて くる で、 いい じゃ ない か」
「シマイ に、 グルグルマキ に まいて くる わよ」
「その とき は その とき だ、 まかれて よかったら そのまま まかれて いて も よい し、 わるかったら ぬければ いい、 ジョウチ の セカイ は ソノヒグラシ で いい もん だよ」
「ゼイキン と いえば アタイ にも、 ゼイキン が かかって いる わ、 キンギョヤ さん に いた とき、 オジイサン は ゼイキン を こまかく ケイサン して いて ね、 1 ピキ ずつ に みな すこし ずつ かけて いた わよ」
「キミ の 500 エン は たかかった。 ゼイキン が 2 ワリ くらい、 かかって いた ん だね」
「では、 ネン の ため に オジサマ に おきき いたします けれど、 たとえば アタイ を うって くれ と いう ヒト が あらわれて きたら、 オジサマ は おうり に なる かしら」
「うらない な、 こんな いい キンギョ は いない から な」
「ミミ の アナ の オソウジ も する し、 オツカイ にも いく し、 なんでも して いる ん です もの、 うられて は たまらない わ、 でも ナンマン エン とか いう タイキン を だす ヒト が いたら、 きっと、 おうり に なる でしょう」
「ナンマン エン も だす バカ は いない し、 だいいち、 ニンゲン の マネ を する キンギョ なんて どこ を さがして も いない よ」
「じゃ、 あの オンナ に おあげ に なった ケース の ナカ に あった オカネ ね、 あれだけ、 アタイ にも、 くださらない」
「あれ は グウゼン に そう なった ん だ が、 イマ あらためて そう きりだされる と、 ごつん と つかえて くる ね、 コダワリ が かんじられて すらすら と だせない」
「しらぬ ヒト に オカネ を あげて いて、 アタイ に、 ぐずぐず いって くださらない なんて、 そんな ホウ ない わ」
「その うち に だして よい もの なら、 だす こと に する」
「いったい、 あの ケース に いくら はいって いた の、 アタイ、 それ と おなじ くらい の オカネ いただきたい わ」
「おなじ くらい なんて バカ いいなさんな」
「だから いくら あった の か、 それ を いって よ」
「よく おぼえて いない ね、 ねじこんで いれて おいた ん だ から ね」
「ジブン の オカネ の タカ が わからない なんて、 そんな ノロマ な オジサマ じゃ ない でしょう、 はっきり ショウジキ に いう もの よ、 これだけ はいって いた ん でしょう」
「そんな に はいる もん か、 フタツオリ に して あった ん だ から」
「じゃ、 これ だけ?」
「それ も あたらない よ、 まあ、 2 ホン くらい が せいぜい なん だ」
「ウソ おっしゃい、 ほら、 また アイマイ な メツキ を して、 おそらし に なった、 ちゃんと、 どんな とき どんな カオイロ を なさる か って いう こと、 マイニチ ケンキュウ して いる から わかる のよ、 これ だけ は たしか に あった、……」
「それほど は なかった」
「ウソツキ、 あんな オンナ に オカネ やって、 アタイ に ちょっぴり しか くれない なんて、 ごまかそう と したって ダメ よ、 ドウガク で なきゃ ショウチ しない から、 ショウジキ に おだし に なる が いい わ」
「キョウ は ホカ に カネ は もって いない」
「デガケ に シャ の カタ が もって いらしった オカネ ある はず よ、 まだ、 ジョウブクロ に はいった まんま の オカネ だわ、 おだし に ならなかったら、 カラダジュウ しらべる わよ、 こわい でしょう、 さあ、 いい コ だ から、 オテテ あげて オジュバン に ポケット が ついて いて、 そこ に ちゃんと オカネ はいって いる はず よ、 ほら、 ごらんなさい、 こんな に ずっしり と ジョウブクロ が おもい くらい だわ、 これ、 みんな いただいとく わ、 そしたら あの ヒト に あげた オカネ の こと なんか、 もう いいださない から、 いい キミ ね、 ベソ を かいた みたい な カオ を して いる わ、 アタイ、 これ で サッキ から つまって いた もの が、 ぐっと イッペン に さがっちゃった」
「ユウショク は キミ が はらう ん だよ、」
「いいわ、 おごって あげる から なんでも」
「キンギョ でも オンナ と いう ナ が つく と、 ナマズ の よう な カオ を する」
「オジサマ は こらしめる こと の できない ニンゲン だ から、 うんと こらして あげる のよ、 アタイ、 つねづね、 ナマズ にも なって みたい し、 ぬらぬら した ウナギ にも なって みたかった のよ、 かわった オサカナ を みる と すぐ その マネ が して みたく なる、 イッショウ ぴかぴか した キンギョ に なりすまして いる の は、 イクジ が ない し タイクツ で キュウクツ なん だ もの。 シマイ に、 クジラ に でも なって、 ウミ の マンナカ で オヒルネ して みたい わ。 そしたら ね、 オジサマ を セナカ に ちょこんと のっけて あげる わよ、 およげない オジサマ は アタイ の セナカ から、 にげだす こと が できない もの、 どこ へも、 あの オンナ の ソバ にも いけなく なって、 セナカ で しんで おしまい に なる かも わからない わ、 でも、 オセナカ で なくなって くだすった ほう が、 アタイ には キ が ラク で、 とても うれしい わ」

「サクヤ の ウンテンシュ さん には、 アタイ も、 まいっちゃった。 そんな ムスメ か マゴ の よう な わかい オンナ と イッショ なら、 リョウキン の バイ くらい は おはらい に なったって いい じゃ ない か と、 ゆすられちゃった。 それ を オジサマ ったら、 それ も そう だ、 キミ から みれば バイガク の セイキュウ は トウゼン だ とか いって、 おはらい に なった じゃ ない の」
「あの とき は ボク の ココロ は おちついて いた、 ナニ を いわれよう が それ が ちっとも、 ハラ に こたえない で、 アイテ の ココロ を ソノママ に して おきたかった の だ。 ボク には フシギ に そんな キ の する とき が ある ん だよ」
「でも、 さすが に おとなしく おはらい に なった アト で、 ウンテンシュ が いったっけ、 どうも、 つい ヒトリミ な もん です から、 ゴムリ を もうしあげまして と いって あやまって いた わね、 きっと おはらい に ならない と おもって イヤガラセ の つもり だった のね」
「あの とき に キミ は ヒトコト も いわなかった の は、 よかった ね。 にこにこ して おもしろい こと が はじまった と いう カオツキ で いた の は、 よい カテイ に そだった オジョウサン みたい だった な」
「アタイ も そんな キ が して いた わ、 どうせ、 オジサマ は おはらい に なる ん でしょう し、 トシ も たいへん ちがう こと も ジッサイ です から だまって いた の、 そして ね、 アタイ、 あれほど ニンゲンナミ に みられた こと も、 うまれて はじめて だった のよ、 アタイ も、 えらく なった と そう おもった くらい だわ。 だって アタイタチ の ナカマ は ミンナ ひどい カワレカタ を されて いる ん です もの」
「どうして キンギョ は ミンナ がつがつ オナカ が すいて いる の。 どの キンギョ も マタタキ も しない で、 ソラ と エサ ばかり さがしまわって いる じゃ ない か」
「1 ニチ エサ を やって いて フツカ わすれて いる ヒトタチ に、 アタイタチ は かわれて いる ん です もの、 いつだって オナカ が すいて ひょろひょろ して いる わけ だわ、 だから、 メ ばかり つんでて しまって いる の、 セカイジュウ で いっとう ひどい メ に あって いる の は、 ニンゲン じゃ なくて アタイタチ の ナカマ だわ、 イワ と イワ の アイダ に ツウロ を こさえて あって、 そこ を およぐ の が ニンゲン には おもしろい ミモノ らしく、 ムリ に がじがじ した イワ の ナカ を あるかせる ん だ もの、 オ も ウロコ も はがれて しまう」
「キノウ も しんだ キンギョ が ミチバタ に、 ナンビキ も ひからびて すてられて あった」
「オトトイ も、 アタイ も、 メ の うごかない キンギョ を 1 ピキ みた わ。 いきて いる アイダ も ろくろく くわさない で、 しんだら ドウロ に おっぽりだす なんて ひどい シウチ だ わね、 オナカ に サキン が ある と アメリカ の ある ガクシャ が、 まんまと かついで みた けれど、 あれ は アマゾン の マムシ みたい な オサカナ だった のね」
「キミ は ダイガク では、 ナニ を やって いた ん だ」
「しれて いる じゃ ない の、 アミモノ と、 そいから ビヨウジュツ と、 ギョカイ の レキシ と、 それ くらい な もの よ、 オジサマ も いい シツモン を して くださる わね、 キミ は ダイガク で ナニ を やった なんて ヒト が きいたら、 ホンモノ だ と おもう じゃ ない の」
「その つもり で ヨウジン-ぶかく いって いる ん だ、 ボク は ね、 いつでも オトコ だ から オンナ の こと を かんがえて ばかり いる が、 オンナ の ほう では、 オトコ の こと なんか ちっとも かんがえて いない と おもって いた ん だ、 ジッサイ は そう じゃ なかった ん だね」
「それ は こういう こと なの よ、 オンナ も オトコ と おなじ くらい に、 5 タイ 5 の ヒリツ で イチニチ オトコ の こと ばかり かんがえて いる のよ、 オトコ の ほう から いう と、 オトコ ばかり が オンナ の こと を たくさん かんがえて いる と おもう でしょう、 ジッサイ は ハンブン ハンブン なの よ、 アサ ね、 オカオ を あらって オケショウ を して いる でしょう、 あの とき だって オトコ の こと を いっぱい に かんがえて いる のよ、 サンポ とか ショクジ とか を ヒトリ で する とき にも、 やっぱり オトコ イガイ の こと なんか かんがえて いない わ、 ビロウ な ハナシ です けれど、 ゴフジョウ の ナカ に いる とき だって、 やはり それ を かんがえつづけて いる のよ」
「どうして カワヤ の ナカ で かんがえる こと が きちんと いつも はかどる ん だろう ね、 カワヤ で かんがえた こと は、 いつも セイカク で コウカイ は ない」
「それから も ヒトツ、 オユウガタ に カッテ で オチャワン や オサラ を あらって いる とき が ある でしょう、 セトモノ が かちかち ふれて なる でしょう、 そして その ミズ を つかう オト と セトモノ の オト と が、 とつぜん、 しずまって オト が しなく なり、 しんと して くる とき が フイ に ある でしょう」
「ある ね、」
「あの とき に ね、 どうして テ を やすめなければ ならない か、 ゴゾンジ なの」
「しらない」
「つまり オンナ が オトコ に ついて ある カンガエ に、 とつぜん、 とりつかれて しまって テ が うごかなく なる のよ、 ほんの しばらく と いって も シュンカンテキ な もの だ けれど、 どうにも、 ミウゴキ の できない くらい に カンガエゴト が、 ココロ も ミ も しばりつけて くる シュンカン が ある のよ、 あんな こわい するどい ジカン ない わ、 ヨカン なぞ が ない くせ に とつぜん やって くる のよ、 ゼンゴ の カンガエ に カンケイ なく、 フコウ とか コウフク の ドチラガワ に いて も、 そいつ が やって きたら うごけなく なる わ、 ナイヨウ は いろいろ ある けど、 はっきり と わけて みる こと は できない けど、 それ が やって きたら みごと に しばらく その もの が いって しまう まで、 にらんで いて も、 みすごす より ホカ は ない のよ」
「オトコ にも その ボウゼン ジシツ の とき が ある、 カワヤ の ナカ なんか で そいつ に、 とっつかれる と はなして くれない やつ が いる」
「メイジョウ す べからざる もの だ わね」
「まさに そう だな、 メイジョウ す べからざる もの だ。 つまり メイジョウ と まで ゆかない なまなま した もの だ。 キミ は そんな とき どう する」
「アタイ、 じっと して いる わ、 その カンガエゴト が すうと とおりすぎる まで まつ より ほか ない わ、 くる こと も はやい が、 さって しまう の も、 とても すばやい やつ なの よ」
「それ なんだか わかる か」
「キョウ と いう ヒ が、 アタイ なら アタイ の ナカ に いきて いる ショウコ なん でしょう」
「そう いう より ホカ に、 イイヨウ が ない ね、」
「それ は うれしい よう な バアイ が すくない わね、 うれしい こと と いう もの は そんな ふう には、 こない もの ね、 うれしく ない こと、 つまり なやむ と いう こと は カラダ の ゼンブ に とりついて くる わね」
「そろそろ キミ の メシドキ だ、 トケイ が なった ぞ」
「ヘンデル の 4 ビョウシ ね、 ウエストミンスター ジイン の カネ の ネイロ って、 あまくて アタイ には、 ちょうど ネムリグスリ みたい に よく きく わ」
「ソト まで なる と、 きこえる か」
「え、 オイケ の ウエ に ねしずまる と、 じゃんじゃん と きこえて まいります。 おやすみ と いう よう にも、 また、 ガッショウ を して いる よう にも きこえて きます」
「キミ は バン には ミズ に かえって ゆく が、 かえって いく こと を いつだって わすれた こと が ない ね」
「そしたら しぬ もの」
「キミ を なんとか ショウセツ に かいて みたい ん だ が、 アゲク の ハテ には オトギバナシ に なって しまいそう だ、 これ は キミ と いう ザイリョウ が いけなかった の だね、 かいて も なんにも ならない こと を かいて きた の が、 マチガイ の モト なの だ、 オジサン の トシ に なって も いまだ こんな おおきい マチガイ を おこす ん だ から ね、 うかうか と ショウセツ と いう もの も かけない わけ だ、 なんの ナニガシ が どうした ああした とか、 フジコ さん とか レイコ さん が ああした こうした とも、 もう キマリ が わるくて かけない し、 いよいよ、 オジサン の ショウセツ も コンド こそ オシマイ に なった かな。 キンギョ と もみあって ノタレジニ か」
「はたきつくして ある だけ かいて おしまい に なった から、 アタイ を くどいた ん じゃ ない こと、 ダレ も ホカ の オンナ に もって ゆく には、 あまり に オトシ が とりすぎて いる から、 ケンソン して アタイ を くどいて みた わけ なの よ、 そしたら キンギョ の くせ に ジンズウ ジザイ で、 ひょっと したら ニンゲン より か なお しる こと は しって いる と きた の でしょう。 で、 かく こと の ネライ が はずれちゃった わけ でしょう」
「はかない ね、 ショウセツカ の マツロ と いう もの は はかない、 イマ ちょうど、 そこ を なにも しらず に、 ボク は ボウシ を かむって、 てくてく ほっつきまわって いる よう な もん だ」
「はかない と いう クチクセ で、 キョウ まで やって いらっしった ん じゃ ない の、 だから、 アト は シカタ が ない から その はかない こと ばかり かく のよ、 はかない ニンゲン が はかない こと を かく の は アタリマエ の こと だ わよ、 キンギョ の こと は キンギョ の こと しか かけない し、 ニンゲン は ニンゲン の こと しか かけない のよ」
「よし、 わかった、 では ゆっくり おやすみ」
「おやすみ なさいまし、 アシタ また」
「コンヤ は オジサン と ねない ん だね」
「キョウ は くたびれちゃって、 オジサマ を よろこばせる だけ の タイリョク が、 アタイ に、 なくなって いる のよ」
「ちいさい から ね、 では、 イキオイ よく、 どぶん と オイケ に とびこめ、」
「どぶん と とびこむ わ、 イチ、 ニ、 サン、 と、 あ、 わすれた、 アシタ は トコヤ に いく ヒ なの よ、 おわすれ に ならない で、……」
「ありがとう、 チンピラ」
「よいしょ、 どぶん、 ……と、 オイケ の カミサマ マチカネ や」

「ヒ が みじかく なった わね、 4 ジ ハン と いう のに、 もう くらい わ。 だんだん さむく なったら どう しましょう、 オエンガワ に いれて いただかなくちゃ、 イケ が こおったら、 アタイ、 しんじまう」
「ガラス の ハチ に いれて ヒナタ に おいて あげよう」
「ガラス の ハチ は ね、 シホウ から みられる から はずかしい わ、 アタイ、 いつでも ハダカ なん だし、 みんな みられて しまう もの」
「じゃ ベツ の ハチ に いれよう」
「え、 そうして ちょうだい。 あら、 ダレ か が ベル を おした わ、 オキャクサマ よ、 イマゴロ、 ドナタ でしょう、 もう オユウショク の ジカン なのに。 ベル も たった ヒトツ きり しか ならない エンリョ-ぶかい ところ から みる と、 オンナ の カタ らしい わ」
「こまる な、 もう メシ だし、……」
「でて みる わ。 いらっしゃいまし、 ドナタサマ でしょう か」
「ちょっと、 オタク の マエ を とおりあわせた もの で ございます から つい」
「あの、 ゴヨウムキ は ナン でしょう か、 タダイマ から オユウショク を とる こと に なって いる ん です が」
「ヨウジ なぞ は ございません けど、 ただ、 ちょっと おあい できたら と おもいまして、 あの、 ヘン な こと を おたずね する よう で ございます が、 アナタサマ は、 オクサマ で いらっしゃいます か」
「いいえ」
「オジョウサマ でしょう か」
「いいえ」
「では オテツダイ の カタ なん でしょう か」
「いいえ」
「ヒショ の よう な オシゴト を なすって いらっしゃる ん です か」
「そう ね、 アタイ にも よく わからない ん です けれど、 ヒショ みたい な ヤク なん でしょう ね、 オジサマ の こと は なんでも して おあげ して いて、 それ で、 オジサマ が およろこび に なれば うれしい ん です もの」
「オジサマ など と、 ふだん おっしゃって らっしゃる ん です か」
「ええ、 オジサマ、 オジサマ と もうしあげて います わ、 しかし アナタサマ は ドナタ なん でしょう。 ちっとも サッキ から ゴジブン の こと は、 おっしゃらない じゃ ありません か」
「ワタクシ は アナタ を みた ので ナマエ も なにも いう キ が しなく なりました。 おかわいい アナタ が いらっしって は、 おあい して も くださるまい し、 おあい して も、 かえれ と おっしゃる かも わかりません」
「ヘン な こと を おっしゃる わね、 それでは、 オジサマ の ムカシ の カタ で いらっしゃる ん です か」
「もう だいぶ マエ に なくなって いる オンナ なん です から、 おたずね して も ムダ だ とは おもいました けれど、 オンナ の ハカナサ で、 つい おたちより した の で ございます」
「と、 おっしゃいます と、 アナタ は ユウレイ の カタ なの ね、」
「ええ、 ユウレイ なの で ございます」
「オジサマ は どうして ユウレイ の オトモダチ が、 こんな に たくさん おあり なん でしょう か、 も ヒトリ の ユウレイ は コウエンカイ に まで いらっしった ん です が、 まるで ホンモノ そっくり に つくられて いました。 アナタ だって こう みた ところ は、 マチガイ ない ホンモノ の オンナ の カタ に みえる ん です もの。 コノゴロ ユウレイ-ゴッコ が はやる の かしら」
「アナタ だって、 それ、 そんな に、 うまく オジョウズ に ばけて いらっしゃる」
「まあ シツレイ ね、 でも、 おどろいちゃった、 イマ まで アタイ の バケノカワ を はいだ ヒト は ヒトリ しか いなかった のに、 アンタ は イッケン、 すぐ はいで おしまい に なった わね、 どういう ところ で おわかり に なります、……」
「コトバヅカイ の アマッタレ グアイ でも わかる し、 だいいち、 ニンゲン は そんな に たえまなく ぶるぶる と ふるえて い は しません、 ちっとも おちついて いらっしゃらない」
「これから キ を つける わ、 アタイ ね、 マイニチ、 もう さむくて ぶるぶる して いる ん です もの、 でも、 アンタ の バケカタ は うまい わね、 それ に タバコ でも のんで おみせ に なったら、 ニセモノ だ とは ダレ も きづかない わ」
「さっき ね、 なんでも オジサマ の こと は して おあげ する と、 おっしゃった わね」
「ええ、 いった わ。 だから、 ホカ の カタ には いっさい なにも して もらいたく ない ん です。 アンタ だって おとおし すれば、 ナニ を なさる か わかり は しない」
「じゃ、 おとおし して くださらない のね」
「ええ、 まあ ね、 カンニン して いただく より ホカ は ない わ、 オオクリ かたわら、 そこら まで あるきましょう か」
「どうして おとりつぎ して くださる の が、 おいや なん です か」
「いや だわ、 もう、 さむく なる と アタイ は、 カラダ の ジユウ が きかなく なる ん です もの、 アタイ が いなく なったら、 マイニチ でも いらっしゃい、 その マエ に ユウレイ だ と いう こと を オジサマ に そう いって おきます。 キョウト の ビョウイン で シュジュツ して しんだ カタ だ と もうしあげて おく わ」
「あの とき にも、 テガミ 1 ポン くださらなかった」
「だって アンタ は ホカ の カタ と チョウセン まで、 カケオチ まで なすった の でしょう。 オジサマ を うっちゃらかして おいて ね、 そして 40 ネン-ぶり に テガミ を くれ と おっしゃる の は、 ムリ だ わよ、 かく にも、 カキヨウ も なかった らしい ん です もの」
「あの とき は シュジュツゴ で、 ワタクシ は よわって しにかけて いました、 そんな とき ミョウ な もの で フイ に あの カタ の テガミ が よみたく なった の です。 いきた ニンゲン の かいた ジ と いう もの が ニンゲン の シニギワ にも、 キュウ に みたく なって くる とき が ございます もの。 ムカシ たくさん いただいた テガミ に、 まだ もれて いる ナンマイ か が ある よう な キ が して、 それ を かいて いただきたかった の、 そして まだ ワタクシ と いう モノ が その ナカ に ほんの ちょっぴり でも、 のこって いたら それ を よんで しにたかった ん です、 ワタクシ は マイニチ の チュウシャ で イノチ を つないで、 オテガミ ばかり まって いました、 フツカ いき ミッカ いき、 そして オテガミ を まって いた ん です もの」
「それ が とうとう サイゴ まで こなかった のね、 あんな に オンナ に あまい オジサマ が そんな ハクジョウ な こと が、 ヘイキ で して いられる の かしら、 ソウゾウ も できない わ」
「それ は ワタクシ の シウチ が あまり わるかった から でしょう、 ちょうど、 ワタクシ が ケッコン する フツカ マエ に おあい した とき にも、 だまって かくして いました。 そして フツカ-ゴ には、 もう にげる よう に して ケッコン して しまった ん です」
「ダマシウチ だ わね、 そりゃ あんまり ひどい わ」
「クチ に だして は いえない こと だし、 とうとう そんな ふう に なって しまった の です、 おあい して いて イマ いおう か、 ちょっと アト で いおう か と まよいながら、 ずるずる に いう こと が できなかった ん です」
「オジサマ の イカリ が 40 ナンネン の ノチ にも、 まだ、 イマ いかった ばかり の よう に なまなましい の は、 アタイ に よく わかる わよ、 それ は アナタ の ヤリカタ が あまり に わるい のよ、 それでいて イマゴロ おあい したい なんて イイキ な もの ね、 いくら しんで いたって、 とりついで あげない わよ」
「けれど ワタクシ、 いまだ あの カタ が いかって いらっしゃる と いう キモチ に、 すがって みたい キ が して いる ん です。 そこ に まだ あの カタ が ワタクシ に のこして いらっしゃる もの が、 きえない ショウコ が ある ん じゃ ない ん でしょう か」
「ダレ が ダマシウチ を した ヒト に キ が ある もの です か、 すがられて たまった もの じゃ ない わ」
「おおこり に なった わね、 ワタクシ、 ショウジキ に もうしあげた ん だ けれど」
「おこる も おこらない も、 ない わよ、 なんの ため に イマドキ うろうろ でて いらっしゃる の、 アタイ の いる アイダ、 いくら いらっしったって、 いつだって あわせて あげる もん です か」
「だから その ワケ を いって ゆっくり イチド は あやまって みたい と、 それ ばかり かんがえて、 うかがって みた ん です」
「イマ から いくら あやまり に なって も、 うけた キズアト が そんな に カンタン に なおる もん です か、 あやまる なんて コトバ は とうに、 ツウヨウ しなく なって いる わよ」
「こわい カタ ね、 ミカケ に よらない カタ」
「オジサマ は バカ で いて オンナズキ だ から、 あ、 よしよし と おっしゃる かも しれない が、 アタイ の メ を くぐろう と したって、 イッポ も オニワ の ナカ にも いれ は しない」
「では、 かえる こと に します。 やはり くる ん じゃ なかった。 たずねて も なんにも ならない こと は、 キ の せい か、 わかって いた ん だ けれど、」
「つい きたく なった と いう の でしょう、 ホンモノ の オバケ なら モン から ふうわり と とんで いって、 オジサマ の オショサイ に いったら いい でしょう に、 そんな ユウカン な マネ も できない くせ に、」
「そう よ、 そんな ユウキ なんか ミジン も ない のよ、 ただ、 しょげて かえる だけ です わ」
「はやく かえって よ、 モン の マエ では ヒト が たちどまって みる し、 このうえ、 こまらされて は とても メイワク センバン だわ」
「では、 また、 ゴキゲン の いい とき に うかがう わ」
「ニド と いらっしゃらないで よ、 なんて ぬけぬけ した バケモノ でしょう。 あんな オンナ と わかい とき に つきあった オジサマ だって、 オッチョコチョイ きわまる わ。 イッペン、 オトコ を ふって おいて、 ジブン で あいたい とき には ばけて でる なんて、 ツゴウ の いい バケモノ も この ヨノナカ には いる もん だな、 あばよ、 オトトイ おいで だ」

「どうした の、 ながなが と ハナシ を して いて、 こっち に ちっとも、 オキャクサマ の アンナイ も しない じゃ ない か」
「やっと かえって いった わ、 オメ に かかりたい と いった から、 イマ、 オショクジ が はじまる ん だ から って、 おことわり した わ、 それ で いい ん でしょう」
「どんな カオ を して いる か みたかった ね、 45 ネン も あわない ヒト なん だ」
「ヤクシャ みたい しろい カオ を して いらっしった。 ムカシ の まんま の オカオ らしい わ。 シュジュツ の アト では、 よほど、 おあい したい ふう な ハナシ だった けれど、 オジサマ を たすけなかった ヒト は、 コンド は、 こっち で みごと に てきびしく ふって やった わ」
「あの コロ の オジサン は ね、 とても、 ショウキ の ムスメ さん では つきあって くれない オトコ だった ん だよ、 つきあう ほう が どうか して いる、 まずい カオ を して いる し、 ナマイキ だし、 ナリフリ だって ゴロツキ みたい だし、 オカネ は ない し ね、 そんな ヤツ に アイテ に なる オンナ なんて ヒトリ も い は しなかった ん だよ」
「だって オンナ の ヒト に メ が なかった とも、 いえば いえる わよ、 いくら きたない カッコウ して いたって ワカサ が モノ いう じゃ ない の。 わかい オトコ って どんな ブカッコウ な カオ を して いらしって も、 ヒフ は ぴいん と はって いて、 それ だけ でも、 イッショウ の うち で いっとう うつくしい とき なん だ もの」
「ところが キミ、 ボク と きたら、 わかい ジブン から ジジイ みたい な ハンボケ の ツラ を して いた ん だ、 いくら そって も ヒゲ は ぎしぎし はえる し、 マイニチ オユ に はいって も カオ は きれい に ならない、 ボク は ね、 その ジブン はやって いた カイゼル-ガタ の ヒゲ を はやして いた が、 この ヒゲ と きたら、 その コロ の シャシン を みた だけ でも、 ぞっと して くる ね、 なにしろ ハヤシギワ は まだ うすい もん だ から、 ひそか に スミ を はいて いた こと も ある ん だ」
「あら、 おかしい、 オヒゲ を はやして いらっしったら、 どんな オカオ に なる か、 ソウゾウ も できない わ、 ダイタイ に おいて ニンソウ よく ない わね」
「ボウリョクダン か、 ユスリ の タグイ だね」
「でも スミ を いれて いた の は、 ちょっと、 かなしい じゃ ない の」
「あさましい カギリ さ、 それに オカネ は イチモン も ない と きたら、 どんな ムスメ さん だって よりつき は しない」
「オジサマ も、 そんな とき が あった の かな、 すべからく、 ヒト は ベンキョウ して セイジン す べき だ わね」
「ナマイキ いうな、 だから、 キョウ の ヒト、 ちょっと くらい とおして も よかった ね、 あれ でも、 オジサン の ウチ にも きて くれた し、 ボク も たずねて いった が、 いつでも カエリギワ には、 テ、 テ と ゲンカン の クラガリ で、 オカアサン に みられない よう に アクシュ を して くれた もん だよ」
「アクシュ が そんな に ジュウダイ な イミ が あった の」
「アクシュ が イマ の キス みたい に、 コウカ が あった ジセイ だった ん だ」
「そお、 それなら、 しばらく でも、 おとおし すれば よかった わね、 アタイ、 オジサマ を ふった オンナ だ と おもう と、 むしょうに かっと しちゃって、 オジサマ に あわせて やる もの か と いう、 キ が いらだって きて いた ん です もの」
「キミ は すぐ かっと する ね」
「もえる キンギョ と いう けれど、 ホント は おとなしく みえて も、 すぐ、 ホネ の ナカ まで かっと もえて くる ん だ もの、 でも、 アタイ に ね、 アナタ は オクサマ で いらっしゃいます か、 それとも オジョウサマ なん です か と おきき に なった わ、 アタイ、 つい あかく なっちゃった けれど、 ここ だ と おもって おちついて、 ヒショ だ と いって やった」
「うまく ばけた ね、 さあ、 メシ を くおう」
「アタイ ね、 いつも シオケ の ない もの は いや なの よ、 もっと おいしい もの が たべたい の。 たとえば、 カミノケ みたい な、 ミジンコ ミミズ ね、 あれ を そろそろ と たべて みたい のよ、 たまに オジサマ、 ドブ に いって すくって きて ちょうだい よ」
「きたない ハナシ を しなさんな。 ドブ に しゃがんで この トシ に なって さ、 ミジンコ が すくえる もの か、 かんがえて も ごらん」
「そい で なきゃ ハネ の ある ちいさい ムシ が たべたい わ、 カ みたい な ブヨ みたい な、 ぴかぴか した ハネ が おいしい のよ、 シタ の ウエ に へばりつく の が とても かわいくて おいしい」
「それ、 なんの マネ を して いる ん だ」
「これ、 アタイ の ヒミツ の アソビ なの よ、 こう やって モ を いっぱい あつめて まんまるく して、 その ナカ に カラダ-ごと すぼっと はいりこむ のよ、 メ の ナカ が すっかり あおく なっちゃって、 ガラス の ナカ に いる みたい に、 とても いい キブン なの よ、 この ナカ で ヒミツ を ひらく」
「どういう ヒミツ なん だ」
「アタイ だって もともと オンナ でしょう、 コ を うむ マネ も して みたい じゃ ない の」
「あ、 そう か」
「はやく コドモ が うみたい ん だ けれど、 もう、 こんな に さむく なっちゃった から、 うめそう も ない わ、 だから コ を うむ マネ を して、 あそぶ だけ は モ の ナカ で でも あそんで みたい わ」
「うれしそう だね」
「タマゴ を うんと うんで それ を マイニチ わからなく なる まで かぞえて みて、 そして その タマゴ に カラダ を すりよせて いる キモチ ったら ない わ」
「キンギョ の コ は かわいい ね、 キミ の よう に おおきく なる と、 にくたらしい ところ が でて くる けれど」
「でも、 アタイ くらい に ならない と、 オジサマ の オアイテ に なれない じゃ ない の。 あんまり ちいちゃい と メ の アナ の ナカ に でも おっこちそう なん だ もの、 ニンゲン って とても おおきい から な、 クチ の ソバ なんか あぶなくて ちかよれない もの、 ニンゲン って なぜ そんな に ばかばかしく、 おおきい カラダ を して いる ん でしょう か」
「これ でも まだ ボク は ちいさい ほう だよ、 ナカ には セイヨウジン なぞ、 2 メートル も ある ヤツ が いる よ」
「アタイ なぞ ニンゲン の オヤユビ くらい しか、 ない わね」
「キミ から みたら ズウタイ が おおきい んで、 いくら おどろいて も おどろきたりない だろう ね」
「オジサマ、 そろそろ コトシ の サイゴ の ムシ を とり に いきましょう よ、 コオロギ なら、 まだ、 そこら に たくさん ないて いる わ」
「アシタ の バン いこう、 ヒルマ に キミ が カゴ を かって おいて くれれば、 いつでも でかけられる」
「キョネン の コオロギ の メンタマ なんか、 すきすき に なって いた わね、 まるで セキタンガラ みたい に なって いて も、 まだ、 いきて いる ん だ もの、」
「ニンゲン は そう は ゆかない、」
「アタイ だって いまに オ も ヒレ も、 すりきれちゃって、 オシマイ には、 メンメ も みえなく なる でしょう ね、 それでも、 いきて いられる かしら」
「さあ ね、」
「アタイ、 いつ しんだって かまわない けど、 アタイ が しんだら、 オジサマ は ベツ の うつくしい キンギョ を また おかい に なります? とうから キ に なって いて、 それ を おきき しよう と おもって いた ん だ けれど」
「もう かわない ね、 キンギョ は イッショウ、 キミ だけ に して おこう」
「うれしい、 それ きいて たすかった、 アタイ、 それ で はればれ して きた わ。 どこ にも、 アタイ の よう な よい キンギョ は いない わよ、 おわかり に なる、 オジサマ」

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