朝日が昇る前に、船を出した。
「釣れると良いですね」と、そんな話をしながら赤灯台まで出て来た。
大島の北側岩場に、波飛沫が上がっている。
猪崎鼻の岩場にも、波飛沫が上がっている。
裸バエに近づくと、船が縦揺れし始めた。
「ウネリが、残っている…」
「今日も、中止かな…」
一瞬、迷ったが…。
「大島の内場に回ります」
大島の内場から、沖に出てみる。
風が北東になって、ウネリも北東から寄せている。
風に押される分、ウネリが高く成っている。

ここでも「どうするかな…」と迷ったが、待つことにした。
少し風が治まるまで、待ってみましよう。
船を進めたポイントには、意外と良い感じのベイト反応が出ている。
「何かが、当たるかもしれない」
そんな期待を込めて、船を流していく。
何かのバイトは有るのだが、なかなか食い込まない。
じれったい時間が、過ぎて行く。
10時を過ぎて、少し風が治まり始めた。
ウネリは、まだある。
海上を眺めて、どうするか決定する。
「よし、出てみよう」
船をゆっくりと、沖のポイントめがけて進めて行く。
時折、寄せてくる大きなウネリを、斜めに乗り越えて行く。
ポイントに着いた時が、干潮の潮止まり。
「満ち潮が動き始める時に、期待しましよう」
お客様と、その時間を待つ。
「潮が、そろそろ動き始めます」
ここから、良い変化が出始める。
「来ました‼」


竿が、大きく曲がっている。
「青物ですよ。頑張ってくださいね」
「アタリが来た。嬉しいです」
喜びの声が、海原にこだまする。
海中に、姿が見えて来た。
「鰤です」

お腹がパンパンに、膨らんでいる。
「朝は悩んだけど、我慢して良かった」
嬉しさが膨らんで、ガッチリと祝福の握手。
血抜きをして、神経締めをする。
次の流しでも、アタリが来た。
良い感じで、弧を描く竿。
楽しくて、気持ちがワクワクする。
「楽しんでくださいね」

胴回りに、何かに付けられた傷が有る。
「2匹目、嬉しいです」
喜びの声が、高らかに響き渡る。
惜しかったのは、次に来た大アタリ。

もの凄い走りと、重量感。
この心地よい感触を楽しみながら、やり取りをしていく。
海面近くまで、浮いて来た。
「あと少し、あと少しですよ」
「あっ…」と、しばしの沈黙…。
リーダー16号が、切れた。
「何で切れるの…」
大きな鰤なのか、姿が確認できなかった。
口惜しい手応えが、手のひらに残った。
気持ちを切り替えて、仕掛けを作り直す。
暫くして、アタリが来た。

まずまずのニベが、上がって来た。
「口惜しいな…」
ニベを手にして、逃げた大物が思い出される。
リベンジは、次回に期待したい。