鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

ワクチン騒動

2021-05-02 09:47:42 | おおすみの風景
昨日、勤めている公民館の管理人の同僚が、新型コロナワクチン接種の予約に成功したという。

この人は私より少し年上なのだが、市役所のワクチン予約センターに電話しても、もう予約がいっぱいになっていた上に、掛かり付けの医院に申し込んだが、やはりだめだったという。

そんなことを公民館内で愚痴ったら、小児科の医院でもワクチン接種ができるらしいと聞き、早速そこに電話をしたところあっさりと予約が取れたという。

たしかに10日ほど前に市から配布されたワクチン予約のチラシの裏面には、数多くの個人医院の連絡先が一覧になって掲載されており、よく見ると小児科医院の名も散見される。

なるほどその手もあったのか、驚いた。――というのが聞いた時の感想である。

高齢者が小児科に行くことはまずあるまい。孫を預かっていてその子が具合を悪くしたら連れて行くなんてことは有り得ようが、単独で関わりを持つことはほぼゼロだろう。

自分はチラシが配布された時に予約開始日の指定時間とともに、パソコンで予約用のホームページから入り、数十分で集団接種会場での予約が取れたのだが、高齢者でネット利用の予約ができる人は数少ないだろう。

事実、公民館の勤務時間中に直接あるいは電話で「予約をしたいのだが」という問い合わせが7,8件あった。公民館は単に接種会場なのでワクチン注射の予約はできない。1週間前だったか、わざわざ歩いて来て「予約を」というお爺さんは一人暮らしで御年が91歳。

もちろんネット予約はできない。その上、耳も遠い。かかりつけの医者はあるが、そこはそもそもワクチン注射をしないという。こうなると万事休す。

そのお爺さんには「民生委員に頼んで予約を取ってもらえるようにしたら」と提案して帰ってもらったが、その後どうなったか。昨日の同僚の一手(奇手)を早くに知っていたら教えられたのにと思うことだった。

それにしてもワクチン入荷の少なさと、高齢者を優先すると言いながら、肝心の高齢者の予約が取れない状況には危惧の念を懐く。

予約の「早い者勝ち」などということは国策ですることではないだろう。少ないワクチンだと分かっているんだったら、一律に超高齢者から無予約でワクチンを打って行けばよい。つまり高齢な順に打って行く。

例えば90歳以上の高齢者(施設入所者を除く)がどこに何人いるかは、日本全体を覆う「町内会」「民生委員」の情報網なら即座に分かるはずだ。そこから無条件で打ち始め、入荷の量によって次は85歳以上、次は80歳以上と年齢を下げて行けばよい。

報道では入荷予定数量からすれば、65歳以上の高齢者にワクチンを打ち終えるのは7月末頃だそうだが、医療従事者の方はどうなのか。いまだに従事者全体の3割程度しか打たれていないと聞く。

高齢者と並行してやって行くということなのだろうが、未接種の医療従事者の間でクラスタ―が発生しては元も子もなかろう。早く全従事者に接種をしてもらいたいものだ。

こんなみじめな「世界に冠たる国民健康保険制度の完備した医療先進国」は例を見ない。

同様に国産ワクチンを持たない高度先進国も珍しい。他国頼りだ。危機管理能力も世界最低レベルなのかもしれない。

オリンピックもこのままでは今夏は無理だろう。なぜ去年の3月末に一年延期が決まった時点で自前のワクチン開発をしなかったのか残念でならない。翌年7月までまだ1年3か月もあったのに、なぜその間に死に物狂いで間に合わせようとしなかったのだろうか。

「日本は日本式の対策で感染を抑えている」、「日本には感染を抑えるファクターXがあるのだ」などと自己満足にふけっているばかりで、「自前のワクチンでオリンピック選手も関係者もインバウンドも感染フリーにするのが日本流のおもてなしだ」という意識にならなかったのは安倍政権(現菅政権も)の失策だ。