老後は貧しいか

　年金生活という収入が限られている中、物みな値上がりの時期である。実際はジワジワ貧しくなっているのだろうが実感は無い。理由は簡単で年と共に欲しいもの、やりたいことがどんどん減っているからである。大病もなく誰にも迷惑を掛けない生活ができれば御の字である。
　我慢というわけではなく自然そうなる。グルメ番組でA５ランクの黒毛和牛のステーキが出ても美味しそうには思うがわざわざそれを食べに行きたいとは思わない。浅漬けの素を買ってキュウリやナスの漬物が美味しく出来た時のプチ満足の方が優る。漬物完成品はスーパーで結構高い。紅葉のシーズン、旅番組の景色は美しい。しかし紅葉の中で育った身としては行くのは面倒である。Google　Mapで結構行った気分になれる。オシャレな服装のチラシが入る。今更オシャレをしても誰が見る。清潔感さえ怠らなければそれで良い。ワークマンで買った作業ズボンはポケットも多く、防水、地面に座っても簡単には擦り減らず丈夫、釣りに最適である。ユニクロが高級だと思い出した発端である。
　端的に言うと年と共に欲望が小振りになる。しかもそれ自体が無くなるスピードの方が収支の変化より遥かに速い。老後は2000万必要だとか言われた時期がある。老後を迎えていない人が計算したのだろう。贅沢をしたいと思う程体力、気力はない。サンマが高いから食べられない？大丈夫食べなくても死にはしない。少し寒くなってきた。これから大型ハゼの季節である。秘密の場所を知っている。20㎝前後が幾らも掛る。天ぷらにすると絶品。グルメ番組には登場しない。
ノーベル物理学賞を受賞した「量子のもつれ」医学生理学賞の「DNA解析によるデ二ソワ人の発見」に思いを馳せる。途中で諦めた量子力学、人類進化で学んだデ二ソワ人、頭の中で想像することはタダである。本当に貧しければ腹も脹れないことに興味など示さない。もしかしてそれほど貧しくなっていないのかも知れない。