ジローのヨーロッパ考

デンマークやドイツの農家に長期(?)滞在、体験したり感じたことを綴ります。

ドイツのクライン・ガルテンを再考(その3)

2014-09-30 20:53:27 | 日記
さて、クライン・ガルテンのドイツ本場のもの、そして日本(中部地方)で見たそれらに関して述べてきました。そして次は、自らトライしているオーガニック・ファーミングの実態を少しお伝えしたいと思います。

畑の広さは100㎡(1畝・せ)程で、本年(2014年)に入ってからのチャレンジです。過去に、非常に小さなエリアでミニトマト、茄子、枝豆、サツマイモ、生姜、ミョウガ等を作ってみたことはありますが、100㎡は初めてです。つまり、通年で農地を確保しての農作業は未経験に近いと言えます。

但し、本格的な農作業経験は皆無かと言うと、本ブログのキッカケそのものであるWWOOF(ウーフ)体験をしていることもあって、牧場での牛、馬、羊、豚、家禽類の世話や、トラクター(大型)の運転、小型耕運機の操作・・・、加えて、マッシュルーム栽培に関わる一連作業、ハーブ云々等も短期間ではありますが、デンマークやドイツで経験してきているのです。とは言うものの、アマチュアレベルであることに違いはありません。

本年2月、最初に挑戦しようとしたのは馬鈴薯です。種芋は奥三河の知人から分けていただき、また、そのテクニックについてもご教授いただきました。最初に植え付けするエリアを決め、牛糞や鶏糞をそれぞれ10kg程度投入してから、鍬と鋤を使い家内と二人で耕しました。2月なのですが、二人とも良い汗を流したと覚えております。そして3週間ほどは土がなじむように寝せておきました。
(写真: 馬鈴薯の発芽、3畝・うね)

畑地全体の形状は6m×20mぐらいで、正確に言うと120㎡と言うことですね。そして3月に入って、種芋を植える畝(うね)を6mの幅方向に4本となるように起こしました(部分的です)。畝間は80cm、また、馬鈴薯の場合、発芽してからも土寄せを3回ぐらい行う必要があるとのことで、ご指導に従った形にしました。種芋は株間40cmで植えました。全部で40個です。
(写真: 土寄せ1回目の頃、芽引きは両サイドの畝のみ実施)

ここで第一の難関が「水」です。沢から引く水も、井戸から汲み上げる水もないのです。天水(雨)だけに頼れるわけではないので、2日に一回ぐらいのペースでペットポトル(2リットル)を5本分ぐらい持参しては水遣りを続けました。そばに水源が欲しいですね。但し、稲作シーズンのみは、近隣の田圃に水を引くために、愛知用水から取水したものが側溝を流れるのですが、これは不定期のものなので、確実に水が得られるわけではないのです。とは言うものの、努力の甲斐もあって、写真のように馬鈴薯は順調に成長してくれました。

ここで、もう一つ困ったことがあります。それは、農器具置き場です。一番望ましいのは、畑の側にラウベ(小屋)か大きめの農器具ボックスを置くことでしょう。デンマークのキッチン・ガーデンでは厚さ1cm以上の丈夫な合板を使って農器具ボックスを作っていました。長椅子にもなる形状で、上部が蝶番付きの蓋になっていて施錠も可能なのです。ですが現在は、必要に応じて車のトランクに積み込んで運んでは使っている状況なのです。

さらに、できればですが、追肥等するための肥料保管スペースの確保や、家庭で出る野菜屑等は堆肥にしたいので、そうしたコンポストも置きたいくらいです。(残念ながらこれもできていません。)

そして大変なのが「草刈り」です。草刈り機は保有していないので、小型の手鎌と立鎌(長いタイプ)で処理していますが、耕作以上にキツイ作業であるとの印象です。(当然、除草剤を使う意思は全くありませんので・・・)

諸問題に遭遇しながらも、馬鈴薯の苗はみごとに生い茂り、蕾もできてピンクの花を咲かせました。(白い花ではありません。)品種はアンデス・レッドなのです。発芽直後は遅霜対策で土寄せ、さらに数cmに育った頃には3本残して芽引きもしましたが、その成長は元気過ぎるようでした。畝間も株間もやや広めにしたのですが、風通しがよくないぐらいに生い茂っています。
(写真: 馬鈴薯の花)
(写真: かなり生い茂っています。30株)

6月末、種芋を植えてから99日目です。花も咲き終わり、葉っぱも枯れ始めたので試し掘りをしてみました。結構(?)出来ています。この日、3畝30株分を掘り起こしました。写真を見て下さい。30株で約40kgの収穫となりました。
(写真: 多い方かも・・・)
(写真: これで約40kgの収量)

残りの10株は、実験の意味も含めて約1ヶ月ずらして植えてみました。こちらは7月10日頃、82日目で収穫しました。発芽しなかったものが一株あったので9株で約10kg、収量の差はどこに原因があるのか定かではありませんが、最初の30株の方が成績優秀(?)だったようです。

収穫後、しばらく熟成期間をおいて食してみました。「美味しい~!!」 アンデス・レッドの中身は黄色なのですが、ホクホクです。ジャガバター等には最適ですね。逆に、皮をむいて切って煮込んだりすると溶ける可能性が高いのです。小さ目のものを皮をむかずに煮物に使ったり、ジャーマンポテト風にしたり、オーブンで焼いたり・・・何れも旨いです。

馬鈴薯以外としては、サツマイモ(ベニアズマと金時)を40苗ぐらい植えました。こちらは5月初旬に定植、3畝です。こちらのフィールドには施肥をしていません。定植してから130日経った9月の上旬に収穫しました。ベニアズマの出来栄えはほぼ満足に近いものでしたが、金時に関してはあまり芳しくありませんでした。その差がどこに起因しているのかは不明です。但し、「水」が度々畝間に溜まっていたので水が多すぎた?のかな?・・・。次年度はもっと高畝にしてトライか・・・とも考えています。
(写真: サツマイモ、品種はベニアズマ)

その他、カボチャもトマトも相応に収穫できました。取れすぎたものは冷蔵か冷凍保存しています。また、サツマイモは「干し芋」にして保存食に加工中なのです。農家の人も豊作の場合は様々な形にして保存したりしているのでしょうね。

もう一つ、ハーブにも挑戦しています。主なものは、オレガノ、バジル、レモンバーム、ローズマリー、コモンセージ、キャットニップ、レモンユーカリ・・・。ベランダでプランター栽培しているものと、畑で栽培しているものの2種類ありますが、畑の方が生育条件が良いようで、オレガノもレモンバームもその勢いが違います。

ハーブは収穫して料理に直ぐ使ったり、ハーブティーを楽しんだり、湯船に入れてリラックスしたり・・・色々です。取れすぎたものは乾燥してからこまかく粉砕して個別にガラス瓶に保管しています。こちらはまだ収穫が続いています。で、今は9月末、先日は畑にニンニクと玉葱も植えてきました。来春(?)の収穫を楽しみにしているところです。

以上、有機肥料のみを使い、完全無農薬での栽培を続けるつもりなのです・・・。ところで(BTW: By the way)、このような個人的な農作業の状況をお伝えするのはこのブログの目的ではありません。

昨今、食にまつわる不祥事も「またか!」と言うぐらいに日本国内において、未だに発生しています。食品偽装(産地偽装とか)・・・、いい加減にしてくれ!と言いたいですね。また、一方で食糧自給率(カロリーベース)の問題も頭から離れません。日本は相変わらず40%程度なのでしょうか。デンマークのそれは300%(!)です。ドイツは当初情報では70%を目標にしている・・・云々と聞きましたが、昨年(2013年)段階で90%は超えているとも聞きました。但し、正確な情報ではないかも知れないので鵜呑みにはできないのですが・・・。それにしても日本の数値とは大きく異なります。

また、愛知県の食糧自給率はどうでしょうか。名古屋と言う大都会も含まれているので、数値は低くても止むを得ないのでしょうが13%の数値と聞いています。何れにしても、先進国の中で数値40%の日本、それは最低なのです。この観点からも日本の農業を再考し、食糧を安全・安心・安定的に確保する施策(政策)も必須事項の一つではないかと思うのです。(TPPの件、正直言って情報不足もあって良くは解かりません。)

一方、ドイツのラーデンの農家でも言っていたように、地産地消的な考えも重要かと思います。もちろん、全ての必要なものを地元で調達することは困難であることは言うまでもありませんが、周辺地域との連携を取りながらの考えも必要でしょう。

また、以前のブログにも記載しましたが、大量生産という方法は、こと食糧に関しては「農薬」「化学肥料」「遺伝子組替え」等々のリスクを負うことに成りかねないので、次世代への責任としてもこうした手段からは脱却することが望ましいのではないでしょうか。ただ、農家の方々にお聞きすると「そんなこと(無農薬)は不可能!」と言いますので、容易ではないことも事実でしょう。

品種改良で病気に強くなって減農薬で栽培できる作物もあります(稲作)。天敵を使って防除する方法を採用している作物もあります。何れにしても、安全・安心なものを入手するには、相応の手間隙・コストがかかることを消費者自身が認識しなければならないでしょう。大手企業が扱っているから安心・・・と言うのは認識として誤りかも知れないのです。これらの方向性は社会が成熟して行く過程の中の一つではないでしょうか。

さて、クライン・ガルテンに話を戻しましょう。この3回に渡って綴ってきました「クライン・ガルテン」は、日本においては二つの方式(目的)があるようです。一つは、中山間地における交流人口を増やしたり集落に活気や雇用を創出しようとするもの、もう一つは、我家で体験進行中の都会(?)でのそれです。

ドイツ式のクライン・ガルテンをほぼそのまま日本に持ち込むのであれば、区画当り40~50㎡は欲しいですね。加えて、農業用水が何らか(井戸水・地下水等)の形で確保できること、耕作に必要な小型耕運機と草刈り機等が共同保有されていること、個人所有の農機具や肥料等の保管ボックスが個別に設置できること、家庭で出る野菜屑等を堆肥に利用できるコンポストが設置できること。さらには、個人毎に獣害対策が必要にならないようクライン・ガルテン全体の周囲には垣根等がされていること、また、共同管理施設では飲食等もできるようなオープンな空間も有すること・・・。こうしたクライン・ガルテンであれば、日常の喧騒を忘れて精神的にリフレッシュさせてくれるような・・・つまり、より成熟度の高い社会に一歩近づくことができるのかも知れません。

(補足: 猪で思い出しました。つい1週間ほど前の情報なのですが、私の畑近くにも猪が出没したらしいのです。私のサツマイモは収穫済みだったので実害はありませんでしたが、道を隔てた隣の畑のサツマイモは全部食われた・・・と聞きました。従来はそこまで降りてくることはなかったとのことで、当然、電柵や猪垣等はあろう筈もないのです。)

地域特性を活かしつつ、独自性があって人真似でない。そしてその街には、妊婦・乳児・幼児・学童・中高生・青年・中高年・お年寄り・ハンディキャップを持った人々も、まるで一つの同じテーブルで違和感なく食事をしているかのように・・・、正にドイツ・ラーデンで体感したようなバランスの取れた街に近づきたいものです。クライン・ガルテンは、その潤滑剤の一つなのではないでしょうか。

(巻頭写真: 畑で育ったコモンマロー)

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