鴨着く島

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聞く力

2023-01-19 13:39:59 | 日本の時事風景
一昨年の9月に新総理になった岸田氏のキャッチフレーズは「聞く力」だ。

人と会うとメモ帳を取り出してその人の言い分を記録するのが通例――と件の小型メモ帳を記者団の前で見せたことがあった。

なるほど、よく人の意見に耳を傾ける宰相なのだなと期待するところがあった。

しかしそのことが崩れたのが、国内ではあの安倍元首相殺害事件があってからだ。

即時に「故安倍氏の葬儀は国葬で行う」と閣議決定の前にそう宣言していた。誰の意見も聞かなかったようなのだ。

国論は二分され、国葬派と自民党葬派に分かれ、ニュースにならない日はなかった。

それと並行して大臣に任命された議員の不祥事が次々に取り沙汰されたが、決して「任命責任があるのではないか」という意見にまともに応えようとしなかった。

国外では無論、ロシアのウクライナ侵攻に関することである。

昨年の2月24日にロシアがウクライナ攻撃を始めたのは「大規模軍事演習」という名目であり、似たようなことをロシアとは準同盟国である中国が台湾周辺で行ったことで国防論議に火が付いた。

中国が台湾を、ロシアがウクライナに対してやったようなやり方で侵攻した場合、台湾一国の防衛力で防ぎ切ることは到底不可能であろう。

それを見越した上で、アメリカはウクライナに対するのと同様の「武器援助」を台湾に対して行うはずだ。

ただ問題は武器の援助だけでは済まないことだ。

沖縄の米軍が出動する事態になる可能性は大きいだろう。だがその前に、台湾に近い八重山地方に展開する自衛隊が「敵基地攻撃」に当たる役割を負わされるかもしれない。日米同盟あるがゆえにである。

その時点で日本は実質的に中国との戦争状態になる。

いま岸田政権はそのことを踏まえて、巨大な軍事費の上積みを次々に発表し、そのための増税を唱えているが、国民にとっては寝耳に水的なあれよあれよと言う間の防衛力増強論である。

いったい国民に対する「聞く力」はどうしたのと言いたいのだが、この防衛力強化については「アメリカの言い分を聞く力」が発揮されたと言っていいだろう。

秋の終わりから岸田首相は今年の広島サミットに向けて外遊に忙しい日々を送って来たが、新年には欧米各国(イタリア・フランス・イギリス・カナダ・アメリカ)を回って、ウクライナ問題の意見の共有を図った。

最後のアメリカではバイデン大統領に「日本の防衛力強化への取り組みは大変結構」と賛辞を贈られ、気を良くしている。

中国はアメリカにとって、自由主義と民主主義を採用していない最大の敵国であり、経済力においても最大のライバルであり、不倶戴天の敵というとややオーバーだが、とにかく台湾問題を中国を潰しにかかるチャンスと思っている節がある。

ウクライナ同様、台湾に兵器を援助して戦わせれば、台湾もだが中国も相当な痛手を負う。さらにもし日本が「敵基地攻撃」という役割で加担したら、中国のミサイルが飛んできて南西諸島は大変なことになる。

いずれもアメリカはほぼ無傷のまま、台湾と中国が戦い、中国と日本が戦うというシナリオである。

中国を最大の敵国(ライバル)としてその国力を貶めたいアメリカにとって、何とも美味なシナリオだ。だが、日本がそのお先棒を担がされては元も子もないではないか。

岸田総理の「アメリカの言い分を聞く力」が優れていることはよーく分かった。

それよりも「日本国民の声を聞く力」を最優先して欲しいものだ、日本の総理なら・・・。誰も中国との戦争など望んではいないのだ。


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