鴨着く島

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ピンチヒッターの終焉

2021-09-03 21:40:09 | 日本の時事風景
去年の9月、安倍前総理のピンチヒッターとして急遽擁立された菅首相が辞意を表明した。

去年の9月半ばに行われた自民党総裁選挙は、菅、岸田、石破三名で争われたが、衆参両院の自民党議員と、各都道府県に割り当てられた3票だけで投票が行われたのだが、党員代表の投票は見送られた。結局菅氏の圧勝であった。

この選挙はある意味でペテンである。というのは全国の地方党員の支持を圧倒的に集めている石破氏を封じ込める選挙だったのだ。実際に地方党員党友の投票が行われていたら、石破氏が菅氏を上回っていた可能性が高い。

石破氏が首相になると、安倍前首相の懸案事項であった「森友学園問題」「加計学園問題」「桜を見る会問題」そして関西財務局の文書改ざん問題が蒸し返されるのではないか――と危惧されていたから、自民党安部サイドでは石破氏には首班になってもらいたくなかった。

菅さんはまさにピンチヒッターだった。安倍サイドは胸を撫で下ろしたことだろう。

その菅首相が今度の安倍前首相の残した任期末に行われる総裁選挙には出馬しないというニュースが、テレビ画面にテロップで流れた。誰しもが驚いたに違いない。当の幹事長の二階氏でさえ今日の朝、初めて聞いたらしい。

この二階氏について、菅さんは3日前に「役員人事の改正をする」という触れ込みで、幹事長職を解く方向にあった。

二階氏を幹事長から外す意向は、そもそも岸田氏が一週間前に総裁選出馬を鮮明にした時、公約として「役員は任期の原則を1年とし、再任するにしても3年を限度とする」と表明したのに応じたのだろう。二階氏はつい先日、歴代幹事長では最長の5年を迎えていたのである。

二階氏はそれに応える形で「自分はいつでも幹事長を辞める」というスタンスで菅さんの「役員人事改正」を是としたのだろう。

では二階氏の後任を誰にするかで菅さんは岸田氏を幹事長にと慫慂したのではないか。岸田氏が「私は幹事長職など受けることはない」と問わず語りに語っていたが、その慫慂が念頭にあってのことだったのだろうか。この発言の意味するものは、岸田氏が間違いなく総裁選に出るということだ。

岸田氏を幹事長に据えることで総裁選から降りさせ、何とか 続行をと願っていた菅さん(おそらく二階幹事長の入れ智慧)は、万事休した。

なお、今朝の「私は総裁選には出ません。コロナ対策と総裁選の両方を同時にはできないからです」という不出馬の理由には、首を傾げざるを得なかった。

コロナ対策にエネルギーを費やしている現状では、総裁選に費やすエネルギーを持ち合わせない――ということだが、それは余りにも自己弁護に過ぎる。それより「総裁選を勝ち抜いて、なお一層コロナ対策に注力したいが、自分は非力であり、後事を新総裁に託したい」とでも言うべきだったのではないか。

そのように表明すれば、菅首相のおひざ元の横浜市長選で、昵懇でありかつ選挙応援に行っていた小此木元国家公安委員長の落選という思わぬ事態による菅首相自身へのダメージを少しでも和らげ、この10月にも行われるであろう衆議院議員選挙では同情票を集めるに違いない。しかしこのままでは来る衆議院選挙で落選する可能性がゼロとは言えまい。