鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

東京一極集中の是正

2021-09-09 13:50:11 | 日本の時事風景
自民党総裁選に、昨日、高市早苗衆議院議員が名乗りを上げた。必要とされる20名の推薦人が集まったらしい。

先に立候補を表明していた岸田前政調会長が「森友学園文書改ざん問題」について、当初「再調査の必要がある」と言ったことに対して、安倍サイドから反発が起き、安倍前首相の属する細田派から岸田氏を見限り、高市氏推薦への鞍替えが多くなったようだ。

慌てた岸田氏は記者の質問に「再調査は考えていない」と打ち消したが、もう遅かった。

安倍氏と岸田氏は同じ頃に衆議院議員になり、山口県と広島県という隣県の出身ということもあり、去年安倍氏が政権を投げ出した際に、安倍氏は後継者として岸田氏を考えた節もあったようだが、結局、安倍政権のカーボンコピーに徹したいとした菅さんが総裁選で勝利している。

この「再調査」の一件でこれから先、安倍氏が岸田氏を推すことは無くなったが、昨日のテレビで岸田氏の経済政策を聞いていて、安倍氏の後継者には似つかわしくない、かなり政策が違うからもともと相容れなかったのだと思った。

というのは、岸田氏の経済政策の第一は「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」ということだったからだ。そして「新しい日本型資本主義の構築に向けて先頭にたち、これまでのやり方ではますます広がる経済的な格差拡大を、適切な分配によって抑えなければならない」という。

小泉改革の目玉は「郵政の民営化」で、「郵貯・郵便・簡保」と分割することだった。国民のためになったかというとさほどなっていないのが現状だ。それより各会社に上場させて証券化し、その取引によって証券会社に高額の手数料が入るようになったことの方が大きい。

国民から集めた貯金・郵便料金・保険料は国民の安心・安全の享受の下に適切に運営すべきなのに、証券会社が介入したことにより事業自体が経済性に縛られてしまう。ましてや外国のファンドの資金力によって公益的な郵便事業が儲け主義のハイリスク商品にされる可能性がある。

また労働市場も会社が従業員に各種手当を支給する必要のない非正規労働へシフトして行った。働くうえで安心・安全をもとめたい労働者の必要最低限の目線は無視され続け、結婚さえままならない低所得者層が増えて来ている。(※しかし低所得者でも国民皆保険制度のおかげで気軽に通院でき、重病にならずに済んでいるのは日本的だ。アメリカではそうは行かない。)

これは明らかに経済的「新自由主義」の失敗である。日本人の持つ「みなほどほどに暮らしができて、ささやかな楽しみやゆとりがある」という日本的な「中間層意識」が崩壊しつつある。(※だが、地方にはまだそれが色濃く残っている。)

岸田氏はこの国民みんなの「中間層意識」を保障する経済政策をやろうというのだ。アメリカのような「オール、オア、ナッシング、ウイズ、マネー」、つまり「一人だけが突出して金持ちになればいい、あとはその他大勢だ」(自分だけが上出来なら、あとは知らぬ。お前らのやり方がまずかったのだ)というアメリカンドリームよりも、「みんながそこそこ良くなればいい」というジャパニーズドリームの方が永続性があり、安心・安全である。

この点では大いに賛成だ。さらに良い点を衝いているのが、「東京一極集中の是正」だ。

デジタル化によって大都市に集中している必要性は無くなりつつある。リモートワークの出現で、一つのビルに多数の社員なり職員なりが閉じこもっている必要が少なくなったのは現実だ。

このことを考えると、東京都に本社(本庁)を置いている会社(公官庁)は本社そのものを動かさずとも、全国に分散(分社・分庁)化することによって、事実上の「一極集中の是正」になろう。新型コロナという「疫病」にとって、人口過密が感染に最適だということも明確になった。

ただ大きな問題は、東京都内に国会を含む政府の中枢である公官庁があるため、分散化に制限が大きいことだ。これを解消するには政府の機関そのものを大幅に地方に移設することだ。文化庁がその先駆けになっているが、外務省や文部科学省なども千年を超える伝統文化都市「京都」に移すべきだろう。そして皇居も、京都に「還都」した方が良い。

岸田氏の提言はよく国民目線を取り入れている。党利党略の匂いがしないのも好感が持てる。

それに比べると高市氏の政策表明は、経済政策ではアベノミクスの後継を目指す「サナエノミクス」だそうで、大規模な金融緩和(財政投資)が目玉のようだ。プライマリーバランスはこの際返上するとも言っている。

実に、はきはきと自信ありげに話す点では、岸田氏の上を行くが、全体的に総花的過ぎて絞りの一本がないのが欠点だ。ただ、新型コロナ対策に関して「ロックダウンを可能にする法整備」の検討を早急に始めたい、という点は賛成である。


あと一人、立候補が確実なのが現大臣の河野氏だが、この人が立つと岸田氏の優位はかなり揺らぐだろう。各派閥横断の若手議員層では河野氏を推す人が多いと予想されるからである。しかし、まずは河野氏自身の政策提言を聞いてみたいものだ。