宮部みゆき氏著
いつもはやらない あらすじを書いてみます。
東海道川崎の宿屋の娘おみつは 訳あって 江戸神田の袋物問屋三島屋で預かりの身。
それというのも 彼女は心に深い傷をおって心を閉ざし自分を責めているので 両親が叔父叔母に彼女を預けたのです。
叔父は一計を案じ 荒療治を施します。三島屋の二階で おみつに世間から広く百物語を集めさせ それを彼女一人が聞いて判断し 要約して三島屋主人に聞かせるという仕事をさせます。
やがて話は思わぬ方へ流れてゆき 彼女は奇妙な事件に巻き込まれてゆきます。
おどろおどろしい題名 百物語が出て来ると云う解説に、怪談集だと思いこんで読み進めたら 肩透かしを喰らいました。
それらは単なるお膳立てで、確かに幽霊話は幾つか出て来ますが 本文は極上の人情話 或いは文学作品でした。
人の心の怖さ 優しさ 美しさ 人の世の儚さ辛さ 温かさ 全てくるんで纏めて自然に語りかけてきます。
どう転んでも 作者に悪意が感じられません。
それにしてもかつての江戸の人は 今より賢く 気働きがきいて 深く考え行動し 美しい生き方をしていたんだなぁと 思いました。
それともう一つ 作者の優しさ強さに触れて 何だか嬉しくなりました。怖いけど悲しく美しく優しい作品です。