太陽光発電シニア

太陽光発電一筋、40年をはるかに過ぎたが何時までも興味のつきない厄介なものに関わってしまった。

どんでん返し

2022-10-16 07:39:05 | 日記
 昨日の市民講座はオランダ農業から日本は何を学ぶべきかというテーマだった。講師は某農業団体でオランダの農業を研究テーマにしている専門職員の方である。某有名大学を卒業後農水省関連の委員を務めるなど著書も多く優秀な方のようである。講義の前半はオランダ農業がGDPに占める割合や輸出産業として成功しているデータなどの説明があった。端的に言えばオランダ農業礼賛の講義である。よくあるパターンでどんな国のどんな分野にもそれを専門に研究する人が居て多くは岡惚れに近い専門家達である。そういう人が政府の専門家会議にも出て所属機関では先生と呼ばれる。講義が進むにつれてこれは講義後の質疑応答で強烈な質問をぶつけようと天邪鬼精神が頭をもたげてきた。
 ところが休憩を挟んで後半の講義のことである。オランダと言っても面積は九州くらい、人口も1640万人と九州とあまり変わらない。輸出といってもEU域内が60%を超えて同じユーロ圏、関税の問題も為替リスクも無い。言うならば千葉県が農産物を東京に出荷するようなものです。これを国として日本と比較するのも問題があります。結論から言うと国が置かれている条件があまりに違い過ぎるのです、と。前半の礼賛講義を否定するかのような後半だった。こういう講義の構成もあるのかと驚いた、しかも為替の問題も千葉と東京の喩えも質問しようと思ったことと寸分違わない。こちらの頭の中が透けて見えたのだろうか。当然質問はできなかった。従来講座講義の構成とまるで違う。前半で思い切り惹きつけておいて後半で突き放す。
 講師の方も若い頃担当の国とテーマが与えられほぼ半生を費やして専門家と認められるようになった筈だ。しかしここに来て他国から学んで自国に移し替えをすることが如何に難しいかに目覚めたのかも知れない。TVなどでも専門家が出て来て何処そこの国ではこう言う事をやっている。何故日本はできないのかという問題提起をすることがある。よく考えてみると背景、前提条件がまるで異なる国同士を比較することなど不可能である。参考にはなっても真似はするなと言う事だ。コロナ対策で規制が厳しかった頃フランスに在住している元芸能人が出て来て、パリではこんなに自由に暮らしていますよ、日本はおかしいのではないでしょうかといったコメントをしていた。おかしいのは貴女の頭の方でフランスの感染者数と死亡者数を日本と比較して言うべきではと思った。ある一面だけ捉えて国同士の比較するコメンテーターは多い。聞いた方はだから日本は駄目なんだと思ってしまう。物事の一面だけ捉えて全面のように思わせるエキセントリックな論法に惑わされてはいけない。しかし、半生を捧げた自分の研究を否定する専門家は責めどころがない。たたらを踏んだ講義であった。