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営業ノートは何のため?

2016年11月02日 | コンサルティング

「君は当社でどのような仕事がしたいですか?」大手建設会社の新卒採用面接で担当者が質問すると、A君は元気よくこう答えました。「私の希望する職種は営業です。」そして、A君は首尾よくこの会社に採用されました。

念願の営業部に配属されたA君は、毎朝7時には会社に着いて様々な資料を読み漁りました。先輩や上司が出社してくる8時半頃には質問事項をノートに書き終え、仕事中に先輩や上司に聞いては答えを書き込んでいました。

半年もするとノートは2冊目になり、A君の知識もかなり増えてきました。もともと地頭の良いA君はどんどん知識を吸収し、見積システムや顧客管理システム等の使い方も身につけて行きました。

そうして1年が過ぎて新しい年度が始まると、いままで上司だったB課長は他部署に異動し、代わりに地方の営業所からC課長がやってきました。理論派だったB課長とは違って、C課長は「体育会系」そのものでした。

A君は、それまでに蓄積してきた情報が書き込まれたノートを持って、C課長にいくつか提言をしてみました。

A君「課長、業務課に出す積算依頼書を入力するとき、より簡単に入力できるよう、こういうテンプレートを作ってみたのですがいかがでしょうか。」

C課長「うん?テンプレート?どれどれ・・・まあ、確かに簡単になるけど、若いうちからこういう手抜きをしちゃいけないよ。手間がかかってもちゃんと手で書いて、それを見ながら入力するようにしなさい。」

A君「はあ・・・」

入力作業をより正確に、しかも効率良く改善しようとしたのに「手抜き」と言われて、A君はとてもショックを受けました。

それからA君はノートを片手に何度かC課長に相談や提案をしたのですが、ことごとく本題から外れた細かい点を指摘されたり、わざわざ手間のかかるやり方を指示されたりと、否定的な態度を取られました。

そして半年後の人事評価面接で、C課長はA君に対して「ノートに何か書いている暇があったらもっと足を使って営業してきなさい!」と説教をしたのです。

これがきっかけになり、A君のモチベーションは大きく下がり、ノートを付けるのを止めました。C課長はますますA君を遠ざけるようになり、A君は精神的にも疲れ果ててしまいました。やがてA君は転職も考えるようになりました。

それから5年経った今、A君は同じ建設業界の中堅企業X社で働いています。X社は前の会社に比べれば売上規模は半分以下ですが、A君はそこで「敏腕営業主任」として大活躍しています。

A君がX社に入社してから書いたノートは20冊にもなっていました。

営業は、経験を積むことによって実力がアップして行く職種です。しかし、ただ経験をするだけでは実力はつきません。経験は、それを得た瞬間からどんどん小さくなって行くからです。

経験を逃がさないために記録をすること。それが実力をつけるための最善の方法なのです。

(人材育成社)


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