角川文庫の宮沢賢治「ポラーノの広場」を読んだ。以下に示す短編が入っている。
ポラーノの広場・黄いろのトマト・氷と後光・革トランク・泉ある家・十六日・手紙一~四
毒蛾・紫紺染について・バキチの仕事・サガレンと八月・若い木霊
タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった
「ポラーノの広場」は2回読んだが、何が良いのかいまいちわからない。
解説によると「理想の共同体とはどうあるべきか、という問を私たちに投げかけています」ということらしい。
「そうだぼくらはみんなで一生けん命ポラーノの広場をさがしたんだ。
けれどもやっとのことでそれをさがすとそれは選挙につかう酒盛りだった。
けれどもむかしのほんとうのポラーノの広場はまだどこかにあるような気がしてぼくは仕方ない。」
「だからぼくらはぼくらの手でこれからそれを拵えようではないか。」
「そうだあんな卑怯な、みっともないわざとじぶんでごまかすようなそんなポラーノの広場でなく、
そこへ夜行って歌えば、またそこで風を吸えばもう元気ついてあしたの仕事中
からだいっぱい勢がよくて面白いようなそういうポラーノの広場をぼくらはみんなでこさえよう。」
「ぼくはきっとできるとおもう。なぜならぼくらがそれをいまかんがえているのだから。」
共産主義という幻想は賢人を盲目にするのだろうか?
民主主義という共同体は機会は平等に与えられており
幸福や支配や勝利や報酬や社会的地位は自らの努力の賜物であると主張する。
封建社会は貴族という生得的な地位を正当化していたが
民主主義社会もまた個人の能力という生得的なものによる支配を正当化している。
それは自然な姿であり人為的な共産主義とは異なる。
封建社会であっても民主主義社会であっても強者が支配するという論理に変わりはない。
そのような不平等は決して是正されない。
裁判所が一票の格差を違憲としたところで強者による支配は揺るがない。
昔も今も共産主義の指導者が圧倒的な権力を保有してしまうということも
強者が支配するという論理を支持している。
だから「ぼくらの手でこれからそれを拵えようではないか」と言われてもねぇ。
そうやって拵えた共同体の指導者が独裁者になってしまうのだから
私にはよくわからない・・・
「サガレンと八月」がいちばんおもしろかった。
・・・するとすぐ私の足もとから引いて行った潮水はまた巻き返して波になって
さっとしぶきをあげながらまた叫びました。
「何にするんだ、何にするんだ、貝殻なんぞ何にするんだ。」
私はむっとしてしまいました。
「あんまり訳がわからないな、ものと云うものはそんなに何でもかでも何かにしなけぁ
いけないもんじゃないんだよ。そんなことおれよりおまえたちが
もっとよくわかってそうなもんじゃないか。」
すると波はすこしたじろいだようにからっぽな音をたててからぶつぶつ呟くように答えました。
「おれはまた、おまえたちならきっと何かにしかけぁ済まないものと思ってたんだ。」
・・・これはまるでカントだな。
ポラーノの広場・黄いろのトマト・氷と後光・革トランク・泉ある家・十六日・手紙一~四
毒蛾・紫紺染について・バキチの仕事・サガレンと八月・若い木霊
タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった
「ポラーノの広場」は2回読んだが、何が良いのかいまいちわからない。
解説によると「理想の共同体とはどうあるべきか、という問を私たちに投げかけています」ということらしい。
「そうだぼくらはみんなで一生けん命ポラーノの広場をさがしたんだ。
けれどもやっとのことでそれをさがすとそれは選挙につかう酒盛りだった。
けれどもむかしのほんとうのポラーノの広場はまだどこかにあるような気がしてぼくは仕方ない。」
「だからぼくらはぼくらの手でこれからそれを拵えようではないか。」
「そうだあんな卑怯な、みっともないわざとじぶんでごまかすようなそんなポラーノの広場でなく、
そこへ夜行って歌えば、またそこで風を吸えばもう元気ついてあしたの仕事中
からだいっぱい勢がよくて面白いようなそういうポラーノの広場をぼくらはみんなでこさえよう。」
「ぼくはきっとできるとおもう。なぜならぼくらがそれをいまかんがえているのだから。」
共産主義という幻想は賢人を盲目にするのだろうか?
民主主義という共同体は機会は平等に与えられており
幸福や支配や勝利や報酬や社会的地位は自らの努力の賜物であると主張する。
封建社会は貴族という生得的な地位を正当化していたが
民主主義社会もまた個人の能力という生得的なものによる支配を正当化している。
それは自然な姿であり人為的な共産主義とは異なる。
封建社会であっても民主主義社会であっても強者が支配するという論理に変わりはない。
そのような不平等は決して是正されない。
裁判所が一票の格差を違憲としたところで強者による支配は揺るがない。
昔も今も共産主義の指導者が圧倒的な権力を保有してしまうということも
強者が支配するという論理を支持している。
だから「ぼくらの手でこれからそれを拵えようではないか」と言われてもねぇ。
そうやって拵えた共同体の指導者が独裁者になってしまうのだから
私にはよくわからない・・・
「サガレンと八月」がいちばんおもしろかった。
・・・するとすぐ私の足もとから引いて行った潮水はまた巻き返して波になって
さっとしぶきをあげながらまた叫びました。
「何にするんだ、何にするんだ、貝殻なんぞ何にするんだ。」
私はむっとしてしまいました。
「あんまり訳がわからないな、ものと云うものはそんなに何でもかでも何かにしなけぁ
いけないもんじゃないんだよ。そんなことおれよりおまえたちが
もっとよくわかってそうなもんじゃないか。」
すると波はすこしたじろいだようにからっぽな音をたててからぶつぶつ呟くように答えました。
「おれはまた、おまえたちならきっと何かにしかけぁ済まないものと思ってたんだ。」
・・・これはまるでカントだな。