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20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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働く尊厳を軽んじたツケ

2025年04月25日 | Weblog
            

先日の朝日新聞の夕刊に、今の「トランプ危機」について、実に的確に話されている記事が載っていました。

題して「アナザーノート」

先日、トランプ大統領を 「大学の学問の自由を蹂躙している」と、ハーバード大学の学長が提訴しました。

そのハーバードの教授の発言です。

「なりふり構わぬ、トランプ関税の連打。人類が、膨大な犠牲の上に築いてきた民主主義の土台も、トランプ大統領は突き崩そうとしている。
なぜ、このような人物が、2度も大統領に選ばれたのか・・・。」
その分析が、書かれています。

「単に経済的に苦しいだけではない。エリートたちが自分たちを見下し、日々の仕事に敬意を払っていないという労働者の不満や怒りが、トランプの成功の根本にはあります」
さらに
「グローバル化に置き去りにされた労働者が不満を募らせた、というのが、かつて説明されてきた構図だ。
だが、それだけではない。名誉や承認、敬意の欠如。
つまりは「尊厳」をめぐる問題だ。困難に打ち勝つには、大学で学位をとり、高給の仕事にありつくこと。・・民主党やリベラル派が発したのは、個人の上昇志向と社会の流動性に解決を求めるメッセージだった」

しかし、そこに潜んでいる「暗黙の侮辱」。

日本でも「親ガチャ」という言葉が、一時、流行りました。
どういう親に生まれたかが、その子の人生を左右すると・・・。

今、日本でも目に見えない貧困がすごく広まっているそうです。
私が子ども時代は、貧困は目に見えていました。
ボロボロのセーターを着ていたり、鼻水を垂らして、いつも地面を向いて歩いている子。
高度経済成長の前は、そうした貧困格差は、目に見えていました。

でも今の貧困は、なかなか目には見えません。

「アメリカの貧困層。白人でも仕事にありつけず、朽ち果てかけたラストベルトに生まれた人たち。いわゆるpoor white。その人々の、屈辱感につけ込んだのが、エリートを表向きに敵視して見せるトランプ氏だったというわけだ」
と、新聞には書かれています。

日本でも、ニュースなどを見ていても、意味のわからない、殺人事件や、放り出された遺体。
必ず1日に一つや2つは、そんなニュースが流れてきます。

「今という時代は、職業選択は自由。でも不遇ならば、それはその人の怠惰な「自分のせい」にされてしまう。
そうした存在が「悪魔化」されたことへの怒りや、鬱憤、やっかみ。
そういった感情がさまざまな形で吹き出している」
と、語っています。

極右、極左、ナショナリズム。そう遠くない将来、これらが暴発するのではないかと恐れていると、警告しています。

「トランプ関税が、本当に米国民に利益をもたらすのかは怪しい。」
ただ
「あなたたち生産者としての米国人に、深刻な打撃を与えてきた。そこと私は戦う。私はあなたたちのことを考えている」
というトランプのアピールに、アメリカ国民のpoor whiteの人々は、不安を感じつつも「彼こそが味方」と共感している。

「ナショナリズムに訴える右派は、人々に同胞としての承認を与える政治に長けている。それとは別の回路で、社会に貢献する「生産者」の尊厳をどうとりもどすか。リベラル再生に、避けて通れない試練だろう」
と、締めくくっていました。

アメリカがお米を買えといえば、日本は米不足。Win-Winの関係じゃないかと、いう人がいます。では、日本の生産者の誇りはどう守れるのか。
アメリカ依存になって、コメも野菜も何もかも、自国で作らなくなった時、初めて気づくのでは遅いのです。

南海トラフ大地震が来るのが近い。首都直下型も・・・。
そういっているくせに、自分の国の、生産者の人たちに敬意を表し、作り続けてもらうことを、なぜ守れないのか。

トランプとの今回の対決は、次には日本の労働者の「尊厳」を守れるかどうかにつながってきます。

トランプの顔色ばかり見て、日本の働く人たちを守れなかったら、その後に待ち受けているのは、今のアメリカのように、一生懸命働いているのに、一向に認めてくれない。そうした人たちからの「働く尊厳を軽んじたツケ」です。
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