ジローのヨーロッパ考

デンマークやドイツの農家に長期(?)滞在、体験したり感じたことを綴ります。

ドイツでの農場体験(1) <主なお手伝いはマッシュルーム栽培と・・・>

2014-02-21 18:11:07 | 日記
2013年8月23日(金)、北西部のドイツも夏真っ盛りです。但し、ここラーデンは北緯52度に位置しており、つまり、日本で言うと北海道のさらに北、カムチャッカ半島の南部に相当しているのです。従って、ちょっと乱暴ですが私が住む愛知県に比べると10℃ぐらいは低いのです。

朝食は8時頃、セルフサービスで済ませます。冷蔵庫や食糧庫の中のものは自由に使っていいので好きなものを選びます。ソーセージやハム、チーズ類は数種類づつ冷蔵されています。美味しい蜂蜜もあります。紅茶やハーブティーも何種類かあります。残念ながらコーヒーだけはインスタントしかありません。パンは自動パン焼器があって、一日に1回の割合で焼いています。その元になるパン粉は数種類が食糧庫に常備されているのでした。

10時、作業開始時刻です。最初に作業内容を教えてもらいました。午前中はマッシュルームの収穫と菌床への給水等が主になります。実はマッシュルーム栽培は年間のサイクルとしては9月が「エンド」となり、間もなく栽培ルームの清掃や入れ替え等の時期を迎えるのでした。その時点で栽培されているのは3種類ほどでした。ここで驚いたのは椎茸です。ドイツ語でも「Shiitake」(発音も”シイタケ”)と呼んでいます。ルートは不明ですが日本の椎茸そのものを栽培しているのでした。

最初に、ある条件にまで成長している椎茸をナイフで切って収穫して行きます。地下室が5室ありますので順番に処理します。それが終わると各室に置いてある超音波加湿器に給水します。次に、各菌床(およそ20cm角のサイコロ形状に近い長方体)に噴霧器を使って水噴を浴びせます。

ここで超音波加湿器についてですが、これはOさんの自作です。超音波振動子をタンク内に沈め電圧を電源アダプターから与えています。同時に小型の電動ファンが回転していて24時間加湿しているのです。単純に噴霧する方式より水の粒子を細かくできるので加湿効率がよいとの見解でした。

その次は収穫した椎茸の茎を切り落とします。傘の部分から2mmぐらいは残しますが、それ以外の茎の部分は処分されます。(コンポスト行き) こうして収穫された椎茸は生のままで契約販売先に運ばれたり、または、乾燥処理してパスタ用の材料としてパックされて販売されたりします。


Oさんの考えでは、大量生産は全く考えていなくて、少量であっても新鮮で高品質の商品を近場のお客さんに提供することが第一とのことです。この農場はオーガニック(有機栽培)の認定も受けているのです。しかし、生のマッシュルーム全てを売りさばくことは無理なようで、乾燥処理して保存可能な形にした上で、独自のミックス(ハーブ等も加える)をしてパックに詰めたものを新商品として発売開始したところでもありました。

さて、午後は全く別の作業となります。別の機会に詳しく紹介しますが、エネルギー関係についてもかなりシビアに取り組んでいます。私のドイツ訪問の主たる目的は観光旅行でもなく、農業体験でもありません。持続可能社会への取り組み事例として、世界でも最先端の取り組みをしているであろうドイツの実態を、この目でこの体で体験してくることにあります。午後の作業はその一端を垣間見ることになるのでした。

場所は作業小屋です。昔は家畜類がこの小屋に飼われていたそうで、その痕跡が見られます。用途のわからない手作りの機械(?)があります。その使い方の説明が始まりました。百聞は一見に如かず・・・で、やって見せてくれました。使う材料は冷凍魚等を運ぶための発泡スチロールの箱です。これをその機械のテーブルのような部分に載せます。そしてスタート釦を押すとモーターがゆっくりと回転し、そのテーブルがある方向に動いて行きます。そしてその先にはニクロムヒーター線が張ってあって通電されているようです。発泡スチロールはその熱で溶けながらカットされて行きます。そうです、一定の厚みで発泡スチロールを自動でカットしているのでした。箱状のスチロールはほとんど捨てられるところがないように一定の厚みの板状に加工されて行きます。


これは何に使うのでしょうか。Oさんは説明してくれました。実はドイツの中でも北欧に隣接する北部は年間を通じて気温は低目の地理的条件下にあります。このホストの家もそうですが冷房装置はありません。逆に暖房のためのエネルギーコストが相当に必要なのです。さらに、ここの家屋を見せてもらいましたが、1782年建立とあって屋根には瓦が敷かれているのですが、その内側には瓦をささえる桟はあっても、それ以外の熱等を遮断する天井等は存在していません。場所によっては1階部分から天井を見上げると瓦の裏側がむき出しで見えているのです。これでは仮に暖房を入れたとしても熱は瓦を経由して外部に放出されるのでしょう。


従って、工法は別として、板状にカットしたスチロール板をさらに数枚接着して厚みを確保し、それを天井に敷き詰めて行くのだそうです。これは築230年の古い家に住んでいるから必要になっていることでしょうが、それにしても良く考え出したものだと感心して聞いていました。

また、カットする機械は自作ですが、マイクロコンピュータのボードも組み込まれており、そのプログラミングもOさん自身が行っているのです。使われている部材は廃品から取り出したものです。例えば駆動モーターは電動ドリルを固定してボールネジと連結してテーブルを左右に動かしているのです。また、移動先の端を検出するのにフォトセンサが取り付けられていましたが、その電子回路も自作なのです。さらにそれらに必要な直流電源は古いパソコン等から取り出したものを使っているのです。

一方、発泡スチロールの箱ですが、これはお向かいに住む魚屋さんが魚の仕入れ等に使ったもので、それを無料でいただいているのです。私がこの作業にかかった時点で倉庫代わりの小屋にはいただいたスチロール箱が数百箱以上(カウント不能)はあったのです。この作業はこれより先約1ヶ月ぐらいかかって完了させたのです。ちなみにお向かいの魚屋さんとはお爺さんの代からのお付き合いだそうです。これもちょっとばかり歴史と地域性を考えさせられるものでした。(代々、住み続けているのだなァ)

Oさん曰く、これはリサイクルの一例だろう?! そして省エネにもつながることだよネ・・・と。この人はドイツの中でも「普通の人」と言えるレベルではないと思った次第です。

この日の夕方、フランス人(と聞いていた)男子は帰国するとのことで早くも別れの挨拶をすることになったのです。たった2日間のお付き合い(?)でした。この人は後にイギリスから来ていたと知らされました。(エッ? フランス人じゃなかったの?) 残ったのはフランス人の女の子だけでした。この娘もこの後フランス人ではないことがわかったのですが・・・。 ~続く~

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