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「上司に逆らえない企業風土」が原因?

2016年02月28日 | コンサルティング

2015年に発覚した東芝不適切会計問題は、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の失敗事例として、経営学の教科書の中で語り継がれることでしょう。特に、この問題を調査していた第三者委員会の報告書にある次の一文はインパクトがあります

上司の意向に逆らえない企業風土が存在していた」

これを読んで、ほとんどすべてのビジネスパーソンは「上司に逆らえる会社なんてあるの?」と思ったに違いありません。

また「”チャレンジ”と称して現場に無理な利益目標を迫るなど、行きすぎた利益至上主義が(利益)水増しの温床になった」という指摘についても「無理じゃない利益目標なんてあるものか!」と、ちょっとムッとした方も多いことでしょう。実際、販売会議の場で売上目標を「上積み」された経験は、営業担当者なら誰にでもあるはずです。

こうしたことは、いずれも当たり前のことです。企業の目的は利益を得ることです。経営者はそのために意思決定し、現場の人間に命令を下して徹底して仕事をさせます。仕事とは結果がすべてです。

「経営学の神様」ドラッカーは、経営者が唯一持っていなければならない資質はintegrity(真摯さ)であるとしています。真摯とはまじめで熱心なことですが、ドラッカーの言うintegrityとは、それがどのような状況においても「ぶれない」ことではないかと私は考えています。

真摯であることは組織の中で出世するための必要条件です。優秀な社員は上司に逆らわず熱心に仕事をこなし、結果を出し続けることで一歩一歩経営者に近づいて行きます。

また、それを善しとする組織風土がある限り、企業は利益を上げ成長していきます。

東芝も長い歴史を通じてそういう企業であったのでしょう。そして、ほとんどの日本の大企業には、そうした企業風土が存在していることは間違いありません。

ですから、東芝の不適切会計問題において「企業風土」や「利益至上主義」を槍玉にあげるのは間違いだと思います。

では、真の原因はなにかということになります。極論かもしれませんが、私は経営者の真摯さがぶれてしまったことによるものだと思っています。

問題を起こした経営者は、組織の頂点に立ったときに、「誰」に対して真摯であるべきを考えなかったのではないでしょうか。あるいは頂点に立ったことで、「真摯さを発揮するべき相手などいない」と傲慢にも思い込んだのかもしれません。

経営学によれば、株主、顧客、従業員、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政等々のステークホルダー(stakeholder:利害関係者)がその「誰」なのですが、「上司」とは全く違って実体があってないような存在です。これでは、どんなに真摯であれと言われても難しいでしょう。

不祥事を起こさないためには、単に真摯(まじめで熱心)なだけではなく、integrityを持っている人材を経営者に登用することが必要です。

しかし、integrityを測る方法はいまだに発見されていません。

残念ながら、これからも大企業の不祥事は起こり続けます。

(人材育成社)

 

 


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